デパート新聞 第2678号 – 令和4年1月1日

デパート新聞社 社主 田中潤

新年あけましておめでとうございます

 デパート新聞読者の皆様、新年おめでとうございます。
コロナ禍での再びの正月、様々な思いの中で迎えられたことと拝察致します。

 さて、コロナがもたらした生活様式の変化は、もはや後戻りが出来ないものを確実にはらんでいます。最大の事例は亡くなった人を送る行為であり、故人の年齢に係わらず、親戚、親しい知人にさえ声をかけることは非常に少なくなっており、この傾向は更に加速していくものと思われます。呼ぶ方も呼ばれる方も、決して前向きで行うわけではない行事は、今回の災禍をきっかけに大きく変貌することでしょう。

 居酒屋での多人数の飲み会もしかりで、そもそも全員が喜んで参加していたわけではないこのような集りは、開催反対意見が一定の勢力となっていくと思われます。これらに関わる業態は、大きな危機を迎えていると言えるでしょう。

 さて、デパートです。
海外の観光客がどのくらい戻ってくるかということが大きなテーマであることは間違いありません。しかも、コロナ問題だけでなく、世界的な政治不安を鑑みると旅行者の往来が以前のように活気あふれるものになるのか懸念もあります。

 そうした中で、国内の需要をしっかり引き出していくことは、将来にわたっての最大の課題です。それは、本紙で再三訴えているようにデパートが顧客を始め従業員・地域の方々、そして、株主とデパートを取り巻く不特定多数のステークホルダーとのコミュニケーションを具体的に作り上げることが出来るかどうかにかかっています。

 ビジネスとしての合理性一辺倒ではなく、「人間関係の非合理性」を大切にする考え方に積極的に光を当てていくことです。デパートがすべてのステークホルダーに思いやりをもって向き合うことを心掛けるためには、自分本位の合理性は捨てなければなりません。この覚悟をもって経営にあたることが出来るデパートが、今後生き残っていくための大きな財産を身につけることになります。

社)日本百貨店協会会長 村田善郎

生活者の価値観や消費行動の変化をイメージしながら、長きにわたる苦境の中で蓄えた知見をもって、変革の努力を続けていく

社)日本百貨店協会 村田善郎 会長
社)日本百貨店協会 村田善郎 会長

 明けましておめでとうございます。

 新年を迎え、会員各社、並びに関係先の皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

 さて昨年の百貨店業界を振り返りますと、長引くコロナ禍で正に暗中模索・試行錯誤の一年を過ごしてきたと実感しています。年初から緊急事態宣言が発出され、夏場にはデルタ株による感染急拡大で入場制限等の対策強化が求められるなど、安心・安全確保に向けて気の休まる間もありませんでした。春先に開始されたワクチン接種が加速することで、10月に緊急事態宣言は全面解除されましたが、今なお会員各社では感染再拡大への警戒を解かずに対策を継続されています。

 国内外の社会経済情勢にも大きな変化が見られました。国際的な動向では、1月の米国政権交代・バイデン大統領就任に始まり、G7サミットにおける対中国懸念、アフガンでタリバン政権樹立、年末のウクライナ問題など、国際秩序の変容が鮮明になっています。同様に国内でも目まぐるしく情勢が変化しました。無観客開催となった東京オリパラ閉幕後には、自民党総裁選で岸田政権が発足し、直後の衆議院総選挙でも与党が安定多数を確保して、新内閣の下、経済対策やコロナ変異株対策が矢継ぎ早に展開されています。

 こうした外部与件に囲まれて、百貨店業界の業績動向は、未だ集計中ではありますが、一昨年に続く厳しい結果が予想されます。コロナ禍の中での外出自粛や消費意欲の冷え込みに加え、特に大都市圏で休業・時短のない通常営業がほぼ出来なかった背景がありますが、その一方、高額消費や巣籠り需要の堅調推移、或いは会員各社が積極展開した新たな営業施策におけるデジタル活用、更には年終盤からの売上回復基調など、百貨店の今後を占う上で期待の持てる前向きな事象も見られました。

 また、昨年3月から7月に実施された経済産業省主催の「百貨店研究会」も画期的な出来事です。政府による産業政策の一環として、百貨店が抱える構造課題を抽出し、その解決の方向性を示すことで、再び成長す るための変容を促すという趣旨から、活発な議論が行われ報告書にまとめられました。ここには「持続可能性に向けた地域社会における役割強化・過剰供給によるロスの削減」、「DXを通じたサプライチェーン全体の高度化」、「リアルとヴァーチャルの融合による付加価値向上」等の改革テーマが提起され、業界にはその具体的な解決策の議論に繋げていくことが期待されています。

 そして迎えた令和4年はどのような展望となるのか。様々な変数が絡み合う中で、明確な見通しは困難ですが、コロナに翻弄されてきた局面は転換しつつあり、昨年までとはかなり様相が異なります。変異株の懸念が残るため、巷間リベンジ消費と言われるような急激な需要の戻りは望めないものの、新たなフェーズにおいて景気や経済、とりわけ個人消費の動向については、徐々に回復軌道を辿るのではないか。希望的観測とはいえ、およそこの様な共通認識ではないでしょうか。

 新しい資本主義を標榜する政府は、既に過去最大規模の緊急経済対策をまとめ、財政出動を伴う景気浮揚策を予定しています。また、成長と分配の好循環と分厚い中間層の再構築を目指すべく、賃上げ税制等の格差是正策、地方創生のためのデジタル田園都市構想、脱炭素化・循環型社会に向けた制度整備、オープンイノベーションによる起業促進等々の個別施策を設定しつつ、コロナ後の新しい社会像を提示しています。

 いまが時代の転換点にあることを反映した日本の将来展望と言えますが、百貨店業界においても、生活者の価値観や消費行動の変化をイメージしながら、長きにわたる苦境の中で蓄えた知見をもって、変革の努力を続けていくことが肝要と思います。その際、百貨店の業態価値がお取引先に支えられていることを、ここで改めて認識する必要もあります。コロナ禍で辛苦を共にしたお取引先との緊密な連携、課題感の共有を通じて、業界の枠を超えたサプライチェーン全体の再生を図ることが大事ではないかと思います。

 当協会では、これから4月にスタートする次年度事業計画の策定を進めますが、今年こそ会員各社の本格的な業績回復を目指す年と捉え、「経済運営・各種政策課題に対する要望」、「生産性向上に資する共通の仕組みづくり」、「百貨店の価値再創造に向けた研究および広報活動」を重点に、業界横断的な協調領域にある諸課題の解消策を展開してまいりたいと考えております。そして、この成果を高めるには、お取引先ほか関係各方面の皆様との密接な連携・協働が不可欠ですので、今後も引き続き、百貨店に対する一層のご支援をお願い申し上げる次第であります。

 今年の干支「壬寅(みずのえとら)」には、厳冬を超えて新たな成長の礎を固めるという由来があります。新年を迎え、事務局共々気持ちを新たに、会員各社の繁栄を目指し努力してまいりますので、引き続き、協会活動へのご理解・ご協力をお願い申し上げます。

社)日本ショッピングセンター協会会長 清野智

地域のお客様の日常に寄り添う施設として、「リアルな場」だからこそできる機能や体験をさらに進化させる

日本ショッピングセンター協会清野 会長
日本ショッピングセンター協会清野 会長

 謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 2021年は、一昨年に引き続き、新型コロナウイルスの影響を大きく受けた1年でした。デルタ株による感染者数の急拡大によって緊急事態宣言・まん延防止等重点措置が相次いで発出され、政府や自治体から大型商業施設に対し、「3密回避」や「人流抑制」を目的として休業や営業時間短縮の要請が繰り返しなされました。全国のSCはその要請に真摯に応じましたが、その結果、大都市のSCを中心に大幅な売上減少に陥っています。緊急事態宣言等が明けた10月以降、徐々に人出は戻りつつありますが、売上げは回復しきらず、依然として厳しい営業状況が続いています。このような状況においてもSCは、流通12団体で定めた「感染拡大予防ガイドライン」の遵守等、徹底した感染対策を講じ安全・安心な利用環境を整えるとともに、オンライン接客やライブコマースといった新たな顧客接点・購買方法の提供、テレワークの拡大に合わせたコワーキングスペースの設置、ウェルネス志向の高まりに対するクリニックモールや健康食などを扱う専門店の導入など、コロナ禍による生活者の関心や行動の変化に柔軟に対応して参りました。

 コロナ禍を経験した今、SCは、地域のお客様の日常に寄り添う施設として、「リアルな場」だからこそ提供できる機能や体験をさらに進化させていかなければなりません。

 これらを踏まえ、2022年にSCが取り組むべき事項は以下の3点だと、私は考えます。

 1つ目は、「人材確保・働き方改革の推進」です。少子高齢化などに起因する生産労働人口の減少を見据え、SCに携わる人材がお客様への接遇に注力できるよう、日常の事務作業などについてはデジタル技術を活用した業務見直しや効率化を推進し、従業員一人ひとりが生き生きと働きやすい環境を提供していくことでSCの進化・成長につなげていく必要があると考えています。

 2つ目は、「持続可能な社会への貢献」です。2015年の国連総会で採択されたSDGs(持続可能な開発目標)は、日本においてもさまざまな業界や企業で積極的に取り組みはじめています。とくに環境問題について、消費を促すSCとしては、かねてから省エネ設備や脱炭素技術の導入、廃棄物の削減などに取り組んで参りました。さらに、認証ラベルを取得した原材料を使用する専門店の積極的な導入や、イベントやキャンペーンの開催など、日々の営業活動を通じた地球環境への貢献に取り組むことが求められると考えています。

 3つ目は、「リアルな場の存在価値のさらなる向上」です。コロナ禍の影響もあり、地域のお客様の価値観や生活様式は急速に変化しつつあります。多様なニーズに応える商品や機能の強化に加え、公共機能の拡充や防災拠点の整備、ECと連携した新たな顧客体験の提供など、お客様に「SCは便利で楽しい」と感じていただける施設に進化させていかなければならないと考えています。

 新年恒例の「SCビジネスフェア2022」では、多くの方々の英知の集結により、今後のSCのあり方について有益な示唆が得られる場となることを期待しています。当協会は2023年に設立50周年を迎えます。これまでの50年を振り返り、次の新たな50年を創造すべく、
「人材育成」「情報発信」「研鑽・交流」
を事業の柱に、変化に挑むSC業界を全力で支援して参ります。

 本年も協会活動への格別のご理解、ご協力をお願いいたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。

株)三越伊勢丹ホールディングス代表執行役社長 CEO 細谷敏幸

世界へ常に発信し続けるナンバーワン、かつオンリーワンの百貨店グループを目指す

三越伊勢丹ホールディングス 細谷 社長
三越伊勢丹ホールディングス 細谷 社長

 2022年の年頭にあたり、謹んで新年のご挨拶を申し上げます。

 昨年は、継続するコロナウイルス感染症拡大と度重なる緊急事態宣言等の発出により、私たちのくらしや行動はさまざまな制限を受けました。現在、我が国の感染者数は諸外国に比べて落ち着いて推移しておりますが、新たな変異株の懸念など先行きは非常に不透明です。このような中、感染拡大防止に向け引き続き最前線でご尽力されている医療関係者の皆さま、また政府および自治体の皆さまには、心からの敬意を表します。

 三越伊勢丹グループの店舗におきましては常にお客さまと従業員の安心・安全を第一に、徹底した感染拡大防止に向けた取り組みを行いながら営業しております。皆さまにはご理解とご協力をいただき厚く御礼申し上げます。

 昨年11月に当社グループの新たな中期経営計画を発表いたしました。長期に目指す姿を「お客さまの暮らしを豊かにする″特別な″百貨店を中核とした小売グループ」と定め、基本戦略を「高感度上質消費の拡大・席巻最高の顧客体験の提供」としました。
‶特別な″の言葉にはお客さまお一人お一人のお困りごとを感動的に解決し、ご要望に革新的な提案でお応えする、世界へ常に発信し続けるナンバーワン、かつオンリーワンの百貨店グループを目指す、との想いを込めております。また、高感度上質戦略等で百貨店を再生させ、三越伊勢丹グループと個客とのつながりを拡げ、グループ連邦の推進によりグループ収益を拡大し、将来的には憧れと共感の象徴となる三越伊勢丹両本店がある新宿・日本橋の″まち化″―あらゆるインフラをグループ企業が担い、まち全体で大きな収益を上げる体制―の構築を目指します。まずは、2024年度までに経営統合後の最高益を達成し、さらにその先の成長への礎とするべく、グループ全社が一丸となって進めてまいります。

 併せて昨年11月末には、当社として初めての「三越伊勢丹グループサステナビリティレポート」を発刊いたしました。当社は、社会に対する企業の責任として、社会の様々な課題に向き合い、企業活動を通じてその解決に貢献することで、関わりのある全ての人々の豊かな未来と、持続可能な社会の実現に向け、役割を果たしてまいります。

 今後、一刻も早いコロナ禍の改善を切に願うとともに、お客さま、株主さまはじめステークホルダーの皆さまのご愛顧に改めて感謝し、皆さまお一人お一人の2022年が素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

株)髙島屋取締役社長 村田善郎

次の200年に向けて、「すべての人々が21世紀の豊かさを実現できる社会の実現」に貢献できるよう社会課題の解決に取り組む

株)髙島屋 村田 社長
株)髙島屋 村田 社長

 明けましておめでとうございます。

 2021年は、新型コロナウイルス感染症の想定を上回る拡大により、髙島屋グループ(以下、当社)の商業施設においても臨時休業や入店制限の実施を余儀なくされるなど、大変に厳しい経営環境となりました。一時は感染の収束により個人消費は着実な回復傾向にありましたが、昨年後半からは新たな変異株の影響により、依然として先行きな不透明な経営環境が続いております。

 こうした中、当社においては、グループ総合戦略「まちづくり」を推進し、時代や社会、お客様からのニーズの変化に対応すべく、「街のアンカーとしての役割発揮」「館の魅力最大化」に取り組んでおります。しかしながら本来ブランド価値の源泉である百貨店の経営は、新型コロナウイルス禍で大きく傷んでおり、その再生そのものが持続的成長に向けた喫緊の課題であります。そこで2022年は、百貨店の再生に向けた「異次元の構造改革」の年と位置づけております。中核事業の百貨店においては企業経営や生産性向上に向けた仕組みを根本から変える構造改革に取り組むとともに、品揃えや環境、サービス面において、ワンストップでお買物を楽しんでいただける店づくりを実現する営業力強化に取り組んでまいります。グループ事業においても、商業開発や金融、飲食など既存事業の深耕や新規事業の開発に取り組み、より一層、当社の強みであるグループ総合力を発揮していける体制を構築してまいります。

 当社には、創業以来、190年以上にわたって受け継いできた「店是(てんぜ)」という商いの基本的行動規範があります。この店是は現在のグループ経営理念「いつも、人から。」へと紐づいており、ESG経営とはいかにあるべきかを考えるときのよりどころになるものであります。新型コロナウイルス禍において百貨店の存在意義が今一度問われる中、次の200年に向けて、「すべての人々が21世紀の豊かさを実現できる社会の実現」に貢献できるよう社会課題の解決に取り組み、グループのさらなる成長をめざすとともに、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

株)東武百貨店 代表取締役CEO兼社長 國津則彦

変化するお客様のニーズにお応えし、将来まで近隣の三世代の皆様にご来店頂ける「マイストア」を目指す

東武百貨店 國津 社長
東武百貨店 國津 社長

 新年のご挨拶を申し上げます。2021年はコロナウイルス感染拡大と共に幕を開け、特に上半期は国民が大変不安な思いで過ごすこととなりました。しかしワクチン接種が進み東京オリンピック・パラリンピック開催が現実となると、社会のムードは前向きに変化し始めたと感じます。10月の非常事態宣言解除後は人々の行動も通常に戻りつつありますが、経済情勢は今後も予断を許さない状況であり、百貨店を取り巻く環境の厳しさは増しています。

 昨年の緊急事態宣言下で「生活必需品とは何か」という社会的な議論が起こりました。東武百貨店は経営方針で「地域沿線顧客のマイストア」として貢献することを目指しています。今回の議論は当社にとって原点に立ち返り役割を見つめ直す大きな契機となり、真の「マイストア」がどうあるべきかを考え実行に移す1年となりました。

 「地域のお客様の日常に本当に必要な品揃え」を実現するため池袋本店・船橋店の両店で、これまでなかった『くらし』や『じぶん』に焦点を当てた売り場の構築や専門店の導入に力を入れました。テレワークの普及などライフスタイルの変化による「イエナカ需要」を追求し、家具や家電、アウトドアや趣味など、ファミリー層・男性にも楽しんでいただける品揃えの幅が広がりました。この結果、当社の強みは「食・物産」に加え「暮らしのカテゴリー」の充実へと進んだと思います。催事も「大北海道展」をはじめとする人気物産展と共に、次世代のご来場の多い「IKEBUKUROパン祭」や富裕層に向けた「ワールドウォッチフェア」やアート、家具の催事に力を入れ成果を上げております。

 またリアルなお買い物体験の質の向上はもちろんですが、度重なる営業時間短縮や臨時休業を経験し、店頭以外の強化策として昨年外販事業部の中にEC・通販部を新設しました。テレビショッピングなどにもチャレンジしお買い物チャネルの拡充に取り組んでいます。

 当社は東武グループのサスティナビリティ経営方針のもと、環境問題はもちろん、ダイバーシティ推進や地域貢献に取り組んでいます。地域と共に持続的に発展する企業価値の向上を目指します。船橋店では千葉県のスポーツクラブとのコラボや地元産品の販売会などを活発に行っていますし、池袋本店でも東武グループと農林水産省とが連携する都市農業イベントや販売会に参画しており、地域沿線との結びつきを強めています。また東武グループ共通ポイント「トブポ」も地域利用者のお客様の利便性がより向上しています。

 2022年、東武百貨店は池袋本店が開店60周年、船橋店が45周年を迎えます。人々のライフスタイルが刻々と変わる節目の今、多くのお客様にご協力頂いてアンケートを実施し全社員で課題を共有し議論しています。また売り場社員だけでなく管理部門の社員も積極的に現場に出てお客様とお話しするようになって来ています。

 池袋西口再開発については業界内外の皆様と同様に従業員も大いに注目していますが、2022年度末の都市計画決定に向けて再開発準備組合で協議が進んでいると聞いています。

 変化するお客様のニーズにお応えし、将来まで近隣の三世代の皆様にご来店頂ける新時代の「マイストア」となることを目指し、これからは当社にとって準備と変革の時期だと考えています。

 本年も、皆様方の益々のご支援ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

株)京王百貨店 代表取締役社長 駒田一郎

コロナ禍で来店機会が減るなか、外商事業、サテライト、EC事業においては、さらなるシームレスな顧客接点を図り、事業規模の拡大を図る

京王百貨店 駒田 社長
京王百貨店 駒田 社長

 あけましておめでとうございます。

 昨年は、年初より緊急事態宣言発令やまん延防止等重点措置による営業自粛や時間短縮を余儀なくされたほか、″デパ地下″での感染拡大リスクが名指しされるなど百貨店業界にとりまして大変厳しい商環境となりました。また、10月以降になってようやく日常を取り戻すこととなりましたが、訪日外国人客の消滅や消費行動の変化など、先行き不透明な状況が依然として続いております。

 そのような中、当社はウィズコロナの新たな生活様式や価値観の変化に対応し、店頭においてアプリを使ったデジタル会員証の導入や非接触決済手段を追加、また、イエナカ消費で注目される趣味カテゴリーの拡充をはかるとともに、成長するEC事業の強化、サテライト店舗の新規出店など販売チャネルの多角化と顧客接点の拡大に取り組んでまいりました。一方で、コスト構造の見直しによる、利益指向経営を目指してまいりました。

 迎えた2022年は、当社にとって新たな中期経営計画のスタートの年度となります。以前より課題として認識していた百貨店を取り巻くマーケットの環境は、コロナ禍での新たな消費行動で加速度的に変化を遂げました。当社としても今後の事業の方向性を見極める最も重要な3ヵ年と考え、中期最終年度に収益の最大化を目指して大胆な構造改革を進めてまいります。

 新宿店では、新客獲得・客層拡大に向けた大規模改装とMD強化をはかるとともにさらなるローコストオペレーションを実現する店舗構造改革を進めてまいります。聖蹟桜ヶ丘店では、周辺地域の開発を契機に百貨店の強みを活かした商品カテゴリーの拡充や来店動機付けのためのイベント実施など、郊外型モデルの確立を目指します。また、コロナ禍で来店機会が減るなか、外商事業、サテライト・EC事業においては、さらなるシームレスな顧客接点を図り、事業規模の拡大を目指してまいります。

 これらの展開により、お客様、お取引先様、従業員とともに新しい時代を築いてまいる所存です。

 最後になりましたが、皆様のご健勝とご多幸を心から祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

株)大丸松坂屋百貨店 代表取締役社長 澤田太郎

「人」の力を最大限に活用しながら、店舗とオンラインでお客様に「あたらしい幸せ」を提案する

大丸松坂屋百貨店  澤田 社長
大丸松坂屋百貨店 澤田 社長

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。

 ウィズコロナ2年目となった昨年は、コロナ禍によって一足飛びに到来した「未来」を前に、いかに成長の道を切り開くかを模索した一年でした。そして次の時代に向けていくつかの布石を打つことができたと感じております。

 今、私共にとっての生命線は、営業時間という時間の制約、店舗という場所の制約を克服することです。そのため、タッチポイントのオンライン化と当社流のオンラインビジネス創出に取り組み始めました。特に百貨店の得意領域である化粧品・アートにおいて、OMO(オンラインとオフライン)を加速しています。

 デパートコスメの情報サイト「デパコ」は、自社に編集部を設け、メディアとしての魅力を高めました。本年はEC機能、オンライン接客の予約機能などを順次搭載し、店頭でもオンラインでも、情報収集・カウン セリング・購入といったお買物体験をシームレスにご提供してまいります。

 マーケットが急拡大している現代アートに対しても、オンラインでの作品紹介や接客、抽選販売などのPOC(概念実証)を行い、これまでリーチできていなかったお客様にもご購入いただくなど、好結果を出すことができました。本年は新しいアートOMOの仕組みをローンチいたします。

 また、新たなオンラインビジネスとしては、ファッションサブスクリプションの「アナザーアドレス」を立ち上げました。大変好評をいただいており、このサブスクを通じてブランドのファンになり、店舗で商品を買っていただくことも期待しております。

 一方で、店舗の魅力化も大きな課題です。昨春に大丸須磨店に名谷図書館を誘致しましたが、これまで来店されたことのないお客様が訪れ、店内の景色が一変しています。今春全館リニューアルを実施する松坂屋静岡店にも、都市型アクアリウムやビューテイー&ウェルネスのフロアを導入します。百貨店の枠を超えたコンテンツを展開し、地域の活性化に貢献してまいります。

 大丸東京店ではD2Cブランドのショールーミングスペース「明日見世」をオープンし、「売らない店」として関心を寄せていただいております。当社社員のアンバサダーがブランドのもつ世界観やストーリーを丁寧にお伝えし、ブランドにはお客様の反応をフィードバックするというビジネスモデルで、「人」を介してブランドとお客様をつなぐ新たなトライアルに手応えを得ております。

 私共が創業以来提供してきた本質的な価値、それは「人」だと思います。これからは「人」が提供してきた価値を、デジタルの力でさらに顕在化・拡張させることに注力いたします。「人」の力を最大限に活用しながら、店舗とオンラインでお客様に「あたらしい幸せ」を提案してまいります。

 今や、社会との共存なくして企業の発展はありません。本年も地球や環境への負荷が少ない商品・サービスを提案する活動「Think GREEN」と、地域との共生を目指した活動「Think LOCAL」を中心に、成果の見えるサステナビリティ経営を推進いたします。最重要マテリアリティと位置づけている「脱炭素社会の実現」については、お取引先様とScope3削減に向けた対話を重ね、協働の道筋を追求してまいります。コロナ禍にあってもサステナビリティ経営の手を緩めることなく、社会課題に向けてたゆまぬ努力を重ねてまいる所存です。

 何卒、本年も変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

株)小田急百貨店 代表取締役社長 樋本達夫

新宿西口再開発期間中を新たなビジネスモデルへの転換期と位置付け、将来を見据えた「未来型商業モデル」の構築を目指す

小田急百貨店 樋本 社長
小田急百貨店 樋本 社長

 昨年は、度重なる緊急事態宣言の発出に伴い営業活動の一部抑制を余儀なくされるなど、新型コロナウイルス感染症は、引き続き業界全体に大きな影響を及ぼしました。ワクチン接種の浸透により経済は緩やかな回復傾向にあるものの、厳しい状況は続いています。

 本年は、小田急電鉄が東京地下鉄などと共同して推進する国家戦略特別区域の都市再生プロジェクトである新宿駅西口地区開発計画がいよいよスタートします。そのスタートに伴い、新宿店は本年9月末をもって本館での営業を終了し、10月以降、強化カテゴリーである食品、化粧品、ラグジュアリーブランドを中心に、新宿西口ハルクにて営業を継続いたします。

 こうした事業環境の中、顧客ニーズの変化を捉えた収益獲得施策の推進やコスト効率の改善など収益構造の変革や、「未来型商業モデル」の検討を全社一丸となって推進すべく、昨年、デジタル戦略推進部を新設し、新たなビジネスモデル構築の検討を進めてまいりました。

 ECにおいては、展開商品の拡充に加え外部モールへの積極的な出店により、販路拡大と新規顧客の獲得に寄与しているほか、リモートショッピングの活用促進を図ることで、売上高や会員数の拡大など、着実に成果をあげています。

 また、インバウンド需要の回復が見込めない中、中国在住者をターゲットとしたライブコマースを実施したほか、オリジナル米菓ブランドの卸事業のさらなる拡大といった既存店舗事業以外の収益源開拓にも、いっそう強化して取り組んでいきます。

 さらに、新宿西口再開発のスタートを迎える本年は、顧客との関係性を堅持し、絆をより強固にするための重要な年度と捉えています。そこで、顧客データの活用によるデジタルマーケティングを推進し、顧客接点の拡充に努めるとともに、お得意様外商と連動した新規事業などについても確実に進め、店頭以外の商品の販売など新たな営業スタイルに進化させてまいります。

 いつの時代においても「″集客″により街の魅力を高め、賑わいの核となる商業施設」を提供できる企業となることが「当社が実現すべき存在価値」であり、その存在価値を明確に示すべく改革を推進してきました。再開発工事期間中は、当社にとってまさに挑戦の期間です。この機会を新たなビジネスモデルへの転換期と位置付け、当社の強みを活かしながらリアル店舗の価値向上を図るとともに、時代の潮流を捉えた創出すべき提供価値を検討し、将来を見据えた「未来型商業モデル」の構築を目指してまいります。

株)松屋 代表取締役社長執行役員 秋田正紀

『見えない未来』を信じてチャレンジし、「アフターコロナ」に立ち向かう

松屋 秋田 社長
松屋 秋田 社長

 新型コロナウイルス感染症が猛威を振るう中、昨年も営業時間の短縮や一部の売場では臨時休業を余儀なくされましたが、関係者の皆様の多大なるご尽力のおかげで、無事に新しい年を迎える事ができました。

 新型コロナウイルス感染症の影響により、当社グループを取り巻く経営環境は依然として厳しい状況にありますが、長期間にわたるコロナ禍において、人とリアルに接することの価値観、そして、絆づくりの大切さを強く認識いたしました。このコロナ禍における最大の「学び」を糧に、松屋ならではの独自性をさらに磨き上げていくことが、いま私たちに求められています。

 その独自性の実現にとって必要なことは二つあります。まず一つ目は、『デザインの松屋』として常に「気遣い」を心掛け、取り組むことです。「アフターコロナ」では、お客様の価値観、行動様式が大きく変化し、その変化に対し一人ひとりがどう対応していくかが、私たちに求められています。常に、「気遣い」を心掛け、お互いに敬意と尊重の気持ちを込めて、日々の業務に取り組んでまいります。

 二つ目は、松屋グループを個性溢れるブランドに磨き上げることです。当社グループは、いつの時代においても常に「チャレンジ精神」と「創意工夫」に力を注ぎ、直面している様々な変化や困難に対してはチャンスと捉えて取り組んでまいりました。引き続き一人ひとりが仕事に対して主体性を持ってベストを尽くすことが、今後の松屋ブランドの価値向上を目指す大きな推進力となります。

 3月からスタートする新中期経営計画は、新たな収益の源泉を創造し、コロナ禍により傷ついてしまった状況を回復させ、確固たる成長シナリオを描いていく予定です。今後の外部環境は徐々に好転していくと思わ れますが、新中期経営計画ではそれに頼ることなく、「チャレンジ精神」と「創意工夫」の精神の下、強い意志を持ち、独自に再成長を図っていきます。

 常に「気遣い」を心掛けつつ、全員が一丸となって「攻め」の姿勢で、松屋グループを独自性の強い個性溢れるブランドに磨き上げてまいります。

 昨年はエンゼルスの大谷翔平選手の大活躍が話題になりましたが、彼が北海道日本ハムファイターズに入団当時、世間は二刀流に対して否定的だったのを、栗山監督(当時)は「人間は、なぜ前例がないものを否定するのだ?」、「なぜ見えない未来を信じようとしないのだ?」と疑問に思い、周囲からの批判には屈せず、二刀流を認めて育成に当たったそうです。

 今は、まさにこの「見えない未来を信じる力」が必要です。これからの「アフターコロナ」においては、未知の世界が待っています。私たちも、勇気を持って前例のないことにチャレンジしたいと考えています。

 最後に、本年が皆様にとって、健康で実りの多い一年となりますことを心から祈念いたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。

株)東急百貨店 取締役社長執行役員 大石次則

新たな価値の提供を目指す店舗戦略や店舗・各事業をデジタルでつなぎ、顧客の利便性を向上させて「融合型リテラー」さらなる進化を目指す

株)東急百貨店 大石社長
株)東急百貨店 大石社長

 2021年は前年に引き続きコロナ禍に大きな影響を受けた一年となりました。生活必需品以外の売り場の営業自粛や地下食品フロアへの入場制限要請など厳しい状況を乗り越えてきました。10月の緊急事態宣言明けからは来店客数も戻り始めていますが、変異株の影響もあり事業環境は予断を許さない状況が続いております。変化への対応がより一層強く求められています。

 当社は昨年「事業構造の転換」「新たな価値の提供」を骨子とする新中期三か年経営計画を策定し、「いつでも、どこでも。ひとりひとり上質な暮らしのパートナー」をビジョンに掲げました。変化に対応し、新たな価値の提供を目指す店舗戦略や店舗・各事業をデジタルでつなぎシームレス、タイムレスに顧客の利便性を向上させる顧客戦略などを重点施策として取り組み、当社独自のビジネスモデル「融合型リテーラー」のさらなる進化を目指しております。

 初年度の2021年は、百貨店では初となるBOPISとデリバリーを一つにした自社アプリの運用スタート、化粧品のBOPIS拡大、コンシェルジュによるリモート接客サービス開始などデジタル技術の活用による利便性向上、楽天ポイント受け入れによる顧客層の拡大、池上 東急フードショースライスのオープン及び渋谷 東急フードショーのグランドオープンなど、それぞれの戦略において取り組みを着実に実行してまいりました。

 本年はさらに中期経営計画を推進し、形にする一年となります。変化するお客様のニーズや生活スタイル、社会環境や地域の特性に合わせ、吉祥寺店とたまプラーザ店の改装を予定しております。また、自社アプリやネットショッピングにおけるSKUの拡充や利便性の向上、デジタル接点の拡大による「いつでも、どこでも」のさらなる具現化を目指します。楽天ポイント受け入れにより顧客層が拡大していますので、従来のTOKYU CARD Club Qカード顧客はもちろん、新規顧客向けにデータ分析に基づいたMD並びにサービスの提案も検討しております。2023年1月の本店の営業終了に向けては、ご愛顧に対する感謝をこめた様々な施策を準備するとともに、大切なお客様に引き続き当社をご利用いただけるよう、デジタルによるアプローチや新たな営業スタイルの構築、各店・各事業との連携によりリテンションを図ります。

 「いつでも、どこでも」この言葉どおり、私たちはあらゆる場面で顧客接点を拡大し、本年もお客さまの豊かで上質な暮らしづくりに貢献できるよう努めてまいります。

年頭所感 デパート新聞 編集長

 2020年3月に「デパートのルネッサンス」をテーマに掲げてスタートした本コラム。
なんだかんだで、とうとう1年と10ヶ月が経過した。前年の年頭所感にも記したが、2020年は「コロナの年」であった。敢えて言うが、2020年から2021年に順延された東京五輪は、当事者以外の人にとっては、もはや添え物でしかない。コロナ禍でいろいろな人びとが苦悩、懊悩し、人生が変わってしまった人もいた。

 では2021年は、と問われれば「上手く運べば『コロナ終息の年』と記憶されるかもしれない年」であろうか? もちろん、それは誰にも判らない。今もまだ「オミクロン株」という新たな脅威にさらされて、「第六波」に怯える日々と言ったら、大げさだろうか。

 いくら忘れっぽい日本人でも、昨年の年末から年始にかけての感染者急増(第4波)は記憶に残っているはずなのだが。

 ここで1年前の2021年1月15日号の本欄を引用する。

非常事態宣言再び

 首都圏の百貨店は、政府による緊急事態宣言の発出を受け、営業時間の短縮を相次ぎ発表した。東京都では新型コロナウイルスの新規感染者数が1/7に2447人、翌1/8が2392人、1/9も2263人となり、3日連続での2千人超えとなり、過去最多を記録した。

 政府による緊急事態宣言の発令決定を受け、百貨店各社も7日、首都圏1都3県(東京、埼玉、神奈川、千葉)の飲食フロアを含め、全館の営業時間短縮などの措置を、相次いで発表した。

 大変な一年が終わり、新年を迎えたにもかかわらず、コロナの終息が見通せない当時の状況。その暗澹とした気持ちが蘇る。そしてコラムの最後はこう締めくくっている。

 本紙の本分は百貨店のいくすえを見守り、応援することであるが、このコロナ禍は、コロナ抜きの記事やコラムを許してはくれない。コロナ抜きでは、百貨店を語ることが出来ないのだ。今言えるのは、半年後、いや1年後は、コロナのコの字も文章にしたくない。それだけだ。

 デルタ株の出現により、「半年後」は叶わなかったが、「1年後」の今回はもしかして、明るい兆しが見えて来ているのかもしれない。※もちろんこの後、オミクロン株の市中感染が進めば、話はふりだしに戻るが・・・

 ここは、コロナ禍で早や3人目となった、日本の新たな指導者に期待するしかない。

 コロナウイルスの突然変異の出現以上に予測不可能なのが、世界情勢である。北京での冬季五輪ボイコットに象徴される「米中対立」以外にも、気候変動を踏まえたカーボンニュートラルや、コロナ以上に私達の生活様式の変革を迫るSDGs等々。皆「デパートのルネッサンス」に向け、越えなければならない高いハードルだ。

 丁度一年前の本欄で、筆者はこう綴っている。『デパートのルネッサンス』というテーマは、終わりの見えないコロナ禍であっても、継続して追い求める「価値」のあるミッションであると、今だからこそ、強く思う。

 この気持ちは一年たった今も変わっていない。

 筆者は引き続き、百貨店関係者や顧客と目線を合わせ、時にはその代弁者となり、筆を進めて行く所存である。

 この場を借りて、購読していただいた皆様に改めて御礼申し上げたい。
そして、わずかではあるが、前年よりも「希望」を持って臨む新年を寿ぎ、ご挨拶に替えさせていただきたい。

11月東京は10.0%増

 日本百貨店協会は、令和3年11月東京地区百貨店(調査対象12社、24店)の売上高概況を発表した。売上高総額は1285億円余で、前年同月比10・0%増(店舗数調整後/3か月連続プラス)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭8・3%増(90・2%)、非店頭28・1%増(9・8%)となった。
※()内は 店頭・非店頭の構成比

百貨店データ

  • 3社商況11月
  • 11月店別売上前年比(%)
  • 都内各店令和3年11月商品別売上高
  • 関東各店令和3年11月商品別売上高

地方百貨店の時代 その30 – 屋上遊園地

デパート新聞社 社主
田中 潤

無駄なものを置かないデパート

 デパートは、百貨店という名のとおり「扱えないものはない」ということを目指す時代もあったが、今はモノが無数にあるため、なんでも揃えるということは至難になっている。それどころか、「それ以上に売れないものは置かない」、一歩進んで「売れるものでも極力在庫にしない」というデパートが増えてきている。一昔前まで当り前にあった屋上遊園地、おもちゃ売り場、楽器売場、ペット売場などのないデパートがほとんどといっていい状況である。

 デパートにとって屋上遊園地は、家族で来店してもらうための切り札のような存在であった。親のつまらない買い物につきあった子供たちが、ようやく自分たちの時間を与えられ、階段を駆け上がって屋上に出た時の目の輝きはその日一番のものであった。(屋上まではエレベーターが付いていないデパートも少なくなかった。)

 ひとしきり街を一望し、より高い観覧車に乗車する。10メートル程度の高さが考えられないほどの高揚感を生んでくれる。ミニ電車やゴーカートなども、ビルの上で楽しむという特別感が他の遊園地とは異なる魅力を醸し出す。フロアの隅に設けられたパチンコ台も、1度は弾じかないわけにはいかない。この30分から1時間くらいの時間は、子供の記憶にとってかけがいのない喜びの感覚を育んだだろう。

 なぜ、屋上遊園地がなくなったかといえば、「儲からないから」という対極の貧しい答えが返ってくることだろう。つまり、経済的合理性がすべてなのである。少子化が進んだとか、家族で来なくなったとか、他に遊ぶモノが出来たとか、消防法が厳しいとか、状況証拠はいくらでもあがるだろうが、儲かれば続けることに否はなかったはずである。

 では、屋上遊園地が顧客に夢を与える場所としてもはや成立しないのかどうかの検証はされたのであろうか。それこそが、公益の立場で事業を担うデパートの重要な使命なのではないだろうか。少なくとも、アマゾ ンの急速な台頭が示すとおり、顧客に提供する品揃えは、もはや実店舗では太刀打ちしようがない。

屋上の活用

 インターネットでは絶対に戦えないサービスこそ、デパートが生き残る為に必要な選択肢なのである。定常型社会を迎えた今、屋上遊園地は新たな戦略として見直すべき点といえよう。地域コミュニティ-の拠点として十分に機能する要素があるからだ。地方百貨店には、改めて屋上の活用について考えてほしい。

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 今年は、大河ドラマで鎌倉時代草創期が舞台になる。
源頼朝の後継者たる北条義時が140年続く鎌倉幕府を確立するために、多くの政敵を滅ぼしていく姿が描かれるのだろうか。

 鎌倉時代の真実は、歴史の闇に隠れていることも数多い。そこに、新解釈で切り込んだ「修羅の都」「夜叉の都」の2作は、北条政子がなした恐るべき新事実をテーマとしている。その作者の伊東潤氏がいよいよ本紙1月15日号から「英雄たちの経営力」を執筆する。

 歴史上の人物を経済・経営の観点から評価していく試みだ。歴史作家の描く個性豊かな登場人物の経済へのアプローチは本紙読者にも多くの示唆を与えてくれるだろう。

連載:デパートのルネッサンはどこにある

 本コラム「デパートのルネッサンスはどこにある?」は、今号で丁度連載40回目を数える。

 この節目に(節目は50とか100回では、というご意見はあると思うが)僭越ながら以下提言したい。「百貨店復活のカギ、それは変わり続けるコト、すなわち『過去を否定し続ける』ことにある」と。

 大事なコトなので、もう一度言う。デパートのルネッサンス(再生・復活)は、百貨店(業界)が過去を否定し、新しいビジネスモデルを創造できるのか、にかかっているのだ。2022年、我々いよいよその号砲を鳴 らす時を迎えた。

続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2022年1月1日号-40 を御覧ください。

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