税と対峙する – 13

平成15年11月20日号(第2261号)

現在の企業の90%は実質赤字の中での赤字企業への課税は経済悪化の大要因
大都市のデパートには一層税金の重圧が

 国税庁が毎年発表する企業の所得に関する報告によると、平成?事務年度(平成?年7月~平成?年6月)に所得があった企業は確定申告した中で約30%と過去最低であった。所得があるということは税金(法人税)を納めていることを意味し、一方納めていない企業が70%あるという現実は不況を明確に反映した数字といえよう。加えて次の点も確認していただきたい。中小企業は資金の借入をする為には、決算上利益を計上することは不可欠である。税務上は税収確保の見地から固定資産についての減価償却費や、売掛金等に対する貸倒引当金の計上は任意であり、また有価証券の評価損の考え方も原則は原価を求めているなど利益(所得)を出すようなかたちが優先されている。様々な決算テクニックで「損」を出さないことができるのである。つまり、それだけ赤字を減らすことが可能であり、実質は赤字であってもこれらの調整によって、わずかな利益(所得)を計上し、確定申告をする中小企業は数多い。つまり、上記の30%の黒字企業の内、実際にはその半分 或いは?は実質赤字ながらどうにか所得を申告している企業なのである。行政の入札要件や銀行の借入査定の形式主義が生んだ悲しい実体がここにあるわけだが、これを勘案すると本当の黒字企業は全体の1割程度ではないかと考えられる。このような時代背景を無視し、赤字法人に容赦なく課税が行なわれる事業税の外形標準課税が来年4月から実施される方向である。デパート自身が実際に納める税金が増えるのは再三本紙で述べてきたように不可避である。同時に消費者たるすべての法人の需要を確実に減退させる恐れがあることも業界にとっては極めて憂慮される事態である。しかも、東京・大阪・京都・愛知など大都市圏の都府県では通常の税率を超える税率(超過課税)をこの外形標準課税に適用することを早々と表明しており都市部のデパート・法人にとっては一層心配な点といえよう。

 水面下で着実に進む課税の強化に対して注意を深めることは急務である。