昭和24年10月創刊

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編集部より

グラフは語る その1「子供服・洋品」

関東合算 子供服用品

デパートのアイテム別月間売上の趨勢からここ10年間の消費を読み説く

 タイトル倒れで恐縮だが、本紙デパート新聞は、毎号、独自取材に基づく全国の百貨店73社、189店舗の売上データを元に、その月間概況を掲載している。因みに2月15日号に掲載した2021年12月の売上総額は5920億円で前年同月比は 8.8% の増となった。3ヶ月連続のプラスだった。

 掲載したグラフは9年前の2013年1月から2021年の12月までの9年間の推移を辿っている。
※10年ではなく9年間ではあるが、アイテムによって、かなり顕著な月別動向が見て取れる。
尚、2020年2021年のグラフには緊急事態宣言時発出時期に網掛けをしているので、ご留意願いたい。
※グラフ左の売上の単位は百万円

グラフデータの対象店舗は以下

さいか屋、そごう千葉店、そごう大宮店、ながの東急、グランデュオ立川、スズラン前橋店、井上本店、京王聖蹟桜ヶ丘店、伊勢丹浦和店、伊勢丹立川店、八木橋、小田急町田店、小田急藤沢店、岡島、新潟伊勢丹、東急吉祥寺店、東急町田店、東武宇都宮百貨店、東武宇都宮百貨店大田原店、東武船橋店、松坂屋静岡店、水戸京成百貨店、西武所沢店、遠鉄百貨店、静岡伊勢丹、高崎髙島屋、髙島屋大宮店、髙島屋柏店、髙島屋立川店、丸広百貨店川越店
※日本百貨店協会の中で、全期間を通してデータがある首都圏30店舗の売上を合算している。
関東圏の主要百貨店を網羅する一方、銀座、新宿、池袋といった東京の主要ターミナルは、敢えてはずしている。
大手百貨店の本店には外商や企画の大型イレギュラー売上が計上されるため、消費の実態像がつかみにくくなるからだ。ご容赦頂きたい。

 前置きが長くなってしまった。早速子供服、子供用品の売上推移を見て行こう。

子供服需要は3月

 先ず、9年間で、なだらかに下り坂のグラフである。特に2020年2021年はそうだ。

 デパートの子供関連売上の特色は一目瞭然だが、3月の売上高が極端に高いことだ。賢明なる購読者諸氏はすでにお気づきだと思う。これは4月の入園入学の準備で「よそ行き」の服を購入するからだ。地域によっ ては制服や体操服の購入も、地元百貨店が指定されていたりするからだ。ブランド物のフォーマル子供服と、昨今忘れてならないのは高級ランドセルだ。

 次いで、グラフの高い山は1月だ。クリスマス商戦のある12月ではなく、1月なのだ。これはお年玉需要の山なのではと推測される。キッズ需要には、業界の常識として「シックスポケット」というコトバがある。子供には両親以外に、父方母方それぞれの祖父母が計4人おり、両親と併せて「金の出どこ= 財布」が6つもある、という意味だ。

 次に月別ではなく、年毎に趨勢を見て行こう。2014年の3月に30億円を計上している。28店舗の合計売上であるから、1店舗平均で1億以上は売れている勘定になる。地方都市や郊外店とは言え、デパートの底力を感じる。

淘汰される子供服売り場

 だが、グラフを続けて2014年、2015年と見て行くと、3月のピーク売上の山は30億を下回っている。シロウトなら単純に「ナルホド、これが少子化の結果か」と考えるかもしれない。もちろん、その傾向は 年々強まっているだろう。だが、それだけではないのだ。超都心型の基幹店ならいざ知らず、地方都市や郊外立地のデパートの、特に子供服ゾーンは、レディス、メンズ以上に逆風にさらされ、売場の縮小を余儀なくされているのだ。極端な例では、ユニクロやニトリやノジマに区画を譲り、子供服ゾーン自体が消滅してしまった、ということなのだ。

 更に、コロナ禍の2020年、2021年の3月売上は20億円を下回っている。
2014年のピーク30億超から、わずか6年の間に10億円以上マイナスしてしまったのだ。これはもちろんコロナ影響ではあるが、グラフを良く見てみると、コロナ前の2019年の3月時点で2014年の3月から 10億近くマイナスしているのだ。本紙のコロナ関連記事で繰り返し言及しているが、百貨店のファッション売上は( 子供服も含めて) コロナ前から下降線をたどり、「コロナがとどめを刺した」というのが実態なのだ。子供服は2019年までのインバウンド需要の恩恵を、ほとんど受けて来なかったため、より結果が顕著に表れた例となった。コロナ禍の2021年の6〜9月に至っては、デルタ株の影響から「超低空飛行」となり、ただでさえ低空飛行だった前年2020年のグラフの下を更にくぐった形だ。

デパートの社会的役割

 繰り返しになって恐縮だが、百貨店の売上グラフを見てみると、少子化とそれを上回るコロナ禍のマイナス影響がみて取れる。だが、それを「世相」というコトバで一括りにはしたくない。

 更に発想を飛躍させると、大学に進学したもののリモート授業が続いて、部活も出来ないし友達も出来ない、とか、そもそも富裕層の子息でないと経済的に進学できない、とか、奨学金負担が重くて借金とともに社会人になった、とか、心を病んだ親の代わりに高齢者の介護にあたる「ヤングケアラー」の問題とか、次々に日本の国が抱える問題が想起される。

 もしかしたら、デパート新聞の守備範囲を逸脱しているかもしれないが、昨今の大手百貨店の「富裕層シフト」戦略を聞いていると、日本の大問題である、少子化や貧困化の問題を避けて通っている、という印象だけが残る。公益性や「先義後利」を忘れ、効率重視だけで、自社だけが潤えば良いという方針や戦略で、我らがデパートは本当に良いのだろうか。

 只、生き残れば、それで良いのだろうか。また新聞屋の「きれいごと」だと笑われるかもしれない。それを企業に求めるのは「お門違い」だと叱責されるかもしれない。しかし筆者はいちデパートファンとして、「何かが間違っている」と言い続けたい。それが「デパートのルネッサンス」を標榜する。デパート新聞の役割だと思うからだ。

 子供のより良い未来を創造はおろか、想像も出来ないなんて、先進国ではないからだ。

 子供服、子供用品のグラフから、こんなコトを考えた。