デパート新聞 第2664号 – 令和3年5月15日

3月全国は21.8%増

 日本百貨店協会は、令和3年3月の全国百貨店(調査対象73社、192店〈令和3年2月対比マイナス4店〉)の売上高概況を発表した。売上高総額は4076億円余で、前年同月比21.8%増(店舗数調整後/18か月ぶりプラス)だった。

百貨店データ

  • SC販売統計3月
  • 都市規模別・地域別売上高伸長率
  • 神奈川各店令和3年3月商品別売上高

教えて!デパートの今 第2回

【質問者】 デパートに復職を考える元デパート社員43歳女性
【回答者】 デパート新聞情報室

質問

「デパートは沢山の社員や取引先の派遣社員も多いので、社員食堂や福利厚生施設は充実していたと思いますが、今はどうなっていますか。」

回答

働く人が大幅に減ったことで規模が小さくなったり、質も低下している所があります。長い間売上がずっと低迷していることが大きな要因でしょう。

 デパートに限らず、駅ビルやショッピングモールなども含めて福利厚生が組織の方針ごとにかなり違うようです。一言で言えば、従業員のためにどのくらい気を遣っているかどうかという点で、経営者の考えが異なるということです。
 食事が美味しい、休憩室が清潔である、といったプラスの所と従業員施設は薄暗く老朽化している、入店ルールが非常識と言っていいほど厳しいといったマイナスの所がはっきりと色分けされてきているようです。
 テナントの社員によっては、Aのデパートは行ってもいいが、Bのデパートは行きたくない、といった最終的な職場の選択にまで発展する場合もあります。あるデパートは空きの出た客用のレストランスペースを、従業員も入店客も利用出来るレストランとしてオープンさせることを進めています。
 売上優先主義から従業員を大切にする思いやり資本主義へとデパートも変わっていかなければならない時にきています。

地方百貨店の時代 その16 – 顧客サービス部門の充実

デパート新聞社 社主
田中 潤

 デパートにおける接客の花形といえば、顧客サービス員即ちエレベーターガールであった。社内では、ズバリ「コキャク」と呼ばれ、その名のとおり来店客とのコミュニケーションが仕事であった。エレベーターの運行の他、フロントでの店内ご案内、荷物預り、外商顧客の受け賜わり、お茶出し、更には店内放送まで、様々なところで常に顧客と係わる仕事を請負った。メンバーは、ほとんどが女性であり、従業員である点では他部門の社員と変わりはないのだが、当人たちも「自分たちの顧客サービスは別格」と自負している人も多く、社内での交流も少ない独立的存在というイメージが強かった。

 今でも、もちろんそうした部門の多くは存在するが、エレベーターはほとんど無人化するなど、これらの部門は徹底的に合理化されてしまったという感が強い。受付コーナーで時間を持て余した顧客が長時間居据わったり、気に入ったご案内係がいるとエレベーターに乗り続けるなどといった少々困ったことも皆無となった。つまり、デパート内に流れる無駄時間は、大きく減退していったのである。

 しかし、自動運転のエレベーターによる弊害は決して少なくない。数台のエレベーターが同じ動きをして、待つのに時間がかかる。操作を自分でするのが煩わしい。乗り降りの際、傍若無人の人も少なくなく、ストレスが生じるなど集約すれば居心地の悪い場が現出したのである。なによりサービス嬢の発するご案内の声だけで癒されたというようなことは起こり様がない。これだけ接客によるコミュニケーションが重要といわれているのに、なぜこうした洗練されたシステムが軽視されたのかが不明だが、やはり売上至上主義により収益に貢献しない部署は一言で言えば貨幣を生まない不採算部門との固定観念が働いたのかもしれない。

 人とのコミュニケーションを第一に考えるべき地方百貨店の取るべき方策は明確である。顧客サービス部門を再編し、過去の業務に加え、店外にも打って出るくらいの積極的活動を行なうことが必要である。むろん、この部門は自店のサービスに対する理念を徹底したプロバー社員、しかも女性を前面に出すことが必至である。

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 新年度になって配布される音楽の教科書を見た時、この後1年の間に歌う歌を確認したのは遠い思い出であるが、そこには必ず学年ごとに定位置のごとく選ばれている文部省唱歌がいくつもあった。

 ところが最近の若い人達に当然に誰でも知っていると思っていた、そうした唱歌を尋ねると、「そんな曲知らない」と答えられる機会が非常に多くなってきた。古い歌が学校現場からどんどん除外されているのである。

 世代に関係なく一緒に口ずさむことができる曲を残していく上で、学校教育の場は非常に重要であろう。役人が、安易に時代に合った斬新な歌を積極的に取り入れていこうと考える風潮は終わりにして欲しい。

 こんなところにも、将来を見据えることの出来ない国の方針の脆弱さがかい間見えてしまうのである。

無駄の物語 part12

犬懸坂祇園
作詞、作曲などをしております

 情報化社会が進む一方で、人と人とのコミュニケーションの不調は拡大している。新型コロナウイルスの蔓延で人々の出会いはますます難しくなってしまい、コミュニケーションツールとしてメールやラインの重要性が増していることは周知のとおりである。

 人と人とが直接会うことと比べれば、メールでは目・耳・口・鼻・表情・体の動きなど、相手の醸し出す様々なニュアンスを受け取れない。受け取れるのは、無機質な概念としての言葉だけである。声や息遣いの聞こえる電話と比べても大きな違いがあり、自筆の手紙との差も否めない。しかも、パソコン上の無機質な文字で送られてくるメールの相手が、本当にその本人かどうかも分からない。

 相手が自分の認識しているその人かどうか100%確信して交信しているわけではないという、伝達媒体としてはかなり特異なものであるといえよう。

 最近の人は、あまり本を読まないらしい。テレビを見ない人も増えているという。何かに集中するという習慣が少なくなっていることは、概ね間違いないだろう。それなのに、五感でしか伝えられないことをメールの中で全力で集中して伝えていくということが、どのくらい出来るのかと考えると、悲観的にならざるを得ない。

 そもそもメールは合理性を最優先したツールであり、短時間で自分の言いたいことを相手に伝えることを目指したものである。つまり、ある程度雑に伝えることが容認されているのである。これは、〇か×かといった結論を伝える点においては優れているが、自分の考えについて相手に理解を求めるような内容になると、たちまち相互に温度差が生じるリスクがある。相手と向き合ってコミュニケーションをとる、という心構えが出来ないままに相手の心に入っていくような場面が生まれてしまうからである。

 メールでのコミュニケーションは、基本的に減点法である。両者の間に10回良いやりとりがあっても、11回目にストレスを与えるメールがくれば、その相手とのコミュニケーションがその後不調になってしまうことは少なくない。起きてしまった行き違いを、顔を合わせて、つまり、お互いが向き合って目を見て解決するようなチャンスはないからである。メールを送信すること1つ取っても、自分の都合で好きな時に出来るという自由性があるが、これこそ諸刃の剣といえよう。会って話をしていれば、相手の様子を見ながら軌道修正もしていけるが、メールの場合は一方的に伝えまくるだけである。しかも、送信してしまった内容はもう消すことは出来ず、自分の意見として相手に主張し続けるのである。つまり、相手とコミュニケーションをするた めのものでありながら、相手のことを考えずに自分の思惑だけを一方的に進めることが出来るという矛盾したツールなのである。

 メールにおける弊害は、合理性のみを追求し無駄を排除したことで起きた1つの事例である。相手と向き合う時間の確保、心を込めて伝達をすることが出来るような自身の集中力、語学力の修練など、無駄と思うような時間の積み重ねの中でこそ一期一会の出会いが成立する。

 コミュニケーションには無駄が必要なのだということを、メールは反面教師として示してくれている。

連載:デパートのルネッサンはどこに有る? -コロナ禍の1年 百貨店の今

 我が百貨店( 小売) 業界も、この1年、飲食や観光業界ほどではないにしろ、コロナ禍により、大きな痛手を負っている。

 百貨店と商業施設の休業を伴う、3回目の緊急事態宣言は、当初5月11日まで、とされていたが、本紙が発行される5月15日を待たずに、5月末までの延長が決定した。

 念のため、ここで「おさらい」をしておこう。

続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年05月15日号 を御覧ください。

特別寄稿 NY視察2019から見る、百貨店のさらに恐ろしい未来

第4章 – ニューヨーク市内の話題店(その2)

株式会社クリック&モルタル
代表取締役 大和 正洋

 NY市内の店舗に続き、NY郊外の店舗とショッピングモールを見ていきたいと思います。

ガーデン・ステート・プラザ

ガーデン・ステート・プラザ

ニュージャージー州バーゲン郡パラマスにあるショッピングモールでウエストフィールド社が運営する、日本で言うところの、ららぽーとのような商業施設です。
ニューヨークから車で1時間程で到着します。

続きは 特別寄稿 NY視察2019から見る、百貨店のさらに恐ろしい未来 第5章の1 を御覧ください。

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昭和24年10月創刊
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