税と対峙する – 番外編

平成16年2月20日号(第2266号)

 本紙でも以前紹介した日本イルミネーションシステム㈱が商品開発したEL( エレクトロ・ルミネッセンス)と並んで次世代の光として脚光を浴びているダイオード(LED)について青色を発明した中村氏に対し被害企業に200億円の支払を命じる判決が出た。判決では中村氏の取り分である対価認定を、特許による利益として試算した金額の50%の604億円としたので、今後の裁判では支払額の大幅な増額も見込まれる。今回の判決ですでに対価とこれに加えて払われる金利5%を合わせた約230億円の仮執行(支払を受けること)も可能なようである。

 ところでこの判決で今後支払われるお金の行方が興味深い。中村氏は現在日本居住者かどうかは不明だが、収入に対して日本の税金を課税すれば所得の位置づけによって税金の額は異なるものの最高100億円以上の徴収が見込れる。また中村氏の発明に貢献した人々も当然中村氏から一定の報酬を受けるはずだろうからその人たちの所得についても納税がされよう。一方、この開発によって得た利益についてはすでに企業は納税をすませており、中村氏へ支払う金額は課税済の利益からである。つまりこの判決は企業内にロックされていた資金を個人を通じて国や地方に還元させたという点で行政にとって非常に意義のあるものであったといえる。まさに行政は漁夫の利を得たわけだ。本文でも展開しているようにここでも納税をさせる為の手段として法人対個人という構図がつくられて結果的に行政が利益を得ることになっている。その見地からもこの裁判の行方は被告企業にとって有利に転ぶことはむずかしいだろう。

 今後多くの個人が中村氏に続いて訴訟に踏み切るだろうし、多くの納税が行政にもたらされるからである。