㈱高崎髙島屋 – 明日を目指す百貨店探訪 第1回

来年は開店45 周年の年

 地域密着産業である百貨店。特に、地方百貨店は地方経済のバロメーターでもあるのではないだろうか。地域一番店である地方百貨店を全国津々浦々に訪ねてその様々な実情を発信するシリーズ。

第一回【株式会社 高崎髙島屋】 トップに聴く

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桜庭社長( 高崎髙島屋で)

㈱高崎髙島屋 桜庭 周清社長
昭和41 年4 月生
明治大学経営学部卒
1989 年4 月 ㈱髙島屋入社
2010 年2 月 同社横浜店販売第2 部長
2019 年3 月 A&S 髙島屋デューティーフリー㈱取締役MD 本部長
2021 年3 月 ㈱高崎髙島屋 代表取締役社長( 店長)就任

 「先ず、現状をお聞かせください」

( 桜庭社長)
創業以来、地域に密着し地域のお客様から支持される事、同業である「高崎スズラン」に追いつけ追い越せを目標にしてきた。16年前にそれを達成できたのは、ご支持を頂いてきたお客様のお陰と感謝申し上げる。特にコスメ、特選衣料雑貨、リビング、食料品は支持が高く、順調に売上を伸ばしている。今後も支持してくださるお客様を増やしたい。一方、婦人服、紳士服は低迷している。今後は何とかして活性化させたい。例えば、堅調な量販店に目を向けると、これまでは当店の商品と価格軸が異なるとの理由に囚われて、その戦略を見過ごしてきているのではないだろうか。品揃えや価格、展開方法など見習うべき面は多くある。改善に向けた待ったなしの行動が必要だ。

 2020年度通期は9年ぶりの減収、2年ぶりの減益となった。上期はコロナ禍の影響を大きく受け、売上を大きく落とした。下期は9~12月はコロナ禍の反動もあり、順調に推移したが、社会不安が深刻化した1~2月には入店客が落ち込み苦戦した。その様な状況の中、地域のお客様に支えて頂いている事に深く感謝している。また、このコロナ禍の影響で、都心に流れていた富裕層が高崎にとどまってお買い物をして頂いていることも大きな支えになっている。

「商圏と顧客層について」

( 桜庭社長)
商圏は、高崎市を中心とした群馬県と埼玉県北部の一部エリアだ。地元のお客様に継続的に支持を頂いている。高崎市の人口は微減にととどまっており、商いの環境は整っている。当店の客層は若い。高崎市の人口動態に沿うように20~30歳代の女性客が多く、60~70歳代も多い。顧客層が二軸となっている。間口が広い顧客層だ。これは理想的な顧客層であり、強みとして活かしていきたい。イメージとしては、20~ 30歳代女性客がコスメ売り場から入る。そしてこの1階の受け皿から地階や上層階へどう繋げていくかである。この二軸から発展して三世代家族の来場も期待できる。

「外商の現状と今後の対策について」

( 桜庭社長)
外商は全体の売上の20%を占めており、地方百貨店・中規模店として、この売上規模は一定の支えになっている。年間を通して、特選ブランドや宝飾品への需要は強く、外商扱いは前年度を若干上回った。(前年比0・3%増)。外商顧客を対象に、要望が高かったインポートブランド等、ラグジュアリーブランド販売会を実施。当店の外商顧客のニーズと合致したことから好調な結果となった。

 外商は直接お客様の声を聴いて商売ができる。ONE―TO―ONEのやり取りができる。今後、更に強化をしていく。具体的には、新規口座開拓担当を配置して、前橋・伊勢崎エリアを集中的に開拓する。

駅前での競合と協業

「今期の経営計画及び営業政策の重点課題について」

( 桜庭社長)
今期は、利益予算の必達に向け、感染防止対策を徹底しながら品揃えの強化や催事・イベントの強化に取り組んでいる。上期では、「宝塚歌劇展」、「グルメのための味百選」を開催した。下期は、上期の推移を踏まえ、物産催なども強化していく。また、地域密着戦略として、街づくり計画に協力している。高崎駅の周辺開発と連動した店舗の改装に関しては一区切りがついた。今後は地元と連携した取り組みを一層すすめていく。具体的には、高崎駅前に立地するOPA(都心型SC)、モントレー( 駅ビル) と髙島屋の3店合同企画の推進だ。この3店に駅前のヤマダ電機、スズランを含めていかに集客を高崎駅前に呼び込むかのための連携をしていく。この地域全体が元気にならないと地域の繁栄は無い。駅前地域における「競合と協業」が当店の目指すところだ。

 また、高崎市、商工会議所、観光協会等行政との協力を進めている。これまでには、高崎市子育て商品券事業への参加( 第1期:20年8月~21年7月・第2期: 21 年6月~22年3月)、愛郷ぐんま協力事業への参加( 4月)、群馬の美食フェア( 6月・地元の人気店のスイーツや総菜) や、高崎農家応援企画「タカサキマルシェ」( 6月)を開催した。

「高崎高島屋の特色を教えてください。」

 都心の百貨店においても、地方百貨店においても、百貨店としてあるべき姿は、お客様の声を起点にMDを集積しサービスを充実させる事に尽きる。
地方百貨店はMDにおいて、都心のそれには叶わない。当店になぜ来客されるのかを考えると、ひとつには、ラグジュアリーやコスメ等の都心型MDを求められるからだ。もう一つは、都心の高島屋では購入できない ものを求められる。つまり、地場でしか買えないものだ。当店としてはそこを突き詰めていきたい。高崎でこだわりがあって、地域に根差し、地元のお客様に支持をされる商品の開拓を、地元の方と連携してすすめていく。
その一例として、2020年3月に4階紳士服フロアにオープンした「メゾン・ド・エフ」は、高崎店のみにある売り場である。販売する商品はファクトリーブランドの商品をセレクト、更に独自に工場と協業した企画商品も販売。イベントでは、桐生の染色工場と企画したTシャツが好評である。

 また、毎年1月に恒例開催している物産展「群馬展」は、群馬県内の食料品や工芸品の店を当店が発掘し出店して頂いている。ルーキーから老舗、名店まで厳選し、地元のお客様への発信の場になっている。(今年は食料品51店、工芸品22店の出店)

来年は開店45周年の年

( 桜庭社長)
来年2022年10月に45周年を迎える。現在、それに向けて前向きな取り組みを準備中である。この45周年を契機に、一旦コロナ禍で立ち止まった流れをリッセトし、課題を洗い直し、営業、外商し かり、情報発信の充実化を図り地域のお客様から継続的に店をご利用頂くための準備をしっかりと進めていきたい

4階 「メゾン・ド・エフ」売り場

《ショップ概要》

■売場面積:約 80 ㎡
■ターゲット:年齢に問わず、物にこだわる男性・女性
■取り扱いアイテム:ネクタイ、肌着、革小物、鞄、カジュアルウェアなど
■価格帯:ネクタイ 8,800 円、カジュアルシャツ 15,400 円から、財布 15,400 円から
     スニーカー16,280 円、T シャツ 8,250 円から
■取り扱い点数:約100 点

高崎髙島屋

【店舗データ】

  1. 店舗名 高崎髙島屋
  2. 所在地 群馬県高崎市旭町45 番地(JR 高崎駅西口徒歩5 分)
  3. 開店 昭和52 年10 月1 日
  4. 売場面積 19,885㎡ フロア:地下1階~6階、屋上
  5. 売上高(2021 年2 月期) 139 億円(前年比13.1%減)
    ※ 2022 年2月期予想は未定

【沿革】

  • 昭和52 年10 月1日 開店
  • 昭和58 年3 月1 日 高崎髙島屋・立川髙島屋・大宮柏髙島屋が合併し、㈱関東髙島屋設立
  • 平成2 年9 月1 日  ㈱髙島屋と㈱関東髙島屋が合併
  • 平成16 年4 月1 日 ㈱髙島屋から分社し、㈱高崎髙島屋となる
    ※競合店舗 高崎スズランの売上を抜いて地域一番店となる(平成17 年)

【2020 年度のコロナ禍における営業施策の流れ】

  • 緊急事態宣言にともなう臨時休業期間(4/18 ~ 5/10)…食料品フロアのみ営業

<集客対策の感染抑制対策の一例>

  • 「ギフトセンター」…会場内通路2m 以上、待合スペース客席1m 以上の間隔。
    承り台にアクリル板を設置し、お客様と販売員を仕切る。
  • 「北海道展」…会場をクローズし、入口と出口を設置。入口では検温を実施。