デパート新聞 第2680号 – 令和4年2月1日
12月東京は11.1%増
日本百貨店協会は、令和3年12月東京地区百貨店(調査対象12社、24店)の売上高概況を発表した。売上高総額は1636億円余で、前年同月比11 ・1%増(店舗数調整後/4か月連続増)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭12・3%増(90・3%)、非店頭1・4%増(9・7%)となった。
百貨店データ
- 3社商況12月
- 12月店別売上前年比(%)
- 都内各店令和3年12月商品別売上高
- 関東各店令和3年12月商品別売上高
人事異動
- J.フロントリテイリング㈱
- ㈱大丸松坂屋百貨店
地方百貨店の時代 その32 - 社員食堂
デパート新聞社 社主
田中 潤
福利厚生の縮小するデパート
昔のデパートは従業員がとにかく多かったので、社員食堂は早くから充実していた。デパート自体がレストランをもっているわけだから、食事の質も他業種と比べ高いレベルでもあった。
最近の社員食堂がどのくらいのレベルで機能しているのかは、詳細は分からない。ただ、従業員の減少や業績の低迷などで福利厚生施設としての役割は縮小せざるを得ないことは間違いないだろう。そして、お金をかけないから美味しくなくなる。だから、従業員も使わなくなる。利用者が減れば、更にコストをかけられなくなる、という悪循環に陥ってしまうのである。
ランドマークとして機能するための戦略
地方百貨店は、この社員食堂の在り方を抜本的に見直していくことが必要である。まず、取り組みたいことは、従業員だけでなく一般の人、つまり地域の方々にも広く利用されるような仕組みを作ることである。もちろん、誰もが安全に食堂に出入りできるように十分なセキュリティ対策をしなければならない。
店内からの導線の検討や入場者に対して一定のチェック地点などの設置をすることは必要になろう。顧客の安全確保や店内の商品管理にリスクを及ぼすわけにはいかないからである。ただし、そこをクリアできれば利用そのものについては、基本的に大きな障害はなさそうである。
この形を作るメリットは多い。まず、今までデパートを利用していなかった人が新たな顧客となるチャンスが生まれる。従業員と顔を合わせることで、将来的に店でのやりとりにも親近感を増す。近隣の方々との交流には絶好である。
食事時間までお客さんと一緒では休めないという意識では、これからのデパートの従業員は務まらない。もちろん一定の見識は必要だが、それは社員同士の場合でも心得るべきマナーで十分ある。同じ仲間くらいのつもりで接することが肝要だ。
そもそも、外部の利用者もその前提で食事に来ているのであり、店内同様のサービスをされる気はサラサラないのだ。
さて、 一般顧客にも満足されるレベルの食事が提供されることで、従業員の利用頻度も増し、一般客、固定客も増える。結果的に、食品部門の利益向上につながるといった効果が考えられる。むろん、この戦略も最大の目標であるデパートが地域のランドマークとして機能するための一つのピースである。
朧
世界各国で納めた税金の合計額を開示する企業が国際的に増えてきているようだ。行き過ぎた株主至上主義を反省しなければならない時代の到来である。配当以外は支出を抑え、過度な内部留保を進めた企業に対して社会の目が厳しくなってきたのである。従業員を始め、国や地域など様々なステーク ホルダーへの公益性を求められてきたことは、脱資本主義に向けた大きな前進である。
ところで、こういうことをさきがけて行っているトヨタ自動車の2020年12月期の全世界での納税額は574億円と公表されている。1桁違うのではないかと、目を疑った。2兆円規模程度の利益を上げている企業なら7〜8千億円は納税して当然と思うのだが、やはり大企業は様々な優遇を受けているということなのだろうか。コトは、簡単ではない。
連載:デパートのルネッサンはどこにある 41
今回は、二部構成となっております。
第一部 - 変異したのはオミクロンでなく尾身会長?
残念ながら、コロナ感染者急増のニュースからスタートする。感染力がデルタ株に比べ4倍とも言われ、猛威を振るうオミクロン株ではあるが、一方で重症化率が低く、潜伏期間も比較的短いらしい。そのため2月上旬にはピークアウト(収束)するのでは、という楽観的な観測も出始めている様だ。
但し、短期間での感染者増=感染爆発を受け、社内や知り合いに感染者や濃厚接触者が出て、軽症又は無症状であっても、1~2週間の自宅待機を余儀なくされた方が多い、と聞く。もしかして以前よりコロナが「近づいている」と感じた方も多いのではないだろうか。
不思議なコトに、我らがデパート業界では、職場クラスターの発生は、今のところ報告されていない。
第二部 - デパートには買いたいモノが無い!?
前号に掲載した編集長インタビューで、取材をした新里社長( 新里製本所) から「デパートには自分が買いたいモノがない」という発言があった。
日本の百貨店には「もはや買いたいモノがない」というのが、いつからか日本人の「本音」となったのであろうか? 現代日本の消費のリアルをデパート新聞の視点から探って行きたい。
※もちろん「日本人」を一括りに考えるのは大変「危険」だとも思う。従って今は「日本人の大多数の意見」はというスタンスで話を進めよう。
バブル期には10兆円ほどあった百貨店の市場規模が、昨年には4兆円程度と半分以下に減ってしまった(1991年9・7兆円→2020年4・2兆円)。元々ジリ貧であった百貨店売上が、コロナ影響によりインバウンド需要も消失し、結果として往時から半減したのは正真正銘の事実なのだから。
続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年02月01日号-42 を御覧ください。