えきの駅 食文化探訪 第10回 そごう横浜店鈴木基明 営業Ⅲ部長インタビュー

鈴木基明部長

そごう横浜店は、株式会社そごう・西武の基幹店。
売上、売り場面積ともに西武池袋本店に次ぐ国内屈指の百貨店である。

「横浜店の立地と商圏をお聞かせください。」

(鈴木基明部長)
 横浜店は、ターミナル駅である横浜駅東口にあります。(横浜みなとみらい21地区の最も西側の68街区に位置。別表)

 横浜駅の東西自由通路から当店の正面入口(地下2 階) までは地下街「横浜ポルタ」を突き抜けて一直線に来られます。

 1次商圏は横浜市西区、神奈川区、中区、鶴見区、です。2次商圏は港北区を中心とした横浜市全体と川崎市。逗子市、鎌倉市の方々にもお越し頂きたいと考えています。駐車場が、そごうパーキング館(駐車台数560台)をはじめとして2500台と充実していて、駐車し易いとの評価を頂いており、自家用車でのご来店が多くなっています。

「食品売場の顧客年齢層について」

(鈴木基明部長)
 中心顧客は40歳代から50歳代及び60歳代の女性です。今後は20歳代~30歳代の女性客の来店促進にいかに取り組んでいくかが課題です。(2018年に化粧品売場を大改装し4,400㎡に増床。店としての新客の増加に合わせ、食品売場でもSNS配信など時代に合わせた戦略で40歳代から60歳代の中心顧客層に加え、20歳代~30歳代の顧客の売上が伸びている。)

「食品の売場をご紹介ください。」

(鈴木基明部長)
 先ず、食品売場全体としてのコンセプトをご紹介します。

 当店のメインフロアは食品売場です。お客様の約70%が地下2階の正面入口から入られます。正面入口から入るとすぐ目の前に食品のフロアが広がっているのが強みです。食品フロアは2400坪と大規模で、ワンフロアでお買い物を楽しんで頂けます。他の百貨店にはなかなか見られない業態と自負しています。

 食品全般において、百貨店ならではの定番商品、ここにしかない限定性をコンセプトとした品揃え、これを深掘りして追求していくことを掲げています。ライフスタイルへの変化に対応していく必要があり、内食(生鮮)・中食(惣菜)・外食(中心商品は和洋菓子=自家需要とギフト)に適応した品揃えを目指しています。また、ご来店のための情報発信をしっかり行うためにSNSに注力しています。

 前述のとおり、正面入口から入ると食品フロアが広がり、先ず目に留まるのが「諸国銘菓・卯花墻」。この売場は自主編集の特徴ある売場としてメインに位置付けています。洋菓子のゾーン拡大はこれまでも手掛けてきましたが、今後も行っていきます。

 また、デイリー性において、内食の強化は絶対に必要です。フロアの中心ゾーンには中食の惣菜が位置します。

 10年前の食品フロアの大改装以降もエバー・リフレッシュは繰り返し実施してきました。新しいものをしっかりと見せていく必要があります。

菓子売場について

(鈴木基明部長)
 洋菓子拡大が戦略です。

 大改装以降、正面入口を入り右側エリアを和菓子ゾーン、左側エリアを洋菓子ゾーンに分けていますが、段々と洋菓子が和菓子ゾーンに拡大しています。それと伴に和菓子ゾーンがやや縮小傾向にあります。

 最近は和菓子の洋菓子化が見受けられます。和菓子と洋菓子の区分が曖昧な商品もある。洋の戦略だが和菓子が出てきたり、和菓子の中に洋の領域が出てきても全くおかしくはないと考えます。和菓子ブランドがモンブランを売ってみる等の方向性が出てきている。和菓子ブランドは和菓子だけではないのです。逆もあるかもしれません。和菓子ブランドが和菓子の性質上、それ以上のものを追う中では、和菓子ブランドにおける洋菓子の戦略が出てきていると分析しています。

 いわゆる和洋折衷菓子の例としては、つぶあんにバターとはちみつを合わせた「京らく製あん所(本社・京都府)」の「あんバター」があります。あんこは若いお客様向けの商材ではありません。自家用・ギフト用共に高い年齢層のお客様が使うMDです。しかし、つぶあんにバターとはちみつを合わせることによって若い女性向けの商材に切り替わっていきます。近年の業界の傾向では、「あんぱん」も、あんのみの「あんぱん」よりは、「バターあんぱん」を謳った方が若い女性客が買いたくなるMDになってきます。「諸国銘菓・卯花墻」は和菓子と洋菓子の両商品を取り揃える典型的な和洋折衷の菓子売場です。和洋折衷化の一番のポイントだと考えています。

新たな売場つくりの仕方

(鈴木基明部長)
 7月に富澤商店を改装し、レンタルキッチンスペース「T O M I Z A W A S H O U T E N C O M M U N I T Y S PACE」を作りました。(富澤商店のレンタルキッチンスペースの併設は、そごう横浜店で5店舗目。)

 食材を持ち込みその場で調理して食べられる場所。お客様ご自身で自由に料理・お菓子・パン作りを楽しんでいただける様に導入しました。メーカーとのタイアップイベントや、講師によるデモンストレーションや実演の他、SNSを活用したライブ配信など様々なコンテンツ配信もします。売場を販売だけに使うとの考え方ではない売り場づくりをしています。

自主編集売場の強化

(鈴木基明部長)
 和洋酒売場と併設した諸国名産売場では、自主編集売場として酒の肴に合わせた商品の提案をしています。その中に岡山県倉敷市にある森田酒造がプロデュースする全国各地から探し出した美味・珍味や独自に開発したプライベートブランド商品などを集めたおいしいものブティック「平翠軒」を展開しています。

 これはテナントではなく、「平翠軒」ブランドを扱う自主編集売場という位置づけで、自社社員を配置しています。

「好評な恒例催事、新たな目玉催事について」

(鈴木基明部長)
 昨年同様に今年も年間12本の食品物産催事を行います。コロナ禍におけるこの催事数は全国の百貨店の中で多いレベルです。

 催事は近辺にお勤めの若い女性客を引き寄せています。

 毎年5月連休明けに開催している地元の催事には、地元の横浜のブランドが出店する「横濱フェア」があります。今年は、グルメについては更なる横浜ブランドの価値拡大を目指し、オール横浜から各ジャンルでこだわりのある19店舗の自慢の逸品を取り揃えました。
(別表)

 5月には約40ブランドを取り揃えた「クッキー博覧会」を初開催しました。スペシャリテ、ご当地ブランド、海外ブランドなどさまざまなクッキーを取り揃えました。一部出店ブランドのシェフパティシエにも来店して頂き、フェアに色を添えました。

 この博覧会は20歳~30歳代の新規女性客のご来店を促進するためのもの。バレンタインに相対する洋菓子はクッキーです。ホワイトデーで贈るものは、クッキー、マシュマロ、飴など色々あります。ホワイトデーの位置づけはバレンタインデーと比べて弱いが、クッキーはチョコレートとの双璧の洋菓子。チョコレートが催事で売れるのだから、クッキーでも売れることに気付き、開催に向けては時間を掛けながらクッキーブランドの招聘をしました、女性客はSNSの情報発信の中から見映えの良いものを選ばれるので、そうした表現ができるのはクッキーです。希少性の高い商品。全国のパティシエが手作りされた商品の寄せ方が功を奏し、成功裡に終わりました。次回も期待ができる催事です。

ホットとコールドが選べる焼き芋の自動販売機

 今回で3回目となったさつま芋づくしの「芋博」(いもはく)は会期を2週間に拡大して昨年12月に開催しました。会場には、おいもを愛して止まないお客様に向け、甘味さっぱりのほくほく系から、蜜があふれだすねっとり系まで、会期中延べ24種類のやきいもを用意。そのほか、芋けんぴや、おいものモンブランや、缶に入ったお芋スイーツ、特別限定品のどら焼きなど、魅力あふれる芋スイーツが満載でした。(会期中延べ26店舗が出店。)

 焼き芋の商品の深さは、扱っていて感じます。おいもは女性客のハートをがっちり掴みます。百貨店の中心顧客層以外のお客様にお越し頂ける芋博。おいもに関する様々なMD面が出てくると更にお客様の層が広がっていくことがわかりました。このフェアは人気があり、定番となりました。今年12月に第4回を開催する予定です。「芋博」の会場内に焼き芋のおいしさをそのまま届ける「焼き芋自動販売機」を設置しました。
(全国で西武東戸塚SCと当店の2か所のみ)

 今年の1月末迄の設置を予定していましたが、好評につき通年設置にしています。500円の売価を付けても百貨店であれば違和感がない商品です。ホットとコールドが選べます。冬場の商材ですが夏場も設置できているのは、焼き芋の位置づけが冷やしても美味しいからです。焼きたてばかりが焼き芋ではない。流石に夏場は圧倒的にコールドが売れますが。(笑い) 自動販売機は、コロナ禍において、非接触型の売場として対面でなくても買える利点があります。

「地元との取り組みについて」

(鈴木基明部長)
 そごう・西武と神奈川県が包括協定を締結しています。「神奈川県アンテナショップ かながわ屋」は、神奈川県観光協会と連携した売場です。「神奈川県の名産・特産品コーナー」では乳製品や卵・調味料・伝統食材・スイーツ・地元ドリンクなどが、カテゴリーごとに配置されています。「お野菜マルシェ」では、神奈川区内などの契約農家からの産地直送の新鮮な野菜や県産の旬の野菜を販売。「DELIマルシェ」では、県内自慢の味・話題の味を週替わりで提供しています。オープンからの売れ筋商品は、大根・キャベツ・なす・きゅうり・トマト・枝豆・トウモロコシなどの朝獲れ野菜や「やまと豚の肉餃子」、宝製菓のビスケット「横浜ロマンスケッチ」、鎌倉佳人の「鎌倉スモークチーズ」、レトルトで手軽な「よこすか海軍カレー」、鎌倉紅谷の「クルミッ子」などなどたくさんありますが、地元愛にあふれたお客さまたちが毎日のように色々なアイテムを探しにいらっしゃいます。三浦半島をはじめ県内の契約農家の朝採れ野菜や人気の銘菓など、約250品目を取り揃えています。
「かながわ屋」を軸に地元と連動したイベントを開催しています。今年1月には、「小田原・箱根・あしがら特集」を開催しました。食品売場にて「小田原・箱根・あしがら」を中心とした名産品を揃えた販売会を実施。会期中は、神奈川県アンテナショップ「かながわ屋」、週替わりするイートインスペース「お食事ちゅうぼう」でも、小田原・箱根・あしがらの名産品やメニューを扱いました。

 4月は、地下2階の食品売場対象店舗とイベントスペースを中心に、鎌倉殿× 13人の御家人たち「ゆかりの地」名産品フェアを開催しました。本フェアは、神奈川県「鎌倉殿の13人」連携協議会、大河ドラマ「鎌倉殿の13人」鎌倉市推進協議会等が連携し、現在放送中の大河ドラマと大河ドラマの舞台となる神奈川県内の魅力を紹介する観光プロモーションイベント「鎌倉殿× 13人の御家人たち『ゆかりの地』めぐり展」(新都市プラザ)と連動して開催し、当店食品売場においても、県内エリアの食の魅力をご紹介。 会期中は、食品売場特設会場、イベントスペースほか、常設店、神奈川県アンテナショップ「かながわ屋」、イートインスペース「お食事ちゅうぼう」にて、鎌倉市・藤沢市・横須賀市・湯河原町・真鶴町の合計13社の名産品やメニューをご紹介しました。

 また、地元ブランドの強化という意味では、そごう横浜店にしかない売場の展開も行っています。その一例が、ビーカー入り手焼きプリンが有名な葉山・マーロウが展開する新業態コーヒーショップ1号店「マーロウブラザーズコーヒー」で、一昨年秋にオープンしました。常設の「マーロウ」の味をその場でお楽しみいただけるカフェとなっています。

「産学連携の取組みについて」 そごう横浜店×スマートニッチ応援団

大学マルシェ

(鈴木基明部長)
 一般社団法人スマートニッチ応援団にご協力いただき、産学連携の取り組みを行っています。一般社団法人スマートニッチ応援団は、「学生主動による社会課題の解決」を目的とした「大学マルシェ」を運営しています。学生は大学マルシェなどを通じて「地産地消による地域の6次産業」や「フードロスによる社会課題」などを事業化し、地域産業からビジネスの基本を学びながら、大学マルシェなどで得た利益を使って子供たちの栄養支援を行う「こども食堂」の運営を目指すことで、様々な理由で食が制限されてしまう子供たちと「地域の食を繋ぐ」活動を行っていきます。今年の5月から「大学マルシェin はまテラス」と題して、同店の通行量の多い2階「はまテラス」にて、東京農業大学の学生が中心となって構成される「学生組織with_ 」と共に、横浜の生産者に学生たちが直接伺い、地元で収穫されたイチゴ、ナス、ミニトマト、ハチミツなどを仕入れて、学生たちが生産者の思いを代弁して販売をスタートしました。秋以降もこの取組みは定期的に行います。

「食品売場が目指すものをお聞かせください。」

(鈴木基明部長)
 魅力あるデパ地下にするために、次の5つの点を更に磨きます。

1.利便性。

2.百貨店らしい専門性。専門的な商品の取り扱い。

3.娯楽性。
発見があるサプライズがあることでお客様に楽しんで頂ける、うれしいと感じて頂ける売場を目指しています。物産展はその域に入ります。楽しんでいただく、発見がある、ここがお客様にたいして一番の大切なことです。

4.話題性
 今話題となっていることが当店にある。またそれを取り揃える事です。

5.来店の動機。
お客様は来店の動機がないと来店されません。目的商品の取り揃えが強化ポイントです。コロナ禍では、ウインドウショッピングは皆無に近い。購買目的があって来店される売場作りが必要です。食料品で目的買いとなると、モチベーション、オケージョン、旬(季節感を) しっかりと打ち出して、というのが重要となります。

 百貨店として横浜駅東口の発展に繋げる必要があり、横浜みなとみらい21地区の活性化に繋がる売場作りを目指しています。みなとみらい21地区の就業人口は現在12・5万人と言われています。超高層マンションも増え、居住人口は約1万人。当店は、この地区をうまく活用して売上の強化に努めていきます。コロナ禍の行動制限が緩和されたので、人流が戻ってきました。同地区に就業の方が帰宅途中に中食とされている商品をよくお買い上げいただいています。社員証をつけた若い女性が昼のお弁当を買いに来られる。それらのお客様は継続して強化をしていきます。

 来年秋開業予定のコンサート会場「Kアリーナ横浜」。当店がこれから行おうとしているのは、このコンサート会場ができることで、神奈川県内外からのお客様が増えると想定していて、そのようなお客様に必要なものとして、横浜のおみやげ物の充実が必要になる。そして弁当の需要が増えるので強化する。例えば昼のコンサート後に遠方からのお客様は新幹線の車内で弁当を食べるだろう。県内の方も時間帯によっては、夕食を弁当にするだろう。地元の大きなブランド「崎陽軒(本社西区高島2)」を中心とした弁当売場の充実を行なっていきたいと思います。

 全国区ブランドである崎陽軒をしっかり充実させていくと共に地元のブランドや食を強化していきたいと思っています。

店舗データ

①店舗名  そごう横浜店
②所在地   横浜市西区高島2-18-1(横浜みなとみらい地区68街区)
③アクセス JR東海道線、京浜急行線、相鉄線、 みなとみらい線、東急東横線、横浜市営地下鉄横浜駅下車
④開店年月日 1985年9月30日
⑤売場面積:85,836㎡  B2F~10F、RF
※周辺地域の人口:横浜市377万、川崎市154万、藤沢市44万、鎌倉市17万