昭和24年10月創刊

メニュー
メニュー
編集部より

グラフは語る その2「食料品」

食料品
惣菜

デパートのアイテム別月間売上の趨勢からここ10年間の消費を読み説く

 本紙デパート新聞は、毎号、独自取材に基づき全国の百貨店73社、189店舗の売上データを元に、その月間概況を掲載している。因みに3月15日号に掲載した2022年1月の売上総額は3751億円で前年同月比は15・6%の増となった。4ヶ月連続のプラスだった。

 掲載したグラフは9年前の2013年1月から2021年の12月までの9年間の推移を辿っている。
※10年ではなく9年間ではあるが、アイテムによってかなり顕著な月別動向が見て取れる。尚、2020年2021年のグラフには緊急事態宣言時発出時期に網掛けをしている、ご留意願いたい。 
※グラフ左の売上の単位は百万円

グラフデータの対象店舗は以下

さいか屋、そごう千葉店、そごう大宮店、ながの東急、グランデュオ立川、スズラン前橋店、井上本店、京王聖蹟桜ヶ丘店、伊勢丹浦和店、伊勢丹立川店、八木橋、小田急町田店、小田急藤沢店、岡島、新潟伊勢丹、東急吉祥寺店、東急町田店、東武宇都宮百貨店、東武宇都宮百貨店大田原店、東武船橋店、松坂屋静岡、水戸京成百貨店、西武所沢店、遠鉄百貨店、静岡伊勢丹、高崎髙島屋、髙島屋大宮店、髙島屋柏店、髙島屋立川店、丸広百貨店川越店
※日本百貨店協会の中で、全期間を通してデータがある首都圏30店舗の売上を合算している。
関東圏の主要百貨店を網羅する一方、銀座、新宿、池袋といった東京の主要ターミナルは、敢えてはずしている。大手百貨店の本店には外商や大型企画といったイレギュラー売上が計上されるため、消費の実態像がつかみにくくなるからだ。ご容赦頂きたい。

 さて、第2回目のテーマは食料品である。ご存知の様に、基本的には景気に左右されにくいアイテムだ。それは食品が「必需品」であるからに他ならない。但し、毎日の様にデパ地下で食品を購入するのは、金持ち、失礼、そこそこの「富裕層」であり、食品スーパーよりは景気に敏感だ。メイン客層は年配の主婦である。

 ここでは比較のために、生鮮食品と総菜の売上推移を見比べて行こう。

生鮮食品需要はダウントレンド

 先ず、生鮮食品の9年間のグラフを見て欲しい。特に毎年12月の売上を、年を追ってみて貰うとわかるが、なだらかに下り坂である。もちろんコロナ禍の2020年2021年は最も低くなっている。特に、最初の緊急事態宣言が発出された2020年の4〜5月、国民は本当に外出を「自粛」したので格別低い。
※お上から「不要不急」と言われても、食品の購買には大きな影響はないはずだが、デパ地下の食品は、近所のスーパーとは異なり、正真正銘の不要不急の「高級品」なので、マイナスに転じたのだ。とは言え、ファッション等と比べれば、大きなダウンとは言えないだろう。

 食品のダウン傾向は、直近コロナの2年間だけ「極端に低くなった」という訳ではない。あくまで、なだらかな下降線の延長線上なのだ。再び2013年の12月に注目して貰うと、売上は70億を上回っている。それが6年後2019年には既に60億を下回っている。まだ日本国民が、遥か中国のウイルス感染を「対岸の火事」として安穏としていた頃だ。この10年、食品売上には、コロナとは別物のダウントレンドが明確に存在したというコトだ。

 その原因は、我が国の人口減少( 少子化) なのか、核家族化が更に進んで一人世帯が増えたせいなのか、日本人の嗜好の変化、例えば「魚離れ」なのか。例えば、少子化の裏返しである高齢化が進み、デパートの頼みの綱である上顧客= 富裕層も当然高齢化した。その高齢者の自炊の減少の結果として、生鮮品( 肉、魚、野菜といった素材)から、出来合いの総菜( 調理済み食材) へのシフトが進んだせいかもしれない。成城石井やカルディの輸入食材ブームも遠因と言えるだろう。

 オマケに、コロナ禍では、ウーバーイーツや飲食店のテイクアウト、果てはコンビニの冷凍食品の充実など、デパ地下を取り巻く環境は、順風満帆とは言い難い。飲食店の外食を補ったのは、デパ地下ではなく、テイクアウトや食品スーパーやコンビニであった様だ。そんな「生鮮食品」に比べ、それでも「総菜」は2019年までは堅調に推移していた。12月のピーク売上こそ50億超がやっとだが、どの月も30億前後を、かろうじて維持している様に見える。先に述べた「生鮮品からの総菜シフト」現象も、底支えとなったのであろう。忙しい富裕層たちの間でも、「時短」を旗印に、調理離れが進行しているのだ。

食品需要のピークは12月

 食品売上の年間推移は、12月11月をピークに次は6〜7月に小山がある。これらはほぼ、中元、歳暮、帰省のお土産( 贈答品) といった、いわゆる「ハレ消費」である。普段は自家需要としては購入しない高額品を、「ご進物= ギフト」として送り合う、我が国固有の慣習だ。特に中元歳暮に関しては、「老舗デパートの包装紙」を目当てに、「ちゃんとした家」では長年続いた年間最大のギフト需要である。この「包み紙」は老舗の「暖簾:のれん」とイコールであり、そのブランド価値を培ってきた、百貨店商売の真骨頂でもあったわけだ。

 但し昨今は、虚礼廃止の掛け声とともに、年賀状や盆暮れの付け届けを「是」としない空気が、日本古来のギフト文化を「蔑ろ:ないがしろ」にし、逆にクリスマスやバレンタインといった欧米のギフトを取り込んで来た。その最右翼というか、ある意味「張本人」も、同じデパートなのである。中元歳暮の減った分をクリスマスやバレンタインで「穴埋め」したいという気持ちは、商売人であるから当然とも言えるが・・・

 只、クリスマスギフトならいざ知らず、バレンタインやホワイトデイに至っては、そもそものギフトモチベーションの由来も何も、もはやデパートと菓子メーカーの陰謀( 失礼!企画) でしかない。定番化したクリスマスのお祝いでさえ、某コーラメーカーのキャンペーンが発祥という説もあるくらいだ。ギフトに限らないが、需要のある所に供給をするのが「商売」であるから、ここではこれ以上は言及しないでおこう。

 デパートに限らずだが、食品売上の特色は、12月の売上高が極端に高いことだ。近所の食品スーパーや、イトーヨーカ堂、西友のグラフでもここまでにはならない。毎日毎日、同じ人口の胃袋を満たす食料品が、12月だけ平月の2倍以上に跳ね上がってしまうのだから。

 量ではなく、単価の違いが売上の差を生んでいる典型的な例である。

食はデパートの4番打者なのか

 百貨店でファッションが売れなくなったと言われ続けて久しい。前回取り上げた「子供服」は言うに及ばず、紳士も婦人もスポーツも同様だ。一方で海外ブランドは堅調で、それと2極化を成す安価なファッションは、ユニクロに代表される大手アパレルに取って代わられた。機能性重視で低価格で手に入るユニクロや無印は、ついに職人の作業着の店「ワークマン」ブームにまで及んだ。コロナ禍であっても静かに浸透した「アウトドアブーム」もその追い風になった様だ。

 そんな一般消費者( 例えばユニクロユーザー)であっても、食への「こだわり」は以前強い。

 なぜなら、百貨店で一番の集客と売上が得られる「催し物」は物産展だからだ。一番人気の北海道物産展などは、都内のどこかのデパートで常に開催されている。テレビ番組の取材で、大手百貨店の物産展専属バイヤーが、北海道の漁村と飲食店を駆け回る「絵」は何度も見て来た。昨今では物産展はデパートの専売特許ではなくなった。駅ビルやショッピングセンターでも、頻繁におこなわれる様になった。コロナ禍で国内旅行を自粛した人びとの「受け皿」になった、と見るが正解の様だ。

 百貨店のハイブランドショップで買物が出来なくても、物産展で、普段は口にすることが出来ない「ご当地の旨いモノ」が手に入るのであれば、一般消費者も喜んで「プチ贅沢」を堪能できる。時間も金も節約出来る、大変「コスパ」の良いレジャー、いやエンターテインメントではないだろうか。

 今回のグラフには反映されていないが、スイーツや酒( ワイン、ウィスキー、日本酒) は、高価であっても需要は衰えていない。生鮮品がダウントレンドだとしても、衰えつつあるデパートに中で、デパ地下は、健闘を続ける現役4番打者には間違いない様だ。