税と対峙する – 5

平成15年 7月5日号(第2253号)

いよいよ消費税率あげが具体的に
購買意欲の低下につながる税制改革はごめんだ

 政府税制調査会が税制改革の中期答申を小泉総理に提出した。 中期答申はそれが来年度具体的に税制上改正されるものではなく、今後数年間の中での税制のあるべき方向性を示したものである。 この中でデパート経営に今後影響を及ぼす可能性のあるものをいくつかひろってみたい。

1.将来消費税率を2ケタに引き上げる

 中期答申では「国民の理解」を前提に消費税率を2ケタ、つまり10%にあげる必要があると明言した。 当然この場合すべての「物」に一律10%の消費税が課せられるということでなく、食料品や生活必需品等一定のものは軽減措置がとられることになる可能性が強い。 その中で何を10%の対象とし、何をしないのかという綱引きが行われるのは必至であり、デパート業界としては一丸となってこの議論に参加することが必要となろう。 すべての商品もれなく消費税率引き上げは重大な購買意欲の低下をもたらすことはまちがいないからだ。

2.公的年金等控除を縮小

 高齢者は公的年金を受給しているが、年齢に応じて一定の控除が適用され得計算される。 したがってたとえば64才では年間70万円まで、65所才以上は140万円迄の年金収入は課税されない。 年金しか所得がなければ更に数十万~百万円程度の年金収入を加えても課税されない可能性がある。 これが高齢者優遇ということで控除額を縮小しようというわけである。富裕な高齢者への課税を見直しすることは当然だが、課税が強化され年金の手取り額を一律に減らすような措置になると多くの高齢者の財布のヒモを一気にきつくする危険性がある。

3.遺族年金・失業給付を課税対象にする

 いずれも現在所得税法上は非課税であり、受給金額の多寡に関係なく手り100%となっている。 これについても一定額以上もらう場合には課税していこうという措置である。理論的是非はともかく購買意欲の低下に直接つながることはまちがいない。

4.金融・証券税制の改革

 現在、金融商品は多様化しており課税の在り方も複雑であり、中立性が保たれていない。 簡素化し一本化すれば利子収入にかかる20%の課税額が減税されるなど手取り額が増える状況が生じることも考えられ、購買にプラス要素を与える可能性がある。

 今回の答申は、デフレ経済という小売業にとって最も逆風な状況が起こっていることを踏まえてのものとは言い難く、相変わらず実務に疎い学者の政策論議という感が強い。 デパート業界としてはとくに消費税率アップについては目を離さずに行政の動きを監視する必要があろう。

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