これからの消費と選べるガチャガチャ

地方デパート逆襲(カウンターアタック、CA)プロジェクト特別編

 2025年12月1日号の本稿で「『モノ消費からコト消費』のその先は」と題し、顧客の消費活動が変化していった背景と、これから百貨店(特に地方デパート)が考えていかなければならないことについて解説した。今回はそこから理論を派生させていく。
※もし可能であれば本紙2025年12月1日号4面「デパートのルネッサンスはどこにある?」を再読して欲しい。

消費の成熟化?

 モノ消費からコト消費というのは、消費の多様化であるが、それは果たして成熟化なのか? 消費傾向がコト消費に変化していった背景には、国内における消費の成熟化が挙げられる。モノが少なかった時代には、人々の生活を豊かにするようなモノやサービスが求められ、商品自体の機能やサービスの良さが価値とされてきたからだ。

※余談だが、日本人はとりわけ「技術力」という言葉が大好きだ。それにより日本は戦後奇跡的な経済復興を成しえた、とか言っては「高度経済成長」時代を懐かしむ風潮が強い。特にオジサン世代の言動を聞くと、それが顕著だ。失礼!そういう人は皆65歳以上なので、もはや「オジサン」ではなく立派な「おじいさん」ですね、自分も含めて。ジジイは主張する「声」が大きいのが特徴だ。加齢で耳が遠くなっているからだろう。昭和100年などと言って、やたらと「昔は良かった」話をしたがるから始末が悪い。紙面が足りないので、オジ(イ)サンの弊害については別の機会に語る。話を戻そう。

全国津々浦々

 しかし、経済成長などで多くの人にこれまで必要とされてきた「モノ」が行き渡り、いつでもどこでもそうしたサービスを受けられるようになったことにより、大変皮肉な事だが、モノ自体への意識が薄れるようになってしまった。

 例えば、昼食を食べたいときには近くにコンビニエンスストアやファストフード店があるし、飲み物が必要になれば自動販売機やカフェで購入できる。という様に便利ですぐに手に入るからこそ、その「ありがたみ」が薄められ、果ては消失してしまったのだ。

 それはまた、ネットショッピングの登場により、より加速している。地域ごとのモノの入手難易度の差がほとんどなくなったのだ。その裏で人手不足を背景に配送サービスの困難度は上がっているが。

 例えば、北海道にいても東京で作られた商品を届けてもらうことが可能になり、反対に東京から北海道の名産を消費することも可能になったのだ。とは言うものの、70~80代の人に「ネットで何でも買えるし、家まで届けてくれるよ」といっても「めんどくさいからいい」で済んでしまうかもしれないが。

コト消費の始まり

 このように欲しいものをより便利に、即座に入手することが全国的にできるようになり、いつでも必要なモノが手に入るようになった結果、商品の機能自体の価値よりも、商品購入だけでは得ることができない、体験や経験などの「コト」に対する消費意欲が高まった。

 2025年12月1日号の本稿に掲載した「『モノ消費からコト消費』のその先は」に於いて、筆者はモノ消費 ➡ コト消費への進化と、コト消費の細分化し、トキ消費、イミ消費、エモ消費に分類した。

 そして本紙は「地方デパート逆襲(カウンターアタック、CA)プロジェクト」を通して、地方で孤軍奮闘する百貨店がその地域の「公益」拠点であることに着目し、それを支援することがミッションである、と提言した。

 そして、その具体的な進捗については、その代表例である「選べるガチャガチャランド」の地方デパートでの開催状況を、毎号毎号タイムリーにお伝えしている。
※具体的には12月15日号の2面に掲載した日本地図をご覧頂きたい。

CAは脱モノ消費

 「選べるガチャガチャランド」はモノ消費であるが、それだけではないことを2025年12月1日号で述べた。以下再掲載する。

 一つだけ付け加えておきたいのだが、「選べるガチャガチャランド」は単なるモノ消費ではない。それはお客様の店舗滞在時間が驚くほど長いコトが証明している。

 会場には何百種類のカプセルトイが何千個もあり、その中から「宝探し」を体験しているのだから、当然といえば当然だ。買う楽しみ、保有する充実感だけでなく、欲しいものを探す事自体が、顧客にとって「至福の時間」なのである。

 従って選べるガチャガチャは、コト消費(体験価値)やトキ消費(限定性共時性)、エモ消費(推し活)の側面も持っているというコトは容易に想像できるだろう。そして選べるガチャガチャは、イミ消費(エシカル消費)でもある。

 文章だけでは解り難いので、12月1日号に掲出した表を右に再掲出する。

 前述した様に「選べるガチャガチャランド」は単なるモノ消費ではない。コト消費を細分化した、トキ、イミ、エモのどの消費にも当てはまる。ガチャガチャマシンを介した通常のカプセルトイ購入では得られない事は、判っていただけると思う。

コト消費 = 好きなカプセルトイの宝探し体験

トキ消費 = 家族との会話含めた時間の共有

イミ消費 = ガチャ収益を介した被災地支援

エモ消費 = キャラクター収集による推し活

開催の意義

選べるガチャガチャランドの広告

 CAプロジェクトの企画はすべてそうなのだが、「選べるガチャガチャランド」は、都心の百貨店では開催しない。デパート新聞の田中社主はそう断言している。

 我々デパート新聞のミッションが地方デパートを応援するコト、だからではない。

 逆だ。どこのデパートであってもかつては担っていた役割、それはその地域での交流拠点である事だ。それが今、地方デパートは(都心でもそうかもしれないが)失われつつあるのだ。

 それを解決、少なくとも補完するのが「選べるガチャガチャランド」なのだ。

選べるガチャガチャランドの収益は、全て被災地支援に充てられる

「カプセルトイを大量に売っているだけだろ!」

という反論は容易に想像できるが、そうだろうか? 筆者はデパートで販売スタッフの生の声を聴いている。本紙2025年11月1号の一面に「地方デパート逆襲プロジェクト 全国展開へ〈続報〉 の中で、埼玉県熊谷市の八木橋百貨店での取材記事を読み返そう。

 「オープン初日から、まとめ買いをする若い客層が目立った。レジ対応の百貨店スタッフも『こんなに学生服のお客様が来たのは、見たことがない』と驚いていたくらいだ。」

 そうなのだ、今現在デパートは都心も例外ではなく、客層は極端に高齢化している。全国的な少子高齢化だけでなく、都心への人口の一極集中とそれによる過疎化等、2重3重に地方から人を、そして地方デパートからは顧客を奪っているのだ。

 それでも、八木橋百貨店には「選べるガチャガチャランド」を目指して、普段来店することのない学生服のお客様が来てくれたのだ。津松菱にも、金沢エムザにも、山口井筒屋にも、秋田西武にも、米子髙島屋にも、姫路の山陽百貨店にも、川越の丸広にも、そして新年1月7日からは横須賀のさいか屋にも。もちろん中高生、大学生だけでなく、小学生や未就学児を連れたお父さんお母さん世代も一緒に。

 「選べるガチャガチャランド」は、地域での交流拠点としての地方デパート本来の役割を取り戻してくれたのだ。これが、デパート新聞が標榜する「公益」の在り方なのだ。