5月インバウンド売上高 3か月連続過去最高更新
日本百貨店協会が6月24日に発表した5月の百貨店のインバウンド売上高(免税売上高)速報値は、労働節休暇(5月1日〜5日)で中国からの購買客数と売上が大幅に伸び、前年同月比3.3倍の約718億7千万円だった。新型コロナ感染症流行前の19年同月比で2.3倍となり24年4月(599億円)を抜き3か月連続で最高額を更新した。全国百貨店売上高に占める比率は先月の13.5%から15.3%に上昇した。(19年5月は7.0%)
(図表1参照)
購買客数、2か月連続記録更新 上位は中国・韓国・台湾・東南アジア
5 月の購買客数は56万6千人で2か月連続最高数を更新した。19年5月(47万4千人)比では19.4%増であった。国別では、前月と変わらず中国本土が最も多く、次いで韓国、台湾、香港、シンガポール、タイ、マレーシアの順であった。
一人当たり購買単価、コロナ前の2倍
一人当たり購買単価は約12万6千円となり、19年同月(6万5千円)の2倍に迫っている。
売上の人気商品は、前月とほぼ同じで化粧品、ハイエンドブランド(バッグ、時計、宝飾品など)、食料品、婦人服飾雑貨、紳士服・雑貨だった。
(図表2参照)
5月訪日客数304万人 3か月連続300万人超え
日本政府観光局(JNTO)が6月19日に発表した5月の訪日外国人客数(推計値)は、304万100人だった。3か月連続で300万人を超え、コロナ前の19年5月(277万人)を上回った。
5月は韓国、シンガポール、米国からの訪日客が増加したことが全体の数字を押し上げた。
今年1月〜5月の累計数は1464万人で、19年同期を6%上回っている。
(図表3参照)
訪日客数、韓国首位、次いで中国・台湾・米国・香港・タイ
国・地域別の順位は、前月に引き続き韓国が約74万人で最も多く、次いで中国(55万人)、台湾(47万人)、米国(25万人)、香港(22万人)、タイ(10万人)の順で、この上位6か国が全体に占める割合は76%で前月の73%から3%増加した。
コロナ前には全体の25%を占めた中国からの訪日客の比率は18%、19年5月からの回復率は72%に留まっている。インドは単月で過去最高更新23年に人口が中国を抜き世界最大となり、25年に日本のGDPを抜く(IMF予想)とされているインドからの訪日客数は、29100人(19年5月比46%増)と単月で過去最高を記録した。
全23 の国・地域別のうち19市場(韓国、台湾、香港、シンガポール、インドネシア、フィリピン、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、北欧地域、中東地域)が、5月として過去最高を記録した。
次に観光旅行したい国第1位の日本
日本政策投資銀行などによる「アジア・欧米豪 訪日外国人旅行者の意向調査2023年度版」によると、日本は次に観光旅行したい国・地域として前年に続いて第1位に選ばれた。(2位韓国、3位豪州)
また中国の旅行予約サイト最大手の携程集団によると、24年上半期に中国人旅行者に最も人気の海外の目的地は日本であった。(2位タイ、3位韓国)
24年は人気テーマパークの新エリアや大型商業施設の開業が各地で相次ぐ
6月6日に東京ディズニーリゾート@は東京ディズニーシーの8番目の新テーマポートのファンタジースプリングス(「アナと雪の女王」ほか)を開業した。今年後半にはユニバーサル・スタジオ・ジャパンが「ドンキーコング・カントリー」を開業予定で、他に愛媛県松山市の道後温泉本館が7月中旬から5年ぶりに営業再開予定など各地で大型商業施設開業が相次ぐことから24年のインバウンド需要の継続が期待される。
〈観光白書(令和6年版)〉
政府は6月18日に令和6年度観光白書を閣議決定し、次のように結論した。
「世界の旅行者の傾向として、旅行目的や旅行ニーズの多様化がみられ、持続可能な観光や地域貢献といったサステナブルな機運が高まっている。加えて、あまり知られていない魅力ある地域への訪問ニーズがあり、その地域ならではの体験に対する関心が高いこともわかった。他方、訪日外国人旅行者の滞在と消費は三大都市圏に集中しており、地方誘客、地方部の消費拡大のより一層の推進が必要である。そのためには、地域ならではの魅力を生かし、高付加価値な体験ツアーの造成等の取組を強化するとともに、交通サービスの確保・充実や多言語対応等、受入面の環境整備も一層推進していく必要がある。」
訪日外国人に関する白書のポイントは次のとおりである。
23年、アジアから訪日客数増えコロナ前の8割に回復
訪日外国人旅行者数は、19年まではビザの戦略的緩和や消費税免税制度の拡充、交通ネットワークの充実、多言語表記などの受入環境整備、日本政府観光局(JNTO)等による訪日プロモーションなどにより過去最高を更新していたが、20年から22年新型コロナウイルス感染拡大に伴い、大きく減少した。その後22年6月の外国人観光客の受入再開、同年10月の水際措置の大幅緩和等により徐々に回復しはじめ、23年10月は19年同月を超え、年間2507万人(19年比21.4%減)となった。
国・地域別では、アジアからの旅行者数が全体の77.8%を占め、中でも東アジアの韓国、台湾、中国、香港が上位を占め全体の62.6%を占めた。訪日外国人旅行消費額は過去最高ペース23年の訪日外国人消費額は、5兆3065億円(19年比10.2%増)と過去最高となった。(参考:今年1〜3月は1兆7505億円、年換算7兆円超と四半期ベースでは過去最高)
(図表4参照)
国籍・地域別では台湾が最も大きく次いで中国、韓国、米国、香港の順で、19年と比較すると中国の構成比が低下した一方、韓国や米国などの構成比が上昇した。
滞在長期化し買物よりもコト消費
費用別旅行消費額の費目別では、宿泊費が29.8%と最も増加(19年1兆4132億円↓23年1兆8345億円)している半面、買物代は15.8%減少(19年1兆6690億円↓ 23 年1兆4043億円)。外国人旅行消費額全体に占める比率は宿泊費が最も高く34.6%(19年29.4%)。19年に最も比率の高かった買物代の比率は、19年の34.7%から26.5%に低下した。娯楽等サービス費は他の費目と比較して消費水準は低いものの50%増加しており、体験消費を含む「コト消費」の成長の兆しがみられる。
訪日客一人当たり支出20.4万円
23年における訪日外国人旅行者の一人当たり旅行支出(消費単価)は19年の15.5 万円から20.4 万円と約3割増加した。消費単価が増加した円安・物価上昇等の影響に加え、訪日外国人旅行者の滞在の長期化が考えられ、23年の訪日外国人旅行者の平均泊数は19年6.2泊から6.9泊に増加した。
円安と低インフレ率で安いニッポン
23年の円の対米ドル為替レートは19年比約25%下落し円安となった。また日本の消費者物価指数が19年比約7%の上昇で欧米諸国(例えば米国は20%)と比較すると緩やかな上昇に留まっていることで、日本の相対的な割安感が訪日外国人の消費を促した可能性が考えられる。
三大都市圏に集中、地方部の消費拡大推進必要
訪日客の延べ宿泊者数について、三大都市圏(東京圏、愛知県、京都・大阪)と地方部を比較すると、三大都市圏が占める割合は、19年の62.7%が23年に72.1%に上昇し19年から23年にかけて訪日客の都市部への集中が進んでいることから、地方部への誘客や消費拡大を一層推進する必要がある。