地方デパート 逆襲(カウンターアタック)プロジェクトその28 外商の活用
富裕層とその予備軍の存在
本企画では、地方デパートは収益事業と公益事業の二つの顔を持つことが必要であると述べて来ました。この経営二刀流における収益事業の大きな柱は外商部門です。外商の活躍なくして経営二刀流は成立しません。では、地方デパートにおいて外商部門が非常に重要である理由を述べていきましょう。
まず、大都市の商圏と変らず、地方にも富裕層が存在するということです。富裕層は人口減少という日本の抱える課題とはあまり共鳴しません。こうした層はそもそも限られた数しかおらず、特定の立場を活かし人口減少時代に低金利など優遇措置を受けて、財産が減少するどころかむしろ増加傾向にあります。一方で、これらの人たちは、既にたくさんのモノを所有しており、わざわざデパートにモノを買いに出向く欲求があまりありません。地方の場合、事業で富を伸ばした人よりも元々の資産家が多いので、総じてその傾向は強くまた高齢化しています。つまり、しっかり存在している富裕層に対し、どのようにコミュニケーションをとるべきか、相当綿密に戦略を立てる必要があります。
ところで、相続税が課税される目安とされる資産5000万円を超える人は、国税庁が発表する割合によると年々増加しています。富裕層とは少し異なる一定の財産所有者への目配りも欠かせないのです。
外商の重要な役割
デパートは、富裕層から一定の財産所有者までターゲットを絞り込むことが必要であり、その戦略を実践するのが外商なのです。外商員は積極的にそれらの方々のところにも出向き、取引をしてもらえるように働きかけなければならないわけです。外商は、コミュニケーション力を問われる場は確実に拡がっており、その点での外商員の資質は極めて重要になります。商品知識はもちろん大切ですが、それ以上に顧客から信頼される人間性を磨かなければなりません。本企画で何度も述べているように、外商員その人を買ってもらうことこそ、最初にクリアーしなければならないハードルなのです。
ところが残念なことに今、どの業界でも営業担当者は、総じてコミュニケーション力が非常に落ちており、そもそも直接顧客の下に顔を出すことなくメールで済ませ不興を買うというような現象が多発しています。当然、外商顧客はそうした場面を経験しているわけで、ストレスを抱えています。それだけに誠実に対応し、顧客に受け入れてもらえることが出来れば、外商員は様々なビジネスに繋がる御用聞きというポジションを得ることが出来るので、多くの顧客と良質な仕事を獲得するチャンスも拡がっていくでしょう。
外商組織の再編
ところで、外商が取引する顧客は、資産家ばかりではありません。多くの顧客と向き合っていかなければならないのです。例えば、富裕層の顧客の注文でも商品の配達や受付事務など代わりの人でも対応できることは、補助外商員や外商事務員がリザーブとしてしっかりサポートする態勢をつくることも考えなければいけません。地方デパートでは、富裕層の顧客と信頼関係を作ることを最優先するための組織編制をしっかりとすることが、外商事業を収益事業の柱として成立させるための要諦なのです。
デパート新聞社 社主