税と対峙する - 4
平成15年 6月20日号(第2252号)
外形標準課税は企業にとって赤字でも一定の事業税を負担しなければならない厳しい課税方式である。
その課税要素として前回は人件費をみたわけだが、今回は賃借料と利子について考えていきたい。
外形標準課税を計算する過程で付加価値基準額という要素がある。
これは給料、純賃借料、純支払利子、更に利益の4つの要素の1年間の金額を求め、その0.48%を税金とするものだ。
この中で純賃借料は企業が支払っている支払家賃や地代その他経済的利益でこれに準じるものの合計額から貸して賃料をもらっている受取家賃等を相殺した後の金額である。
デパートの場合、巨大な床面積を賃借して営業しているケースが多く、今迄は赤字であればその点についての課税はなかったわけだが、この制度の導入により家賃や地代を払っていればいるほど、つまり大きいデパートほど税負担が増えることになる。
もちろん自社ビルの場合で家賃などが発生しない場合は対象にならない。
次に純支払利子だがこちらも1年間に支払うべき金利の金額から受取る金利を控除した後の金額が課税対象となる。
といっても今の低金利では受取る金利などはほとんどないわけで借入が多ければ多いほどこの純支払利子の金額はどんどん膨らんでいくはずだ。
金利を支払っていることに着目して課税されるということは納税者としては極めて不合理に感じることだろう。
経済活動上も有利子負債の減少に積極的にならざるを得ず、経営姿勢はますます消極的になっていく。
また人件費を支払う為の借入が更に税金を生むなら「リストラへ」という流れはきわめて自然になってしまう。
まさに今の社会状況に逆行しており、総合的視野に欠ける今の政治の顕著な部分といえよう。
具体的にどの程度の税金になるのか図のケースを参照してほしい。
例えばこんなケース
支払家賃 14.4億円(1年分) | 受取家賃(900万円) | 純家賃(14.31億円) |
床面積2万㎡(6千円/㎡) | 25万円×12ヶ月×3回 | |
1ヶ月:6千円×2万㎡=1.2億円 | ||
支払利子 1.5億円 | 受取利息 200万円 | 純支払利子 1.48億円 |
(借入金 50億円) | (預金 20億円) | |
(年利 3%) | (年利 0.1%) |
(1431億円+1.48億円)×0.48%=7,579,200円
2つの要素によって新たに757万9千2百円の税負担が生じることになるのである。
この2要素はデパートにとって必ず相当額は起こり有る項目であり、ほとんどのデパートの税負担が上昇することは必至といえよう。