地方デパート 逆襲(カウンターアタック)プロジェクト その43 デパートの食堂の重要性 成長主義からの脱却 ーそれは無駄を心掛けることー

事業の成長に終止符を打つ勇気

 デパートは自分たち(経営側)の合理性を排除し、出来る限り経営的に無駄だと思う場を提供し、顧客に楽しんでもらおうと努力することがこれからも地域のランドマークとして信頼される在り方であると私は考えています。デパートは売上追及をどこまでも続け、成長し続けなければならないという思想を断ち切るべきであると思っています。

 この思考はこれからの私たちの生活すべてに及ぶことであり、資本主義に染まった今の社会に根付いている成長至上主義を否定することに繋がります。無数の事業者がSDGsを掲げ、新しい経営の在り方を模索していますが、その出発点として成長をすることに否定の意志は見えてきません。しかし、事業の目的として成長を目指す限り、過剰な消費を生む土壌は決して崩れないでしょう。

 現在の資本主義第一の思考の下、成長が進めば貧富の差は更に拡がります。それは一国だけの問題でなく、世界全体で先進国と発展途上国の差を拡げていくことなのです。そして、その成長は最も重大なリスクである生態系の破壊に繋がります。今現在も、グローバルサウスの国々では資本によって資源を搾取され自然環境が破壊されることで巨大災害が多発し、日々の生活に重大な危機を迎えています。成長が続いていくことで、いずれ私たち日本人の生活空間にも、自然界からの想像を絶する規模の災禍が訪れるでしょう。11月にいくつも大きな台風が日本列島に近づいていることなど、かつてない気象異常はそうした徴候と考えられます。

コミュニケーションの進化へ

 話を戻しましょう。デパートという場が将来も生き残っていくためには、成長を目的とした消費至上主義はもはや許されないのです。一方、身近に迫った犯罪事件の拡大や過度な個人情報保護の徹底で、社会は様々な形で閉鎮思考となりコミュニケーションが年々しづらくなってきています。まさに、不特定多数の人々から唯一無二とも言える信頼を寄せられている小売業たるデパートこそ、コミュニケーションの場として様々な役割を担っていけるはずです。むろん、その過程で当然ながら一定の消費が行なわれます。但し、その消費はデパートも顧客も取引先も、皆が豊かさを分け合える場を作っていくためのものなのです。その営みを続けることこそ、デパートが将来も地域で尊敬され、愛され、生き残っていく道なのです。売上を伸ばし、利益を少しでも多く上げていくという資本主義に縛られた経営者思考ではデパートは存続していくことは出来ないでしょう。