地方デパート 逆襲(カウンターアタック)プロジェクト そのその49 CA プロジェクトの松菱百貨店での(その5)

 「食べる本屋さん」は令和6年12月4日にオープンし、既に3カ月が経過しました。その間テレビ局・新聞・雑誌などから多くの取材があり、「普通でない書店」に対し、なぜこのような店をオープンしたのかという質問を多く受けました。デパートが公益事業を行なうことの意義やデパートと書店、すなわち斜陽産業同士が協力し合うことで地域のコミュニケーションを活性化し、来店された方々に小さな幸せをもたらすことを目指すという説明に深く頷いていただきました。

 モノを売るのでなく、デパートという場で「人を買ってもらう」という今後のデパートの在り方にも共感が集まりました。それは、「食べる本屋さん」に来店される方々との会話でもより確かなものになっていきました。多くの人々が今の社会の進み方、地域のコニュニケーションが衰退していくことに危機感を持っているのです。「食べる本屋さん」は、地域の方々が安心できるコミュニティを作ることに重点を置いて進めなければならないと確信しました。

 コミュニケーションを豊かにするイベントも始めました。3月2日には、ブランディングマネージャーの高殿円さんが友人で書評家の三宅香帆さんを招いてトークショーを開催、100人近くの人が来場しました。三宅さんは、著書「なぜ働いていると本が読めなくなるのか」がベストセラーとなり、今多くのメディアで引っ張りだこですが、「食べる本屋さん」の活動に強い関心を抱き、その発信に協力してくれました。また、3月15日には地元の名門高校津高校の図書部の生徒さんたちによる本の交流会を開催します。

 今、話題のビブリオバトル(自らが推す本についてどこに魅力があるのかを発表し、優劣を競い合う大会)の全国大会に出場した同校の藤井春奈さん他本好きの生徒さんが集まり、デパートの顧客の前で本の推奨をします。これは、アントレブレナー(起業家)精神を養う活動であるとともに、地域のコミュニケーションの活性化には最適なイベントであり、津高校とは定期的にこうした活動を続けていくことを申し合わせています。

 藤井さんが発表する「本屋さんのダイアナ」はまさにビブリオに相応しい内容で、本好きの主人公が自分の人生の中で本の影響を受けつつ、憧れの本屋さんへの道を進んでいく物語ですが、著者の柚木麻子さんからもこのイベントに激励のメッセージを寄せてくれました。このように多くの人々のコミュニケーションの輪が拡がっていくことこそ、「食べる本屋さん」が目指す公益事業の形と言えるでしょう。