デパート新聞 第2658号 – 令和3年2月15日

12月全国は13.7%減

 日本百貨店協会は、令和2年12月の全国百貨店(調査対象73社、196店〈令和2年11月対比±0店〉)の売上高概況を発表した。売上高総額は5464億円余で、前年同月比マイナス13・7%(店舗数調整後/15月連続マイナス)だった。

百貨店データ

  • SC販売統計調査12月
  • 都市規模別・地域別 売上高伸長率
  • 神奈川各店令和2年12月商品別売上高

人事異動

  • J . フロントリテイリング㈱
  • ㈱大丸松坂屋百貨店
  • ㈱そごう・西武

鎌倉にガチャガチャの杜が登場 小町通りで早速話題に ~

(デパート新聞鎌倉支局)

令和3年1月30日鎌倉の小町通りにガチャガチャの専門会場が出現した。その名は「ガチャガチャの杜(もり)」。鎌倉市内でも最大級のガチャガチャのスペースと言えそうだ。リバスクビル1階スペースには合計123台の機械が集結し、多くの観光客が次々に会場へと歩を進めていく。ガチャガチャの提供元はタカラトミーの子会社のペニイ。元々1965年に日本で初めてガチャガチャを導入した会社で、オモチャの会社らしいく精巧な技術の中身が 魅力である。同社によると品揃えの豊富さも業界随ーとのことである。

 鬼滅の刃や呪術廻戦などアニメキャラクターや東京オリンピックのキャラクターのミライトワ・ソメイティ、定番のポケモン、更に昆虫や遺跡の関連グッズと豊富で、子供たちは笑顔でチャンネルを回していた。

地方百貨店の時代 その10

デパート新聞社 社主
田中 潤

大都市の百貨店は、人気のあるテナント、販売力に優れたテナントを誘致し、売り場を貸して賃料を得るという戦略を進めるところが多い。しかし、地方百貨店においてこの形を採ることは極めて危険である。まず、テナントを誘致することは、その店のオリジナリティを自己否定したと言わざるを得ない。入店したテナントが発信力のあるテナントであるほど、そのデパートの本来の商品提供力、もっと俯瞰的に言えば、マーチャンダイジングの価値が薄れていくのである。あのデパートは面白いテナントを入れてくれて、自分たちにとって都合のいいところだという印象だけを消費者に与え、デパート自身の独立的な価値評価にはつながらない。また、テナントはあくまで自己責任で運営をするので、自社の基準の中で物が売れなくなったり会社の経営状態が悪化したりすれば、百貨店の思惑に係わらずいつでも退店してしまうというリスクがある。テナントの経営方針を決めるのはデパートではないが、退店による地域の消費者に与えるマイナスイメージは大きく、テナントの撤退を許したデパートに責任の矛先が向かいかねず、思いがけないリスクを背負うことにもなりかねない。

 そもそも、大都市の百貨店に比べ、顧客の購買力が弱い地方の百貨店は、テナントにとっても入店する不安は大きい。入店させたからには同じ会社の一員としての責任意識をもって、そのテナントを育てていくことは当然であり、それが出来ないならば安易な招聘はリスクが大きすぎる。更に、テナントの力も相対的に衰えていく中で、あるテナントが退店したら、次は前よりも発信力の弱いテナントを入れざるを得なくなる可能性は強い。つまり、悪循環になるばかりである。

 マイナス思考の論述となったが、一つ言えることは、定常型社会では一テナントの存在が、地方百貨店における起爆剤とはなり得ないのである。

 今、改めてデパートはその地域の歴史・文化をしっかり学習し、地域の方々を巻き込んで、オリジナリティのある店づくりをしなければならない。このデパートだけの売場・商品で勝負するということは、デパート自身が店づくりに全責任をもって消費者と向き合う覚悟が必要なのである。

  「自分が当り前に知っていることを、多くの人が全く知らない。」或いは、「テレビや新聞で年中言われていることの意味を自分は何も分からない。」ということは、いつの時代でもあることなのだろうが、最近はこうした体験をすることが増えているのではないだろうか。これについては、インターネットの普及が特に大きい。そして、特に新しい情報の方が即重要なこと、つまり、日常必要なことが多く、それを前提に世の中が進んでいるというのが二十一世紀なのだ。

 インターネットやスマートホンの利用を前提にした決済・行政手続、特にコロナ禍での各種受給金の申込手続など、アナログは初めから受付けてもくれないものは数多い。高齢者が「知らない」「分からない」で済まされないものがどれだけあるのかを整理し、丁寧に伝えることを義務付けられているのは公助の分野でなく行政の使命である。

無駄の物語 part6 待ち合わせ

犬懸坂祇園
作詞、作曲などをしております

 今、日本経済新聞の連載小説は、夏目漱石の人生を伊集院静氏が書いている。ミチクサ先生というタイトルだが、そのタイトルである道草について登山の仕方を例えにして12月3日号で次のようなやりとりがある。

 「真っすぐ登るのはオタンコナスですか?」五高はじまって以来の優等生の寺田寅彦は金之助の顔をじっと見て訊いた。見られている金之助もかつて、一高はじまって以来の秀才と呼ばれたことがあった。
 「そうさ、つまらない。そういう登り方をした奴には、あの築山の上がいかに愉しい所かが、生涯かかってもわからないだろうよ」
 「ではどう登ればいいのでしょうか?」
 「そりゃ、いろんな登り方でいいのさ。途中で足を滑らせて下まで落ちるのもよし。裏から登って、皆を驚かせてやるのも面白そうじゃないか。寺田君、ボクは小中学校で六回も転校したんだ」
 「どこもつまらなかったからですか」
 「いや、皆、それぞれ楽しく、いろんなことを学ぶことができた…」金之助は、本郷界隈から通った錦華小学校や、二松学舎の長机を並べた畳の表が破れた教室での授業を懐かしそうに思い出していた。
 「いろんな寄り道ができて面白かったよ」
 「寄り道ですか?」
 「道草でもいいかな?」
 「みちくさですか?先生がそんなふうになさったとは想像もしませんでした」
 「いろんな道の端で、半ベソを掻いたり、冷や汗を掻いたりしていたんだ。“我楽多”とか“用無し”と呼ばれたこともあった。その時は少し切なかったし、淋しい気持ちになったが、そんな私をちゃんと守ってくれたり、手を差しのべてくれる人がいてね。その人の温りで寝た夜もあったよ」
 「先生のみちくさは愉しそうですね」

寅彦が金之助をまぶしそうな顔で見つめ、目をしばたたかせていた。

 合理的に真っ直ぐに山に登るより、道草をしながら頂上を目指すことの面白さがしっとりと伝わってくるくだりだが、道草と無駄とは確かに共通項があるようだ。合理性を否定し、自分が思ったことを信じて全力で傾注するところであろうか。決して、雑に物事を考えて行うのでなく、道草を食う対象に対して一期一会の思いで向き合うのである。

 もう一つは道草を食うことの多くは、人との交流によることであろう。自分の行動指針を潔く取り下げて相手に生じたことを真剣に共有し、出来ること、助けられることにも無私の思いで行う。そこには、経済的利益を前提にした思考は存在しない。だからこそ、無駄なことをすることも道草を食うことも人生の中で清々しい一時なのではないだろうか。

連載:デパートのルネッサンはどこに有る? – 「GINZA SIXで大量閉店」のニュースは本当なのか

 百貨店に関する報道で、気になる記事があったので取り上げたい。

【先ずは以下のニュースをご覧いただきたい】

 銀座最大級の商業施設「G I N Z A S I X(ギンザ シックス/東京都中央区)」で1月17日、飲食店、アパレルショップ、コスメブランドなどのテナント14店舗が閉店した。2020年12月27日以降での閉店は計18店舗になる。

 GINZA SIX17年4月にオープンした銀座地区最大の複合商業施設。松坂屋銀座店の跡地を利用しており、オープン当初は241店舗が入居していた。

 1月19日の「改装のお知らせ」によると、昨年末に2店舗、21年1月10日に2店舗、1月17日に14店舗が閉店している。なお、20年12月24日にホテルショコラが開店しており、1月下旬には新店舗のオープン情報も出るとのこと。

 同施設は、森ビル、大丸松坂屋百貨店、住友商事、Lキャタルトンリアルエステートが共同出資した「GINZA SIXリテールマネジメント」が運営している。森ビルのみ20年2月29日で共同運営業務を終了していた。

●銀座最大級の商業施設「GINZA SIX」で大量閉店
1月17日に14店舗が一斉撤退(2021年1月19日)

【追随する続報を見ると】

 計20店舗のクローズを受けて、SNS上では「びっくり。コロナで打撃を受けたのか」「賃料が高そうだから仕方がない」といった声があがり、1月 19日にTwitterでトレンド入りするなど話題を集めている。

 今回の大量閉店についてギンザシックスの広報担当者は「次のステージへ向けた新たな挑戦として、開業から4年が経過した段階で想定していたリニューアル計画。コロナ禍とは関係ない」と説明。新たに入居する40店舗の詳細は1月26日に発表する予定だという。

●「GINZA SIX」テナント大量閉店に驚き
広がる 「松坂屋が懐かしい」の声も(2021年1月20日)

続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年02月15日号 を御覧ください。

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