デパート新聞 第2693号 – 令和4年9月1日

7月東京は17.6%増

 日本百貨店協会は、令和4年7月東京地区百貨店(調査対象12社、24店)の売上高概況を発表した。売上高総額は1248億円余で、前年同月比17 .6%増(店舗数調整後/11か月連続増)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭17.5%増(90.2%)、非店頭19.1%増(9.8%)となった。

百貨店データ

  • 3社商況7月
  • 7月店別売上前年比
  • 都内各店令和4年7月商品別売上高
  • 関東各店令和4年7月商品別売上高

人事異動

  • ㈱髙島屋
  • ㈱そごう・西武
  • ㈱松屋

続・無駄の物語 1 – 非合理性について

デパート新聞社 社主
田中 潤

合理的判断

 物的事象については、合理的・効率的に行うことは極めて当然のことである。「病気になれば薬を飲み、手術をする」「通勤には徒歩でなく、電車や車を使う」「朝定刻に起きるために、目覚まし時計を鳴らす」…日常生活の中の一つ一つの事象について、私たちは合理的判断をして行動する。しかし、それは本当に私たち自身の判断なのだろうか。資本主義思想の加熱化、貨幣経済の成熟化で、私たちはあらゆることにこの合理的判断を取り入れるように慣らされてしまったのではないだろうか。

非合理な中で成立する人間関係

 ところで、私たちは孤独では生きられない。常に、誰かと接触し、共鳴しあって生きていかねばならない。つまり、人間関係というもの無しに人生は成立しないのである。そして、人間関係は、非合理の中で成立するものであると、私は確信している。非合理の根底にあるのは相手に対する思いやりである。即ち、自分本位な合理性を優先せずに、まずは相手のことを考えてコミュニケーションをとることが、良い人間関係を構築するためには何より大切なことだ。

 前述したとおり、日本社会では、資本主義の教えが庶民の末端まで浸透している。「インターネットを使って、少しでも安価なものを探す」「自分にとって利益にならない人とは、付き合わない」「自分が納得できるメリットがあることしか、やらない」…その多くが貨幣価値を基準に判断をしているのであり、突き詰めると、貨幣価値こそ合理的判断の基礎であることがわかる。しかし、人間の豊かな暮らしについて考える時、こうした判断基準は極めて危険である。何故なら、その判断には自分以外の人、つまり、他人の立場についての丁寧な思考はないからである。

 人は他者との共存の中で、多くの幸せを感じる生き物である。思いやりある行動をすることで相手が少しでも幸せに近づけば、必ず自分にも豊かな心が芽生える。そして、相手を思う行動は、決して合理的判断からは生まれてこないのである。この非合理を意識して積極的に行動につなげていくための指針こそ、無駄なことをしようという思想である。難しい理屈をこねる必要はない。言葉のとおり、自分にとっては無駄だと思うことを、他人に対しては敢えて意識して行っていけば良いのである。

無駄なことの効用

 無駄なことをすると、不思議なことだが、心が解放された心持ちになる。体がリラックスし、心地よいのである。例えていうならば、学生時代に無意味と思われるような厳しい練習を何時間も続け、練習終了後に飲む一杯の水と共に訪れる至福の時。何日もかけて作り上げた事業報告書を、たった10分間プレゼンテーションして、何の評価も得ずにやり終えたあと、それでもフッと感じる一時の清涼感。いずれも成果があったかどうかに係らず、自身の中で「やった」ことに対する一定の解放感がある。無駄でもいいと思って行った後の心持ちは、こうしたことに通じるところがあるような気がする。つまり、無駄なことは、何かを得ることを目的にした合理的思想とは違う次元で存在しているのである。

 では、何かを得ることを目的にした資本主義的行動は、私たちの心を満たしてくれるのだろうか。少なくとも、私の答えはNo(ノー)である。人間というのは、死に向って生きている。その中で、縁のあった人々と共に豊かに人生を送ることが出来るかどうかが、幸せを感じるための大きな鍵であろう。だからこそ、目先の合理性にとらわれず、一期一会を肝に銘じ、常に相手への思いやりを意識して、無駄なことをやっていきたいのである。

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 僧侶ジャーナリストの鵜飼秀徳氏の近作、「仏教の大東亜戦争」を読んだ。
宗教界がこぞって協力した第二次世界大戦でのその実態に切り込んだものだが、平和を最優先に目指すはずの宗教家の精神構造の脆さがにじみ出ていて、人間という生き物の儚さにいたたまれない思いとなった。

 ロシアのウクライナ侵攻で、戦争に対する抑止力の無さが誰の心にも強く宿っている今、日本においても、人の心を塗り替える事態がいつ起きてもおかしくないとの懸念が拡がる。

 私たちは、理想としての平和から、自らが真剣に目指すべき平和へと心を強く引き締めなければならないのかもしれない。

連載小説 英雄たちの経営力 第4回 源頼朝 その1

経営力 第4回 源頼朝 その1

デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年09月01日号-52 続 淘汰続く百貨店 渋谷と東急

7月15日号の本欄で、都心でも百貨店の閉店が続いている事を報じた。

 日本一の繁華街である新宿を始め、池袋、渋谷でも百貨店という小売業種の見直しが進んでいる。

 池袋マルイは丁度1年前の8月末に閉店し、小田急百貨店新宿店は建て替えのため、10月1日に新宿本館の営業を終了する。小田急は現在の業容( 百貨店) が新ビルで復活するかは未定、としている。

 以前「東急を交えた渋谷の変遷を語ると紙面が尽きてしまう。」と記したが、今号で取り上げてみたい。

続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年09月01日号-52 を御覧ください。

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