デパート新聞 第2663号 – 令和3年5月1日

3月東京は18.5%増

 日本百貨店協会は、令和3年3月東京地区百貨店(調査対象12社、24店)の売上高概況を発表した。売上高総額は1101億円余で、前年同月比18.5%増(店舗数調整後/18か月ぶり増)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭20.6%増(89.5%)、非店頭3.5%(10.5%)となった。

百貨店データ

  • 3社商況3月
  • 3月店別売上前年比
  • 都内各店令和3年3月商品別売上高
  • 関東各店令和3年3月商品別売上高

人事異動

  • ㈱近鉄百貨店
  • J.フロントリテイリング㈱
  • ㈱そごう・西武

教えて!デパートの今 第1回

(質問)「売場は、テナントや取引先に何を求めているのですか」

(回答)デパートの売場は、沢山あります。コロナ禍で大きな変革期を迎えていますが、すでに数年前から、婦人服売場ではメーカーが拠点を次々と減らしており、売場は空きスペースが増えています。売場担当者は新たなテナントを入れることに躍起になっていますが、中々良いテナントは集まりません。やっと決まりかけた テナントを店長や役員が「その業者はダメ」と差し止めることも少なくありません。既存のテナントとの関係を壊したくないなど、様々な気遣いが働いてしまう のです。

 しかし、婦人服の売上は「これ以上伸びない」と感じたバイヤーや売場管理者が、食品や雑貨など別のアイテムに思い切ってフロアを明け渡すのかというと、 そうした全店的視点での経営判断をすることはまず考えられず、空きスペースを持て余しているのが現状です。

 一方で、食品は逆に良いブランドでなければ、新たに入ることは簡単にはさせ ないという入店希望者過剰なデパートが多く、よりスパースを欲しい状況にあります。結局、思い切ったフロアの役割分担が出来れば、結果的に顧客のために なるのですが、うまく機能出来ていないデパートが多いようです。

地方百貨店の時代 その15 – トイレの充実

デパート新聞社 社主
田中 潤

  外出した時、用を足す場所を確保できるかどうかは、すべての人にとって重要な課題である。
駅を始めとする公衆トイレは、昭和の時代と比べてかなり清潔になったとはいえ、やはり女性たちにとってはストレスが強い。多くの人が最も安心し、かつ、気持ちよく利用できるのはデパートのトイレであるということは衆目の一致するところである。まず、始めに抑えておきたいことは、これだ。デパートには必ずトイレがあるということである。つまり、デパートにたどり着きさえすれば、どうにかなる、という大いなる寄港地としての役割がある。そして、その港は必ず清潔で広く、しかもどんなにきれいなトイレでも無料で利用できる。誰もが満足する要素を兼ね備えている。ところが、デパートの側ではこのことをもっとアピールしたり、活かしたりしようとしていないのではないだろうか。

 具体的に考えよう。まず、誰もがデパート内のトイレの在所がすぐに分かるよう表示を徹底し、また、その数も増やすことである。すぐ使わないにしても、どの場所にあるのか知っている。いつでもすぐにたどり着けるようにするための準備をするのである。

 次に、トイレを使った人に対して一定のマーケティングが出来る仕組みを作りたい。トイレに至る導線に売れ筋の商品を並べる、使用後に行きたくなるような掲示を徹底的にプレゼンテーションする等、まだ出来ていないことは沢山ある。トイレを利用した人にはスタンプカードを用意して数が貯まったら引換え商品を作ると言った発想も悪くない。頻繁には使って欲しくないという施設者側の論理を逆転させるということは即ち積極的に無駄なサービスを提供していくという発想である。要するに、トイレを中心にした顧客とのコミュニケーションの場を築くことが目的である。

 トイレ施設に対する地域格差をシンプルに考えると、地方のデパートは大都市デパートと比べ簡単に地域のトイレ一番店として他社との差別化を達成出来るはずである。何ごとも地域一番店という覚悟で取り組めば、トイレでの差別化は最もスムーズに達成できるはずである。

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 またまた緊急事態宣言が発令されている。イギリス、南アメリカ、そして、インドと世界各地のコロナウィルスの変異種が発見され、感染力の強さが強く懸念されている。

 島国の日本に、人を媒介とするコロナウィルスを何故ここまで運び込まれてきてしまったのかその原因が全く究明されていない。少なくとも、第一波の轍を踏み、変異種の侵入には、国として防壁をしっかりして欲しかった。

 台湾やニュージーランドのように鎖国を成就させていれば、今のような飲食店の窮状はなかっただろうし、連呼している「経済を回す」ことももう少し上手に出来ているはずである。

 マスコミは丸め込まれたのか、一向に政府の責任論が出てこない。政府から、対応が上手くいっていないことについて自省の弁は一切なく、「緊張感をもって、注視している」だけである。

 国民は、ただ置き去りにされるばかりの中、オリンピックは近づいている。

無駄の物語 part11

犬懸坂祇園
作詞、作曲などをしております

学校教育

 学校教育は社会的共通資本であるという考え方がある。学校は、先祖が残した無形遺産を出来るだけ吸収して次世代に残していく場であり、その目的は利益を得るという概念とは相容れない。

 福沢諭吉は、「人間は生れながらにして各々が素晴しい能力をもっているのだから、それを自由に育てるのが教育で、決して競争や試験をすべきでない」と言っている。利益を目的にしてはいけないのである。戦後日本で、いかに学力を高めて良い大学に合格し、更に大学で高い評価を得、高額の収入を得ることが出来る職業に就くか、という一本の道が作られたこととは、明らかに矛盾している。

 ソースティンヴェブレンという経済学者は「人間はモノづくりに対する本能的な熱意をもっていて、モノをつくる時に強制されたり、それによって儲けようと考えたりはしない」とし、本能的に知識を蓄積していくことが大学の基本的役割だといっている。

 つまり、本能的に知識を得ようと研鑽する活動は、儲けを得るという合理的活動とは全く異なるわけである。人間がモノをつくることは当然の活動であるという認識からかけ離れてしまった今の資本主義社会の在り様をみると至言といえよう。利益を得ることを目的とせず本能的に精力を傾けるという活動は、「無駄なこと」の定義である「益のないことをすること」とその立ち位置は近い。

 戦後、日本の教育は資本主義の洗礼を受け、学ぶために行くのではなく利益を得るために行く、と目的を変えさせられてしまったようである。今こそ収益活動を前提とする資本主義の思考から脱し、学校教育を社会的共通資本として見直す時である。

連載:デパートのルネッサンはどこに有る? – 特別編 『仏の顔も三度まで』

三度発せられた緊急事態宣言を問う

4 /15( 但し2020年)

 丁度1年前の本紙「デパート新聞」は2020年4月15日に初めての号外を発行している。
その号外の2面記事の冒頭を再掲する。

 新型コロナウイルスの感染拡大を受け、4月7日夕刻、安倍晋三首相が非常事態宣言を発表した。政府の東京、埼玉、千葉、神奈川の首都圏と大阪、兵庫、福岡を加えた7都府県を対象にした緊急事態宣言を受け、百貨店大手各社は8日から営業自粛=一斉休業に踏み切った。百貨店以外の大手商業施設もルミネ、パルコはじめ各社とも4月8日から休業に突入した。

 厳密に言うと第一回目の緊急事態宣言発出から1年と半月後に3回目の発出となったわけだ。

 筆者が問題だと思っているのは、2回目の緊急事態宣言を2021年3月21日に解除してから、ほぼ1ヶ月しかたっていないという事だ。更にはその期間も、今回は極端に短い。もちろん予定だが。

緊急事態宣言の期間
1回目: 1ヶ月半
2回目: 2ヶ月半
3回目: 半月予定

 念のため2021年1月15日号の記事を再掲する。

続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年05月01日号 を御覧ください。

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