税と対峙する – 33

平成17年02月20日号(第2290号)

政治家は増税を苦痛なく語る時代になってしまった
消費税率切上阻止の戦いはいよいよ幕をあけた

 日本の増税路線が全く国民の理解を得られぬまま、着実に固まっていく。小泉首相が、消費税を社会保障の財源に活用していくという考えを明らかにしたことで、消費税率切上げの声がさまざまな政治家の間から、また一段と高まってきている。

 今の多くの日本人の感覚に照らして増税という政策は、結局どうにか受け入れさせられるのだということが、彼らの認識に潜在的に植えつけられてきたようで、非常に危険である。政治家は明確な支持者が背景にある事案についての発言には極めて臆病であり、消極的である。それが国益にかかわることであっても、まず支持者ありきなのだ。郵政民営化などまさにその典型といえよう。

 一方知識のない者、発言力のない者への扱いの冷淡さは、近年の高齢者課税の強化などが雄弁に物語る。「増税」は、まさに声なき声を無視して進めることができる格好のテーマになってきているのである。しかしながら、消費税切上げくらいはこれを推進する動きに対して、声なき声の主が大きな壁となって戦わなければならない問題である。

 平成16年のデパートの売上高は約7兆8千7百億円と、8兆円を割り込んでしまった。既存店売上高の前年割れは8年連続である。こうしたニュースが今の日本の経済状態を語る上で、大きな話題とならないことがなんともやり切れない。

 売上が不調になるごとに、冷夏、暖冬、天災等さまざまな理屈がつくが、20世紀末からずっと売上が落ち続けているというのは、そんな一時的な要因ではない、本質的問題があるからに他ならない。

 その中で、具体的に原因がはっきりしているのは、消費税率を3%から5%に切り上げた1997年から前年割れが続いているという事実である。消費すれば必ず生じる税金である消費税は、消費しなければ何の負担もない税金でもある。この原則を改めて見つめることは非常に重要である。

 すなわち、税率が上がるほど必要なもの、どうしても買わなければならないものは、消費行動の中で絞られていき、買い控え意識が膨らんでいくという点である。また、必要なものでも中古品などで代用できるものは、フリーマーケットなど消費税概念がない市場で調達していく流れが加速するはずだ。そうした「アマチュア的流通経済」は“そのものがいくら”という「即物的時価」が支配し、内税外税とは次元のちがう世界を持っているだけに消費税が概念化し、時価と切り離して考えるくせのついた消費者のニーズに一層合致するからである。

 このように消費税率の切上げは、消費動向の世界で買い控えを超えた大きな変化をおこす危険がある。この2~3年は気を抜けない戦いとなるだろう。