地方デパート 逆襲(カウンターアタック)プロジェクト その40 マルクスガブリエル氏の近著 倫理資本主義の始点

デパートの立ち位置
地方百貨店逆襲(カウンターアタック、CA)プロジェクトでは、デパートの将来に向けての在り方の一つとして、顧客と相扶ける関係になることが肝要であると考えています。デパートは、顧客にモノを販売して利益を得るわけですが、自分たちの立場では相手が固定客であったとしても困っている時に素直に助けてもらおうというお願いをすることは考えにくいものであると思っています。顧客とはモノを売って経済的利益を得る対象であり、「タダ」で力を貸してもらう存在とは思えないのでしょう。
倫理的思考の必要
ところで、哲学者マルクスガブリエル氏は近著「倫理資本主義の時代」で、次のように述べています。「人間という動物は相互扶助という社会的絆なしには生きられない。その社会的活動は本質的に規範的だ。私たちは、他者が他者を助けるのを助け、その行動を通じて収入を稼ぎ、利益を得るために存在している。収入・利益は、私たちの存在の動機や目的でなく、そこから派生するものだ。人間が、他者なしには存在できない社会的動物であることを考えると、私たちの個人的自由の行使は相互扶助のシステムの中において意味をなす」というわけです。そして、「企業の目的は善行であり、善行によって利益を得ること」と言い切り、相手のためになることをして利益を得るべきであるとしているのです。
結果的に、道徳的に正しい行為によって利益を得ることは、強欲な要求に基づいて行動するより経済的サステナビリティが高く、最終的にはより大きな利益に繋がる。市場は必ずしも倫理や道徳と矛盾しない。むしろ、その逆であるでというわけです。
相扶ける関係
つまり、自己の利益を最優先に行動することは、相手の事を考えて行動することに比べてむしろ利益を逸するわけで、建前だけでなく実質として相手のことをまず考えるという行動をしっかりしなければならないという真理なのです。それによって、相手もこちらに対して真摯に向き合い、手を差し伸べてくれるのです。これこそ、デパートのあるべき将来の姿と言えるのではないでしょうか。思いやりをもって事業を行なうことで、顧客に対しても従業員、取引先に地域の方々に対しても相扶けあう関係を構築できるのです。

デパート新聞社 社主