税と対峙する – 18

平成16年2月20日号(第2266号)

高齢者を直撃する負の増税3点セット
消費者対小売業者という構図を画策する行政の政策

 最近の行政の政策は行政対国民という形をさけて国民同志での対立を表面化させているようにみえる。高齢者課税は最も顕著な例である。若者・壮年の持つ年金受給者に対する強い反発をマスコミを使って盛り上げ、平成16年の税制改正では高齢者への大規模な課税強化を実現した。すでに今年から実施されている配偶者特別控除の廃止は女性の社会進出を阻む制度として働く女性対専業主婦の対立軸を掲げ成案化させたものであるが、この制度の廃止は実際にはほとんどすべての高齢者夫婦の控除額削減につながってしまった。更に来年から老年者控除の廃止、公的年金の控除の縮小が実施され、その後には定率減税の廃止も待ち構えている。高額所得の高齢者への課税強化は決して否定するものではないが、今の3点セットは年収300万円クラスの夫婦世帯を直撃するものであり、高額所得者課税の観点とは全く主旨が異なるものである。更に年金収入そのものの減額や受給中の保険料負担も論議されている。マスコミ・情報を上手に使い、高齢者自身にも反撃の機会を与えないまま、こうした形は実現に向ってしまった。そして、これと同じ構図が平成16年4月から実施される消費税の総額表示義務化である。消費税が内税になることは購入するものの価格への価値判断に税金が溶け込んでしまうことを意味する。十数年前まであった車・毛皮・宝石などに含まれた物品税と同様である。そこにはそのものの価値とその金額しか存在しないのである。税率が上がれば本体の価格は変わらないままに税込価格は上がる。これは小売業者にとって致命的である。同業者との価格競争が高じれば本体の値引きをするしかないのである。消費者は消費税の存在を頭から忘れさせて物だけでその価値をみてしまう。結局本体という概念もなくなるのである。消費者と小売業者のせめぎあいの中、行政は高みの見物を決め込みながら税金を回収していくのであろう。こうした事態を防ぐ見地からも消費税と切り離した本体価格のアピールは非常に重要である。        

高齢者世帯を激震させる負の増税3点セット

  1. 配偶者特別控除の廃止
  2. 老年者控除の廃止
  3. 公的年金控除額の減少