デパートのルネッサンスはどこにある? 2025年2月1日号-第108回「関口宏のこの先どうなる!?」を紙上再録 後編

今日のテーマは『デパート』です。

 赤坂のTBS本社近くのスタジオで、昨年12月に収録が行われた。
出演者は関口宏氏、統計学者西内啓氏、構成作家若林淑子氏。
ゲストコメンテーターの私含め、4人によるディスカッション形式で番組が進行した。
以下、前号から続く

●老舗百貨店を襲った大きな動き:経営統合
N:売上減少や閉店ラッシュといった苦境に陥った百貨店業界に激震。

【VTR】
 三越と伊勢丹の経営統合記者会見(2008年)~日本を代表する百貨店である三越と伊勢丹が経営統合を発表。
 経営統合に至った原因は、三越が単独ではやっていけなくなったから?

・大手百貨店が次々に経営統合・・・
 三越+伊勢丹/大丸+松坂屋/そごう+西武百貨店/阪急百貨店+阪神百貨店

若林:経営統合後の都心のデパートの主な動きを見てみます。
・2013年銀座松坂屋の閉店
・2020年、東急百貨店東横店の閉店
・2023年、東急百貨店本店の閉店➡再開発のためにホテル、商業の複合施設に転換

【VTR】
 2023年、そごう・西武はセブン&アイホールディングスから海外の投資会社へ売却された。
 そごう・西武の労働組合は同年8月、61年ぶりのストライキを慣行し、池袋の街をデモ行進した。 
 結果、池袋西武は半分がヨドバシカメラになり、西武百貨店は半分残った。
※詳細は拙著「セブン&アイはなぜ池袋西武を売ってしまったのだろう」をご参照下さい。

若林:山田さん、どう思いますか?

山田:銀座の松坂屋が銀座シックスになり、東急東横店がスクランブルスクエアになり、特に電鉄系デパートは「百貨店じゃなければいけない」という理由がなくなった。集客出来て売上が高ければテナントビルでも良くなった。

●東京だけではなく、地方百貨店も悩みが深刻

若林:地方のデパートはさらに深刻です。西内さんお願いします。

西内:大都市と地方デパートの売上高を比較。
※10都市・・・札幌・仙台・東京23区・横浜・名古屋・京都・ 大阪・神戸・広島・福岡。
10都市は大都市、10都市以外は地方、という構図
・10都市のデパート・・・10年前と売上高はそれほど変化なし。
・10都市以外のデパート・・・10年前と比べ売上高が37%減少した。

●昨年1年間で、閉店した地方デパート

・青森県 中三(なかさん)弘前店
・埼玉県 丸広(まるひろ)百貨店東松山店
・岐阜県 岐阜髙島屋
・愛知県 名鉄百貨店一宮店
・島根県 一畑(いちばた)百貨店
➡1年間で5店舗も閉店/山形、岐阜、島根、徳島の4つの県がデパートゼロになった。

関口:地方の百貨店が衰退した原因は何ですか?

山田:地方は、車社会なのにデパートは駅前に立地している。郊外への大型ショッピングモールの進出に加え、山形は仙台に、岐阜は名古屋に近すぎたことも要因。

この先どうなる!?未来の百貨店

若林:日本のデパートはこのまま消えていく運命なのでしょうか?2050年の未来も存続していくために何が必要かを考えます。 

 まずは衰退する地方デパートについて考えます。目から鱗の取り組みを行う店舗を取材しました。こちらをご覧ください。

●脱デパート化 近鉄百貨店のフランチャイズ事業

・関西・東海地区に10店舗そのうち、地方( 奈良、滋賀、三重) 6店舗を構える近鉄百貨店。

【VTR】
・近鉄百貨店四日市店を取材➡百貨店がFCの加盟店に。
フランチャイズとは・・・フランチャイズ本部となる親企業に、加盟店がロイヤリティ(対価)を支払って、ブランド名や経営ノウハウを得て事業を行うシステム。

 成城石井、コクミンドラッグ、ABCクッキング、タリーズ、オンデーズ(メガネ)他(
27業種70店舗を運営)➡近鉄の社員が実務を担う。それ以前、百貨店は運営を取引先に任せ、収入はテナント料などだけ。
➡近鉄百貨店にとって、収益が変わらない。

FC事業のメリット①

・百貨店の社員が汗を流して、店舗運営し、売った金額に応じて収益が変わる。収益性が高まる。

FC事業のメリット②

  • 話題のお店を取り込め、若い客層を呼び込める
  • 既にブランドとして確立されている上に商品開発・仕入れ・運営のノウハウを採り入れられる。

若林:他にも地方デパートでは、このような取り組みを行っています。

  • 静岡「松坂屋静岡店」➡デパートの中に水族館
  • 埼玉「丸広百貨店」➡地方のデパートと手を組み、互いの店舗で物産展を開催
  • 熊本「鶴屋」➡台湾の半導体メーカーTSMCの進出をにらみ、4人の外商「特命チーム」を結成。TSMCの関連企業60社を訪問し、幹部が家具や寝具をまとめ買いした例も。

若林:山田さんは地方デパートの改革について、どう思いますか?

山田:これからは「脱デパート化」がキーワードになると思います。
 例えば、川越の丸広は仙台の藤崎と地域の物産展を相互乗り入れしています。埼玉県で仙台のずんだ餅を売り、宮城県で川越のうなぎが買える。その地域の強みを移転し合って、強みを2倍3倍に出来、ウィンウィンの関係。

●2050年に向けた生き残り戦略 東京のデパートはどうなる!?

若林:一方で東京のデパートも安泰ではありません。どうなっていくの
でしょうか?

●東京の老舗デパート松屋銀座はどう考える?

N: 東京のデパートは、どう生き残っていくべきなのか?

  • 各社、需要のあるインバウンド向けの戦略と、未来の顧客となる若い富裕層の開拓
  • そごう・西武は、昨年度の新入社員全員を外商に配属させて、ニューリッチ層へアプローチ。
  • しかし、それ以外にも2050年への生き残りに必要なものがある。

・そこでやってきたのは、勝ち組のひとつ松屋銀座。
 今年5月で創業100周年を迎える。2024年2月期に売上高1018億、過去最高益達成。

【インタビュー】
・古屋社長「インバウンド客相手に銀座の百貨店しか、体験できないような体験価値を提供する」

・服部副店長
 「百貨店ならではの特徴は『人が大事』という事。人が人にどれだけおもてなしを出来るか。」

・古谷社長
 「百貨店的なものを未来に残していくのが大事。朝のお客をお出迎えする挨拶、迎接(げいせつ)は、効率化を追求する現代社会では無駄なことに見える。しかし、我々は百貨店なので、そこにこだわって行きたい。100年やり続ければ希少性が出てくる。」

若林:ここで山田さんから、未来への提言があります。

●2050年「夢の国」デパートは消える!生き残るのは・・・?

若林:山田さんの提言、まず1つ目が
1「看板を捨ててハイブリッド化」どういうことでしょうか?

山田:これからのデパートは、今までの「デパート像」から脱却し、オフィスや住宅、図書館や行政の出張所など、ターミナル立地に必要なものを網羅するハイブリッドさが必要。(画像:愛媛県松山三越の建物にはホテルを併設)

関口:アートやイベントもデパート文化のエッセンスですよね。

若林:二つ目がこちら。
2「強みを見極めて、スペシャリティ化」これはどういうことでしょう?

山田:例えば松屋銀座は銀座という街の魅力を生かし。髙島屋はショッピングセンター化を進める。
 富裕層シフトでも、伊勢丹はインバウンド客用アプリを用意して帰国後も再来店を促す。三越は年配の富裕層に特化、というように、それぞれの強みに更に磨きをかけて行くべきです。
 同質競合を回避し、個性を強みに変えていく事が大事だと思います。

西口:デパートがなくなってしまったら、日本の服飾文化が失われてしまう。デパートの目利きや、信頼は日本の無形財産だと思います。

関口:長くやって来た商売なので、何か(生き残る)道はあると思う、そう思いたいですね。
《番組終了》

 紙上再録は以上となる。

 前編同様カット(いや、編集か)されたシーンも多数あるが、日本のデパートの過去、現在、未来を上手くまとめてあると言って良いと思う。

 出演していて何だが、絶滅危惧種であるデパートの生き残り策は、番組での考察以上に困難であることだけは付け加えておきたい。