税と対峙する – 12

平成15年11月5日号(第2260号)

消費税の端数処理損税の危機は当面去る
納税義務者(デパート)負担のリスクは引き続き警戒

 平成15年9月30日に消費税法施行規則の一部を改正する省令が公布された。来年から義務づけられた消費税の総額表示(税込)に伴ない、販売時点で生じる消費税の端数処理についてデパートのように販売回数の多い小売店が被る損税危機が一応回避されたといえよう。

 次のような処理が認められたからである。

 税込価格で代金決済した際に発行するレシート等に領収金額の中に含まれる消費税額について1円未満の端数処理をした後の金額が記載されている場合に限り、その金額を基に消費税計算を行うことが認められたのである。具体例で説明しよう。

 たとえば本体価格99円の商品を販売する場合消費税はその5%で4.95円となる。この場合レシートに総額表示103円の商品として「内消費税4円」と明示した場合、(4.95円―4円=0.95円)の消費税は端数処理して切捨されたことを意味する。つまり、デパートの任意で切捨ての選択をするわけである。仮に99円の商品を100個販売すれば、(総額表示103円×100=10300円)は(本体価格99円×100=9900円)と、(消費税4円×100=400円)とになる。これが現場のお金の区分である。これについて申告の際、消費税計算を普通に行なえば(9900円×5%=495円)つまり495円が消費税となる。495円を預った形になるわけだ。しかし実際には400円しか預っていないわけであり、(495円―400円=95円)の消費税をデパートは自分の利益から支払うことになってしまう。これについて切り捨ての積み上げ処理が認められたことで現場の計算をそのまま消費税の申告に使えるために95円の消費税の納付義務は無くなり、申告上も預った消費税は400円ということでよいわけである。販売機会の多いデパートではこの金額は一年間で大変な金額になる。年商1000億円のデパートで一年間で5千万円もの負担(詳細は本紙9月20日号)がおこりうるわけでこれが回避されたことは大きい。しかしこれも財務省では「当分の間」としており、決して予断は許されないのである。