地方デパート 逆襲(カウンターアタック)プロジェクト その33 エレベーターガールはムダな仕事

【エレベーターガールの価値】
私は、資本主義社会の悪弊の象徴として、利益を追求するあまり何事も合理的に進めムダなことは悪のように決めつけられている昨今の社会の在り方に強い不安と不満を感じています。相手のことを大切に考えコミュニケーションを豊かにするためには非合理的な発想は大切であり、ムダだと思うことを積極的にする姿勢も必要であると思っています。
ところで、デパートはモノを売ることを最優先に考え、その結果合理性に走り、顧客への気配りを疎かにしてしまったことと軌を一にして衰退していきました。その大きな象徴がエレベーターガール(顧客係)の廃止であると考えます。
エレベーターの運行に社員を一人付けるということは、直接モノを売らない人、利益を獲得できない従業員を抱え込んでいることだとする短絡的な判断が、資本主義の思想を追い風に有無を言わせぬ圧力として働いたのでしょう。しかし、デパートが今後コミュニケーション産業であることを強く意識して事業を行っていこうとする時、エレベーターガールはまさにデパートの根幹を為す人材です。彼女たちは、顧客がエレベーターに乗った時から数十秒間顧客とのコミュニケーションを独占出来るからです。

【エレベーターガールの役割】
エレベータ―ガールは、顧客に心地よくフロアー案内をすることが大前提の仕事ですが、それ以外でも自分からデパートの情報を伝えたり、顧客の話を聞いてあげるなど様々な交流をすることができます。地方デパートのエレベーターは多くの場合、比較的空いています。そうしたコミュニケーションをとる時間は工夫次第で十分あるのです。
一方エレベーター内が混みあえば、技術面でもオペレーションをするエレベーターガールがいることで、狭い箱の中での顧客の乗降時のちょっとしたストレスなども解消し、利用した顧客に小さな満足感を与えることも出来るのです。当然ながら、これから店内で買い物をする顧客にウォーミングアップの効果をサポートするのです。
20~30年前と比べて、日本社会は人と人との関係が急速に不安定になっています。合理的な思考を断ち、心に優しい風を吹き込んでくれる彼女たちの存在は、地方デパートの逆襲のためには欠かせません。蛇足ですが、これからその仕事を担うのはエレベーターボーイでもあります。

デパート新聞社 社主