えきの駅 食文化探訪 第14 回近鉄百貨店草津店(後編) プラグスマーケット草津店 小原俊輝 係長、久岡武 係長 インタビュー

 近鉄百貨店草津店は、株式会社近鉄百貨店が運営する百貨店。滋賀県内唯一の百貨店である。

「草津店は2020年2月に近鉄百貨店(地方・郊外百貨店)とハンズが協業して地方再発見、地域共創を推進する新たな事業スキームのコラボショップ「PlugsMark e t ( プラグスマーケット)」を2階フロアに全国で初めて導入しました。詳しくご紹介ください。」

(プラグスマーケット草津店小原係長、久岡係長)
 地域資源発掘型の販売催事やワークショップを展開し、滋賀の隠れた地場産品をはじめ、地域のライフスタイルに密着した商品を紹介し、滋賀の魅力を地元はもとより広域にも発信しています。対象とする顧客年齢層は、30歳代〜40歳代とそのお子さんのファミリー層です。フロアを「伝え場」(イベントゾーン)、「売場」(ハンズMDゾーン)、「話し場」(テナントゾーン)の3つの「場」で構成しています。「伝え場」(イベントゾーン) で展開する「しがコレ」や「アカリスポット」という地域共創のために作った区画があります。「しがコレ」は、毎週出店企業を入れ替えます。従って、年間52週替わりの企画が生まれます。9月には、来年の3月から8月の大方のスケジュールを決め、3月には、その年の9月から翌年の2月のスケジュールを決めています。1年目は滋賀県から19市町の首長や食に精通している方にアンケートを送り、自分の街が誇るベスト3のものを出してください、物販できるものはそれを「伝え場」で販売しましょうと呼びかけました。1年目は新しい取組みばかりでしたが、二年目は、このような事業の良さでもありますが、実績がある、集客性があるイベントを引き続き営業計画の中に組み込んでいきました。勿論、新規企画はありますが、既存企画でどんどん実績を積んでいくことでお客様にファンになって頂ける。そして既存の業者さんに来年も入って頂ける。現在はその様な場所になっています。今年の1月から10月までの売上構成比は一部食品を含む週替わりのイベントが7割、常設の食品は3割です。
「アカリスポット」は展示とワークショップができるコト消費の場です。伝え場と連動させるような形で取り組んでいます。

 9月には、滋賀県との取り組みで「滋賀の焼き物コレ」を開催。県内の陶芸作品を前方にある「伝え場」で集めて物販をし、後方の「アカリスポット」では、信楽焼(甲賀市)のたぬきの置物を作るワークショップを開催しました。先着順と無料でもあったので、8時からご家族で店頭に並ばれて大盛況でした。2日間で80個を作られました。

 地域の眠っているのもに明かりをともそう!との意での「アカリスポット」です。伝え場は伝えていくということでモノが完全に出来上がっている。アカリスポット」はモノとしてまだ伝えるためには至っていないけれどもそのスタートになるための一歩前の段階です。皆さんに知って頂こうとしての形の「アカリスポット」です。

「プラグスマーケットが発足した経緯をお聞かせください。」

(プラグスマーケット草津店小原係長、久岡係長)
 地域の皆様に対して百貨店としては何ができるのか、この地域という大きなワードが念頭にあり、地域に対して価値を提供できないのかを模索していました。加えて、力を入れている事業の一つのFC事業で地域共創が取り組めないか。この二つが弊社としての原点です。
一方、ハンズ側は様々なFCを展開しながら店舗を拡大していましたが、ただ単にハンズを作るのではなく、何か違うコンセプトのショップを作りたいとの思惑がありました。このような2者の思いが良い形でマッチして、今までのハンズの形態には無かったこのプラグスマーケットができたのです。現在、プラグスマーケットは全国に5店舗(弊社では四日市店)。草津店は、他の百貨店が地域との取り組みの仕方として良いモデルケースになっていると思います。今後も拡大していくと聞いています。オープンから2年半が経過し、この「伝え場」は好調な売り上げを挙げています。

「伝え場にある強みの商品をご紹介ください。」

(プラグスマーケット草津店小原係長、久岡係長)
 季節のフルーツの打ち出しを強化しています。1月からGWまでは「近江富士いちご」やJA草津のいちごが並びます。夏場から秋口は、野洲にある農園のぶどうやシャインマスカット、梨です。晩秋には柿が出ます。滋賀は夏は琵琶湖で泳げて冬は函館山、伊吹山でスキーができる四季を通してレジャーを楽しめる場所です。四季があるという事は旬のものがある。他のプラグスマーケットにはなかなか無い様なものが特化して出るのが滋賀のフルーツです。駅改札口から直接コンコースを歩いて入れる当店の2階一等地で、贈答品にも使え、地元産であることを強みとして販売をしています。1月から3月はいちごの最盛期には、常設売場の売上は一気に上昇します。1パック800円ほどの商品が毎日20〜30パック入荷し、正午までには売り切れます。

「『伝え場』に対するお客様や出店事業者の反応にはどの様なものがありますか。」

(プラグスマーケット草津店小原係長、久岡係長)
 食品、非食品に拘わらず、他府県の百貨店のイベントやマルシェに出られていた事業者が、コロナ禍で大型のイベントが中止になり、販売先が無かった時期に、当店と丁度上手く嚙み合い、イベントを開催して頂いてきました。当初は、地元の商圏で地元のものを売っても売れないのではとの不安のお声もありましたがそれは杞憂でした。南草津を中心とした地域には、大阪、兵庫、京都から多く移住されています。その方々にとっては、これまで見たこともない草津の特産品がこの草津店で初めて見ることができ、事業者としては商品を認知して頂くことができました。翌週にはその事業者の店舗に足を運ぶお客様もいらっしゃいます。事業者からは本当にこの草津店のイベントに出てよかった!と、この売場を気に入って頂き、売上も高いからまた来年もお願いしますとのお声を頂いてきました。自宅で鞄やアクセサリーを作られているクリエーターが、ここに出店する事で自信になっています。お客様が自分のお店に来て頂けることがクリエーター仲間に伝える。そうすると私も出店したいとのお声を頂きます。当方が新たなクリエーターを探すよりも作家同士の口コミで新たなクリエーターの作品が登場する。今や、事業者間の繋がりが強く、売り場としては好循環になっています。

 いい商品の特長をここで伝えるとの意味の「伝え場」。地域の魅力を掘り起こしてその魅力を伝える場所がこの「伝え場」であり、まさしくその実践ができています。

「今後の新たな挑戦をお聞かせください。」

(プラグスマーケット草津店小原係長、久岡係長)
 来年、プラグスマーケットは3周年を迎えます。「伝え場」では、滋賀県と協業イベントとして、何か滋賀県の打ち出しができたら面白いと考えています。来年3月12日は、「びわ湖マラソン」がオリンピック選考レースから市民マラソンへと生まれ変わります。それを取り上げ、この3年間走り続けてきた「伝え場」が4年目も走り続けるとの意を込め「走る!」をテーマにしたイベントを「伝え場」で開催したいと考えています。食品、工芸品などの非食品を入れながら、例えば、今年、来年の早い段階で新たに滋賀県で店をスタートし、自分の店を知って欲しいと思っている事業者を滋賀県や各市町の中小業者を支援部署から探し出し、参加して頂くのが面白いと考えています。

 (敬称略)

店舗データ

  1. 店舗名 近鉄百貨店草津店
  2. 会社名 株式会社近鉄百貨店
  3. 店舗所在地 滋賀県草津市渋川1-1-50
  4. アクセス JR琵琶湖線、草津線 草津駅東口直結
  5. 開店年月日 1997年9月5日
  6. 売場面積・フロア 23,000㎡  1階~5階
  7. 草津店売上高 102.06億円(2022年2月期)
    ※収益認識に関する会計基準を早期適用しなかった場合の金額
  8. 周辺地域の人口:草津市 約14万、大津市 約34万、栗東市 約7万

シガコレで販売する主なフルーツ

近江富士いちご電農舎(野洲市) 1月~5月GW頃
さくらんぼ南農園(野洲市)5月後半~6月中頃
葡萄/シャインマスカット南農園(野洲市) 8月後半~9月後半
南農園(野洲市)9月後半~10月後半
愛宕梨南農園(野洲市) 12月
竜王いちごみらいパーク竜王(蒲生郡竜王町) 2月~4月後半
トマト・とうもろこしみらいパーク竜王(蒲生郡竜王町) 6月中頃~7月後半

シガコレで販売する主な食品

まぜちゃい菜おつけもの丸長(大津市)滋賀県の伝統野菜「日の菜」を使用した、ピリッとした味の歯ざわりが良いお漬物。
近江牛佃煮徳志満(湖南市) 近江牛を使用した「牛肉商 徳志満」自家製の佃煮。
竜ノコバコ ペーストみらいパーク竜王(蒲生郡竜王町) 竜王町の大地で育てられたフルーツを贅沢に使用した、手づくり・無添加のジャム。
クッキー各種ノチェロ(大津市)瀬田川河畔の住宅地にある「隠れ家的なお菓子屋さん」。
びわコーラ食産耕房(近江八幡市)使用する原材料の内、6つが滋賀県産の滋賀県初のクラフトコーラーシロップ。
ふなずしラスク鮒味(蒲生郡竜王町) 鮒寿司の風味とラスクの香ばしさで、スモークチーズのような味わいが楽しめます。