2024 States of Tops Message

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あらゆる世代に力強い消費を喚起させることこそが、百貨店に求められている役割であり、世代を問わず百貨店がワクワクする存在であり続けることを目指す

(一社)日本百貨店協会会長 村田 善郎

 明けましておめでとうございます。
新年を迎え、会員各社、並びに関係先の皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

 さて昨年を振り返りますと、様々な出来事がありましたが、百貨店においては、コロナ禍を乗り越え、企業業績の回復に向けて着実に歩みを進めた一年であったと捉えております。

 昨年5月の新型コロナ5類移行で大きく潮目が変わり、外出機運の高まりから人流が増加して旅行やオケージョン、ビジネス需要が盛り上がるなど、消費に明るさが戻ってまいりました。

 またインバウンドは、円安効果が後押しする形でコロナ前を超える活況にあり、昨年10月と11月には、2か月連続で調査開始以来の売上高・最高額を更新しています。

 さらに、時計や宝飾品など高額商材の増勢に加えて、主力商材であるアパレルや化粧品、あるいは菓子類など、幅広い分野で復調傾向が見られるようになり、業界全体の業績は回復基調が鮮明になっております。中には過去最高益を記録する会員店も出てまいりました。

 このような前向きな業績動向のもとで、新春を迎えられますのは喜ばしいことですが、一方で、経済全般を俯瞰しますと、円安などを背景に、エネルギー価格や原材料費の高騰による物価上昇が続いています。ここにきて消費者物価への転嫁は一服感も出ていますが、今後は人件費の上昇などに起因した値上げの動きが広がる可能性もあり、個人消費に影を落とすことが懸念されます。また、国内の社会課題として、様々な業界で要員不足が指摘されています。今や、人材確保は事業継続に直結する重い経営課題であり、要員不足は企業の存続を脅かすまでの深刻なリスクとなっております。

 さらに国際情勢に目を向ければ、早や2年が経過したロシアのウクライナ侵攻、昨年10月から続くパレスチナ紛争、アジアでも南シナ海の領有権問題など、地政学リスクは絶えることがありません。加えて国内も、かまびすしく騒然とした状況にあります。 

 このように、年が改まってもなお、国内外で政治経済の不透明感は高まる一方ですが、企業経営に携わる者としては、混沌の中から如何にして成長機会を見出し大きな進化を遂げていくか、慣例や経験則にとらわれず、挑戦心と気概をもって臨むべきではないかと考えております。

 私が協会長に就任してから4年目を迎えましたが、この間、当協会では、社会課題の解決に重点を置いた事業計画を立て、非競争領域のプラットフォームづくりに邁進してまいりました。

 特に経産省のご指導を得て、2021年に立ち上げた「百貨店研究会」では、各種の業界課題が整理されましたが、その後、課題解決に向けた具体策に取り組み、いくつかの成果物をまとめることができました。

 これまでご支援・ご協力いただいた、関係当局の皆様、お取引先の皆様、そして会員百貨店各社には、改めて感謝申し上げる次第です。

 ここで一例を紹介しますと、先ず一点目は、お取引先業界の問題提起を踏まえ策定した「店頭における労働環境改善指針」があります。働く場の魅力向上は人材確保に不可欠ですので、会員各社には「営業時間の短縮」や「休業日の増加」に取り組むことを呼びかけております。

 二点目は、「人権デューデリジェンスの手引き」。近年、人権問題は、企業責任が問われる新たな社会課題として関心を高めていますので、カスハラなど百貨店固有の事業特性に則した手引書を作成いたしました。

 三点目は、「物流の適正化・生産性向上に向けた自主行動計画」を作成して、昨年11月に発表いたしました。いわゆる2024年問題への対応策ですが、百貨店独自の取り組みとして「深夜検品の廃止」ですとか、「納品リードタイムの緩和」などにも取り組むことを掲げております。

 そして、最後四点目は、「地域活性化」をテーマとした成功事例の情報共有。地方百貨店のトップが参画する協議会において事例研究を進めていただきましたが、その結果、「地方店間での物産交流事業」などが行われるようになりました。

 いずれも「魅力ある業界づくり」に向けた土台を再構築する施策でして、本年もこの取り組みが一層進むことを期待しているところであります。

 さて、足元では、インバウンドや高額消費で百貨店業界は力を取り戻したかに思われますが、これからが再生に向けた正念場になります。少子高齢化の時代にあって、百貨店は既存顧客に寄り添いながらも、次世代顧客を取り込んでいかなくてはなりません。これを二律背反と捉えるのではなく、両立させるイノベーションを起こして、新たな価値を創造することが必要になります。

 あらゆる世代に力強い消費を喚起させることこそが、百貨店に求められている役割であり、世代を問わず、百貨店がワクワクする存在であり続けなければ、次の時代に生き残ることは出来ないと考えております。

 今年の干支は「甲辰(きのえ・たつ)」です。その由来は、「あまねく光に照らされ、急速な成長と変化が起きる年」とあり、誠に縁起よく、百貨店の向かう先を示唆しているように思えます。これからが百貨店の出番です。次のステージに向けて、さらに進化する百貨店を作ってまいりましょう。

今こそディベロッパーとテナントが真摯に向き合い、相手の立場を尊重しつつ議論を重ね、SCの将来の発展を目指す

(一社)日本ショッピングセンター協会会長 清野 智

謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 2023年は、世界的にみると新型コロナウイルスのパンデミックから解放された一方で、世界各地での紛争により世界経済が大きく揺れた1年でした。日本においても資源高、そして円安などの影響で物価が大幅に上昇しました。そのような状況下ではありましたが、5月に新型コロナウイルス感染症が5類感染症に移行したことに伴い、人々の動きが活発になるとともに地域のイベントに多くの人々が集まるようになり、普段の日常生活が戻ってきました。同時に外国から日本への入国規制も緩和され、訪日外国人観光客もコロナ禍前の状況に戻りつつあります。

 このようななか、ショッピングセンター(以下、SC)への来館者数や売上げも以前の状況に徐々に戻りつつありますが、コロナ禍をきっかけにさまざまな課題が顕在化しています。なかでも、いわゆる「人手不足」という状態が各方面で顕在化し、SCにおいても大きな問題になっています。この問題も含めて今こそディベロッパーとテナントが真摯に向き合い、相手の立場を尊重しつつ議論を重ね、SCの将来の発展を目指すことが求められています。このような認識に立ち私は次に挙げる3点が、SCが2024年に取り組むべき課題であると考えております。

 1つ目は、「SCで働くすべての人々のウェルビーイングの追求」です。

 SCはテナントやディベロッパー、協力会社など、多くの方々に支えられており、多方面で人手不足の影響を受けることになります。日本の生産年齢人口は、減少の一途をたどっており、将来的にはより厳しい状況になるという認識のもと、業務の効率化や削減、ITを活用した省人化や省力化の徹底、外国人労働者が働きやすい環境の整備等が必要です。「SCで働きたい・SCで働き続けたい・SCでまた働きたい」と思っていただくために、SCで働くすべての人々のウェルビーイングを実現していかなければなりません。

 2つ目は、「SCが地域の魅力を高める存在へと進化し続けること」です。

 SCは買い物、飲食、サービスなどを通じてお客様の日常に寄り添うとともに、地域の雇用創出やコミュニティの醸成にも取り組んできました。加えて災害時における地域のライフラインとして重要な役割を担っています。

 また、人口減少社会における行政サービスをSCが補完すること、公園などとの複合開発を通じた街づくりに貢献すること、さらには地域が誇る商品、サービス、文化の発掘・発信、地産地消の取り組みなど、SC が地域の魅力を高める存在へとさらに進化していくことが必要です。

 3つ目は、「リアルの場の強みを生かしたお客様への特別な体験価値の提供」です。
コロナ禍を通じて ECが日常の一部になる一方で、人々はリアルな出会いを欲していることを再認識しました。リアルの場の強みを生かし、SCは買い物そのものを楽しむだけでなく、家族や友人と思い思いの時間を過ごせる空間づくりであったり、地元企業への支援がお客様の地域への愛着を生み出したり、インバウンド対応が異文化を知るきっかけになるなど、多岐にわたるSCの取り組みを通じて、特別な体験価値を提供することが求められています。

 さて、新年恒例の「第48回日本ショッピングセンター全国大会」は、多くの方々の英知の結集により、今後のSCのあり方について有益な示唆を得られる場としていきたいと思います。

 本年も協会活動への格別のご理解、ご協力をお願いいたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。

「ありがとうと言っていただける百貨店」を合言葉に

㈱津松菱代表取締役社長 谷 政憲

 2023年年始は、コロナ第8波の拡大、インフレによる物価高、電気代等の高騰による消費者の生活不安など従来のコロナ禍だけでなく、ウクライナでの戦争や米中貿易摩擦を起因とするこれまでにない想定外の災害に悩まされました。

 このような中、春以降には長かったコロナ禍もいよいよ終息に向かい、5月からはウイルスの5類変更もあり、経済の正常化が大いに期待されました。

 しかしながらインフレによるお客様の生活防衛意識の高まりの中、これまでの行動制限の反動で優先順位の高い旅行や、都市部への買物等の消費の流出により、全面的な回復には至りませんでした。

 お客様にご来店していただく為に、待ちの姿勢ではなく、消費意欲を喚起する目的で、5月に初企画となる「生活応援20%還元セール」をほぼ1ヵ月に渡り実施、7月には6F催事場において「ポケモン出張所」を1ヵ月間開催し、売上高4000万円、レジ客数11000名以上と、集客増による売上増に繋げました。

 本年の特筆すべきイベントとして、デパート新聞社様からの包括的協力体制があります。

 当社が三重県における公益的な存在として、地方百貨店の持つ地域の生活・文化の発信地としての使命に深く共鳴していただき、以来物心共にご協力をいただいております。

 両社は合意に基づき、地方百貨店の逆襲と言う意味合いのカウンターアタック( CA ) プロジェクトを始動させました。デパート新聞社様には、最上階の7階フロアーにおいて、「つながるデパートカーニバル」を6月より常設開催いただいております。

 10 月には「やばいよ、やばいよ、銚子電鉄」を開催し、メディアでお馴染みの銚子電鉄竹本社長に来店していただき、名物の濡れ煎餅の販売会と共に、外商顧客を交えての昼食会、トークショーを行いました。同時開催として、タレント出川哲郎さんの実家で知られる横浜「蔦金商店」の元気のりのりの販売会も大変な人気を博しました。

 一方、催事場では「秋まつり」を開催し、選べるガチャガチャ、ミニ縁日等、親子で楽しめる企画を行い、地域コミュニティとの交流を図りました。

 最後に2024年についてですが、2月に当社と同一商圏内のイオン津ショッピングセンター(旧サティ)が休業します。顧客層が近い事から、一部改装を行い地域のお客様の囲い込みを図ります。

 また外商部門においては優良顧客に重点を置いた営業体制の構築、及び人員補強を行い、より強化してまいります。

 これからも「ありがとうと言っていただける百貨店」を合言葉に、全従業員がお客様と直に向き合い、地元百貨店だからこそできるサービスの満足感を、地域のお客様に感じていただけるよう店づくりに努めてまいりますので、皆様よろしくお願いします。

リアル店舗の魅力化、DXの推進、外商の強化に注力して昇龍の如く飛躍の年にする

㈱大丸松坂屋百貨店 代表取締役社長澤田太郎

 謹んで新春のお慶びを申し上げます。

 昨年は、新型コロナウィルス感染症が5月に5類感染症に移行し、社会・経済活動の正常化に伴い、個人消費の持ち直しや訪日外国人観光客数が増加するなど、消費は活発化しました。

 一方でウクライナ問題に加え中東地域に新たな火種を抱えた世界情勢は、不安定さを増しています。資源価格の高騰や物価上昇等による消費者心理の冷え込みなど、個人消費の下振れリスクに注視しながらも、当社は完全復活に向けた道のりを歩んでまいりました。お客様との3つのタッチポイントである、リアル店舗の魅力化、DXの推進、外商の強化に注力した結果、コロナ前の売上・利益水準への回復が見えてまいりました。新中期三か年計画がスタートする今年は、昇龍の如く飛躍の年としたいと思います。

 令和6年は人流が回復し、再び大きく消費が動き出す一年になるでしょうが、コロナ禍で起こったこと、その変化を理解し、元に戻るのではなく新たなマーケットニーズに対応していかなければならないと気を引き締めています。そのためには、この3年間の変化の本質は何だったのかを仮説化することが極めて重要だと考えています。

 その仮説に基づいて新規ビジネスにも取り掛かりました。売らないショップ「明日見世」、百貨店初のファッションサブスクリプション「アナザーアドレス」、当社の食通バイヤーがセレクトした冷凍食品グルメのサブスクリプション「ラクリッチ」など、若手のアイデアから生まれた面白いビジネスも形になりつつあります。

 そして、これらのビジネスの一歩先を行く形のものもスタートしています。ここ数年でお客様は現実世界だけでなく、もはやバーチャル・リアリティにも生活の場を見出すようになりました。私達は「3Dアバター販売」を通じて、その世界を豊かで彩りに溢れた空間に変えていくことにチャレンジを始めています。

 一方で、食品、工芸品など、まだ全国的に認知されていない地域に根差したローカルコンテンツを発信することで、お取引様ならびに地域の皆さまと共栄を目指して行きたいと考えています。選りすぐったコンテンツと独自の編集力に基づく世界感を創出することで、リアル店舗に一層磨きをかけるとともに、そこにデジタルを融合させていくことが百貨店のビジネスモデルのベースになると考えています。

 引き続き好調な富裕層消費については、クローズドサイト「コネスリーニュ」でのスポーツ関連のメモラビリア企画や、希少な日本酒の販売などにより、若年富裕層の開拓を推し進めることができました。実店舗では特選ゾーンの改装に加えて、各店のお得意様サロンのリニューアルによるサービスの拡充に取り組んでおり、外商顧客のロイヤリティが向上しています。

 当社は創業以来、提供してきた本質的な価値は「人」だと考えています。キュレーター的な人財やチームにスポットを当てるだけでなく、実務の人々も意欲的に働けるよう風土改革も進めています。加えてクリエイティブな人財に幅広く支援を始めており、京都で開催された国際的なアートイベントでは、若手の有望な作家を紹介しました。これからは様々な人財の価値を引き出し、魅力的なコンテンツをお客様に提供していきます。昨今は、企業に環境・社会課題の解決と事業成長を両立するサステナビリティ経営が求められています。本年も地球や環境への負荷が少ない商品・サービスを提案する活動「 Think GREEN 」と、地域との共生を目指した活動 「 Think LOCAL 」を中心に、成果の見えるサステナビリティ活動を推進いたします。

 マーケット変化への対応という観点では、サステナビリティ志向が顕在化しており、一例をあげますとファッションサブスクの「アナザーアドレス」では、この思想を商品企画に反映したアップサイクル企画のトライアルをはじめました。本年も、社会課題を本質的に突き詰めることを念頭に置きサステナビリティ経営を進めてまいる所存です。何卒、本年も変わらぬご愛顧のほど、よろしくお願い申し上げます。

「お客様にとってなくてはならない存在」であり続けるために

㈱東急百貨店取締役社長執行役員 大石次則

 2023年は新型コロナウイルス感染症が5類に移行したことに伴い、コロナ禍で中止となっていた数々のイベントが本格的に再開。外出の機会が増えたことにより消費全体は活況を呈しています。
10月の訪日外客数は感染拡大後はじめて2019年同月を超えるなどインバウンド需要も高まり、東急百貨店の事業拠点である渋谷もさらに活気づいています。

 一方、世界情勢が不安視される中、原材料費のあいつぐ値上げや、人手不足等に伴う人件費の高騰、異常気象による史上最高の暑さ、大雨災害に見舞われるなど、さまざまな環境に翻弄される一年となりました。

 当社は中期三か年経営計画の最終年として、一昨年の吉祥寺店、たまプラーザ店に続き、昨年は札幌店の構造改革リモデルを実行しました。また1月末に渋谷の本店は営業を終了しましたが、長らくご愛顧いただいたお客様との関係維持、および新規顧客の獲得を目指し、渋谷では新たな取り組みに着手。渋谷ヒカリエ ShinQsに時計・宝飾などのラグジュアリーの導入、外商顧客専用サロンの新設をはじめ、当社の強みであるフードとビューティー・コスメフロアの充実に努め、本店食料品の中でも特にお客様から支持の高かった「THE WINE」を本店近くの「奥渋エリア」に路面出店するなど新しいことへのチャレンジに挑んでいます。東急百貨店は業界ではおそらく初めてとなる旗艦店のない展開となり、営業面では厳しい環境に置かれましたが、本社のスリム化を行い、経営基盤の確立に努めてきました。

 2024年は新中期三か年計画のスタートの年となります。

 吉祥寺店、たまプラーザ店、札幌店の構造改革リモデルは、従来の百貨店の売場を下層階に集中させ、上層階は賃貸型にして運営の効率化を目指すとともに、賃貸テナント拡充による品揃えの多様化も併せて、館ごとにしっかり利益を出すことを目的としました。店舗の形はできても、まだまだ道半ばです。新中期経営計画の策定にあたり、「既存事業の魅力アップと収益力向上」を基本戦略としました。基本に立ち戻り、お客様の声を聴き、従業員の声を聴いて、次のステップに向かいたい。将来の新たな顧客価値の創造を目指して、新たなチャレンジに挑み続けます。

 昨年の夏頃から、中堅若手社員と経営側が直接意見交換する場を作り、既に20回以上開催しました。そこでは今まで見過ごしていた課題や新たな「気づき」を発見できる貴重な機会となっています。社内コミュニケーションを活発化し、「新たな顧客価値の創造」という大きな目標に向かってスタートしました。「お客様にとってなくてはならない存在であり続ける」 新中期計画は会社の経営基盤を盤石にし、新しいビジネスモデルで東急百貨店が持つ強みを発揮したい。そしてお客様や地域にとって「いつでも、どこでも。」なくてはならない存在となるよう全社一丸となって臨みます。

小田急グループのリテール事業の中核を担い続け、当社の強みにより商業機能の価値最大化に貢献する企業を目指す

㈱小田急百貨店代表取締役社長 中島良和

 2023年の日本経済は、コロナの収束による経済活動の正常化や、財政・金融政策などが下支え要因となり、物価高の下でも景気回復が見られました。

 当社においては、新宿駅西口地区開発計画の工事が進む中、新宿店は10月に旧本館の建物解体に伴う新宿西口ハルクリニューアルから1周年を迎えました。また、12月にはSHINJUKU DELISH PARKもオープンから1年を迎え、「#新宿地下ラーメン」をはじめとして各エリアにリピーターの方も増えてきました。

 新宿店は工事による限られた売場の中、食品、化粧品、ラグジュアリーブランドを中心としたMD展開となっておりますが、POPUPスペースの活用や積極的な店外催事の実施により、極力通常展開のない商品の提案も行い、顧客接点の維持・強化を図ってまいりました。また、お得意様外商顧客に向けては、新たに店外へのアテンドサービスを開始するなど、今後も一層のサービス向上を目指し、外商機能の強化を継続して推進いたします。

 町田店においては、4月に「ハルクスポーツマチダ」を8階に、「青空バーベキューの庭」を屋上に導入し、新たなお客様の取り込みと館全体の活性化につなげてまいりました。また、地域密着型百貨店として町田市を拠点とするサッカークラブ「FC町田ゼルビア」を応援する取り組みも行ってまいりました。

 新たな収益の創造に向けては、店内の遊休スペースを「物販以外のサービス提供の場」として企業に提供する取り組みを進めたほか、店舗以外においても、日本でまだ知られていない匠の技術を世の中に広めていく企画「3×(ミカケル)プロジェクト」の一環として、老舗靴下メーカーと協業したビジネスマン向けの靴下をプロデユースし、クラウドファンディングに出品しました。また、「香りによる空間演出サービス」の代理営業事業を展開するなどBtoBの領域の取り組みも進めてきました。

 今後も新宿駅西口地区開発計画の進捗に伴い、お客様導線の複雑化など2024年も新宿店を取り巻く事業環境は一層厳しくなることも想定されますが、当社にとって今がまさに新たなビジネスモデルへの転換期であります。コスト構造改革や運営体制の整備など事業基盤を一段と強化するとともに、「既存事業のなかの百貨店業の強みの磨き上げ」、「リアル・デジタル双方における顧客接点の強化」、「新たな収益の創造」の3つの軸をもとに、2023年行ってきた取り組みを更に推し進め、事業ポートフォリオの再構築を行ってまいります。

 小田急グループのリテール事業の中核を担い続け、当社の強みにより商業機能の価値最大化に貢献する企業を目指し、強みに活かせる領域に特化したうえで生活者と企業、生活者同士をつなぐリアル・デジタルの様々な「魅力ある接点(場)」を提供し、利用してもらうプラットフォーマーを全社一丸となって目指してまいります。

社会環境の変化に対応し、多くのお客様にご来店いただくための取り組みを行う

㈱東武百貨店代表取締役CEO兼社長 國津則彦

 新年のご挨拶を申しあげます。2023年は、行動制限が大きく緩和されたことをきっかけに、外出機会の増加による国内消費の改善や、インバウンド消費の回復など、消費環境が大きく変化した一年でした。一方、世界情勢はますます混迷を極め、私たちの生活にも大きな影響を及ぼしています。地政学的リスクや急激な円安傾向を受けた物価の高騰といった不安材料はさらに増大し、企業は様々な努力を強いられていると言えるでしょう。

 そのなかで、当社は社会環境の変化に対応し、多くのお客様にご来店いただくための取り組みを行いました。池袋本店では若い世代のお客様のご来店動機となるショップの導入や、次世代顧客の開拓を目指しお子様向けの環境整備に力を入れ成果を上げております。そして、数年ぶりに再開した地域の大学との産学連携の取り組みや、豊島区主催のイベントに積極的に参加するなど、地域とのつながりを強化しています。

 船橋店では、食品・化粧品フロアをより幅広い世代のお客様に目的を持ってご来店いただけるよう改装したことで、顧客層の拡大につながりました。 その他、地域密着の推進として船橋市や近隣企業との取り組みを継続的に実施するなど、ご来店促進施策に力を入れています。

 当社は、東武グループの一員として、事業環境の変化に迅速に対応しながら収益を上げる経営体質を目指しています。東武グループが昨年3月に開始したEC モール「TOBU MALL」では、これまで取り扱いのないデジタルチケットを販売し、好評いただきました。7月の新型特急スペーシア X」運行開始では、池袋本店・船橋店それぞれが知恵を絞った催事や全館施策を実施することで、スペーシアX運行開始をグループの一員として全社的に盛り上げることができたと考えています。

 池袋駅西口地区再開発事業については、昨年、国家戦略特別区域の都市再生プロジェクトとして認定され、東武鉄道株式会社が事業主体の一員に決定いたしました。当社は、東武グループの一員として、東武鉄道と密に連携し、将来の駅中核を担う商業施設像を模索しています。

 船橋地区でも新たな街づくりが進んでいます。JR南船橋駅南口では公民連携による開発が進み、ショッピングモールが開業、春には大型多目的アリーナが誕生予定です。商圏内での施設整備が続くことで、地域全体の活性化が見込まれます。 当社も地域の一員として、遅れることなく新たな魅力を提供し続けて参ります。

 お客様の買い方の選択肢も多様化した今、百貨店を取り巻く環境は転換期を迎えています。これをチャンスと捉え、商圏を広げ次世代の新規顧客・ファミリーなどに向けた施策により注力して参ります。皆様に、いつ来ても新鮮さ」「ワクワク感」を感じていただける店づくりを目指し、常にチャレンジし続けることが大切だと思っています。

 本年も、皆様方の益々のご支援ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申しあげます。

銀座の百貨店として国内外のお客様に一期一会の顧客体験の提供を積み重ね、「未来に希望の灯を灯す、すべてのステークホルダーが幸せになれる場の創造」に挑戦する

㈱松屋代表取締役社長執行役員 古屋毅彦

 世界では非常に大きな戦争・紛争が続き、エネルギー問題や気候変動に関連する問題、エネルギー価格や様々な原価の高騰、人手不足など、想定以上の事態が数多く起こっています。百貨店業界だけでなく、日本の社会も小売業も大きな変化の時代に直面しています。

 昨年を振り返りますと、長かったコロナ禍の行動制限が遂に終わりを迎え、やっと普通の生活に戻りました。

 同時に、お客様の消費行動も活性化し、数多くの海外のお客様も戻って来られました。当社におきましては、円安という外部要因があったものの、9月から銀座店の営業時間を1時間短縮したにもかかわらず、昨年の売上高はコロナ前を上回る大きな伸びを示しています。

 利益面でも好調に推移しており、通期業績予想も上方修正しました。

 営業時間の短縮につきましては、営業体制を充実させ、銀座らしいホスピタリティ溢れるお客様対応を行っていくことが最大の目的です。店頭における従業員の密度を上げ、時間当たりの生産性と売上収益を上げるという方針で実施し、売上は好調に推移しています。1月からは浅草店の営業時間も短縮しました。

 さらに、本年は浅草店が元日を、銀座店が1月2日を休業日としました。従業員がリフレッシュし、ワークライフバランスを向上させ、新たな1年のエネルギー源となるよう期待しています。

 一方で、社会の変化に対応し自己変革を遂げるには従業員の力を最大限に発揮することが重要です。そのためにも多様性を尊重するフラットな組織文化づくりに取り組んでまいります。

 百貨店の役割は、人々が豊かになるためのエネルギーを供給することです。当社で出合った商品やおもてなしによってお客様の毎日の生活が楽しくなり、笑顔や会話が増えることは素晴らしいことです。未来を創り希望を繋ぐためには、そうした商品や取組み、サービス、ホスピタリティが重要だと考えています。

 来期は中期経営計画における最終年度になります。その中で最も重要なのは百貨店事業の収益力強化です。

 百貨店事業については、2022年9月に営業体制の大幅な見直しを実施しました。これにより収益力は改善していますが、視点を変え、視野を広げ、視座を上げ、さらなる見直しを継続してまいります。

 当社はインバウンド比率が高く、世界のお客様に評価されている百貨店です。銀座と浅草に店舗を持つ私たちは、世界に通用する品ぞろえやおもてなしなど、世界基準(グローバルスタンダード)を目指すべきだと考えています。

 銀座の百貨店として国内外のお客様に一期一会の顧客体験の提供を積み重ね、引き続き中期経営計画のミッションである「未来に希望の火を灯す、すべてのステークホルダーが幸せになれる場の創造」に挑戦してまいります。

より一層皆様に愛される百貨店となれるよう、これまでの歴史や原点を振り返りながら将来の道を切り開く「シン・京王百貨店」として変革を続ける

㈱京王百貨店代表取締役社長 仲岡 一紀

 謹んで新年のお慶びを申し上げます。

 昨年は、新型コロナウイルスの5類感染症への移行により、経済活動の回復や4年ぶりに行動制限のない日常を取り戻す大きな転換点を迎えた年となり、その上、私たちにとっても、新宿西口の商環境の変化もあり、業績はコロナ前の水準まであと少しというところまで回復しつつあります。

 このような中、新宿店は本年11月におかげさまで開店60周年を迎えます。これもひとえにお客様をはじめ皆さまのご愛顧とご支援の賜物であり、心より御礼申し上げます。60歳は人間でいえば「還暦」であり大きな区切りの年です。新宿では、当社新宿店が立地する西南口地区のほか、長期間に渡る再開発計画が複数始動し、新しい時代に向かって街全体が大きく変革しようとしています。取り巻く環境が刻々と変化するなか、2024年は「温故知新」の精神で、より一層皆さまに愛される百貨店となれるよう、これまでの歴史や原点を振り返りながら将来の道を切り開く「シン・京王百貨店」として、次の10年、20年、そしてその先に向けて変革を続けてまいります。

 新宿店では、一昨年秋の全館規模の改装に引き続き、昨年は、食品フロアの改装を行い食領域の強化を図ったほか、新規の催事やPOPUPの展開、アプリ会員獲得の推進などに取り組み、多くのお客様にお越しいただきました。本年は開店60周年を好機と捉え、新宿駅直上のターミナル型百貨店として日常を彩る良品をご提供できるよう各階改装を行うほか、記念企画や商品の展開など、リアル店舗としての魅力度向上のため、各種施策を行い、お客様が何度でも足を運びたくなる店づくりを進めてまいります。

 聖蹟桜ヶ丘店は、郊外型百貨店として引き続き構造改革を進め、京王グループの力を結集して、地域密着のMD強化、ファミリー層のご来店促進などに取り組みます。また、昨年は、府中と立川立飛に新規サテライト店を出店し、ギフトといった百貨店の機能や手土産に代表される食物販など、地域のお客様のニーズに合わせた品ぞろえやサービスをより多くのお客様にご提供してまいります。そのほか、外商事業の営業力強化やEC事業の拡大など、多様化するお客様ニーズにお応えできるよう努めてまいります。

 将来に向けて、京王沿線を中心に京王グループ一丸となって、挑戦と進化を重ねてまいりますので、一層のご支援を賜りますようよろしくお願い申し上げます。

 本年一年の皆さまのご多幸を心から祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

社会から必要とされ、愛される企業であり続けるために、ステークホルダーの皆様との対話を通じて新たな価値を「共創」し、永続的な成長につなげる

㈱髙島屋代表取締役社長 村田善郎

 新春を迎え、謹んで新年のご挨拶を申しあげます。

 昨年は、5月に新型コロナウイルス感染症が5類に移行され、社会・経済活動において正常化が進んだことで、個人消費は着実に増加いたしました。さらに、物価と賃金の好循環による良いインフレ経済への転換に向けた機運が高まった年でもあったと認識しています。

 当社グループにおきましては、外部環境の変化に左右されない本質的な営業力強化とコスト削減に取り組み、業績は大幅に改善いたしました。昨年10月には京都髙島屋の隣接地に専門店ゾーン「T8」がオープンし、「京都髙島屋S.C.」が誕生いたしました。百貨店の伝統と専門店の革新が同一の商業施設に違和感なく共存する京都髙島屋S.C.は、当社グループのビジネスモデルの象徴であり、次世代に向けたチャレンジであります。

 本年は、現在の成長を一過性のものではなく、持続的成長の軌道に乗せていけるかどうかを左右する非常に重要な1年です。グループ総合戦略「まちづくり」の下、百貨店に加えて専門店、金融サービスやレストランなどのグループ会社が専門性を発揮するとともに、グループのシナジーを生かした商業施設運営を行うことで、リアル店舗ならではの体験価値を提供してまいります。また、お客様にご満足いただける体験価値を生み出し、提供していく主体は「人」であります。当社グループの経営理念である「いつも、人から。」にもあるように、「人」は当社にとって最も重要な経営資源です。お取引先従業員を含めた全従業員とのエンゲージメント向上により「人」の力を引き出し、当社グループと個々人がそれぞれ成長を実現していくための取り組みを推進してまいります。

 当社は、2031年に創業200年という節目の年を迎えます。当社が200年、そしてその先まで社会から必要とされ、愛される企業であり続けるために、ステークホルダーの皆様との対話を通じて新たな価値を「共創」し、永続的な成長につなげてまいります。

新たな価値創造事業会社(百「価」店)に生まれ変わる

㈱近鉄百貨店代表取締役社長執行役員 秋田拓士

 皆さん あけましておめでとうございます。

 新春を迎えるにあたり、謹んでお喜び申しあげます。昨年一年間、皆さんがそれぞれの職場において懸命に頑張っていただいた結果、本年度の業績は計画どおり推移し、2024年度を最終年度とする中期経営計画の数値目標についても、ほぼ近い数字を見通すことができました。改めて心から感謝の意を表したいと思います。

 さて、当社を取り巻く環境は、長期視点では国内の市場規模が縮小していくなか、今後に向けて、既存の百貨店事業モデルから大胆な変革ができるかどうかが求められています。

 そこで当社は、事業戦略の方針として、百貨の「貨」を価値の「価」に変えて、新たな価値創造事業会社(百「価」店)に生まれ変わります。

 その主な戦略として、中期経営計画の4つの基本方針に基づき、まず一つ目に、旗艦店である本店では、都市型総合百貨店へと進化し続けるため、ラグジュアリーブランドの強化や、各売場の改装に積極的に投資するとともに、あべの3館体制の再構築に向けて取り組んでおります。

 二つ目に、地域中核店・郊外店のタウンセンター化、ローコスト店舗運営を推進していくために、上層階へは専門店を、低中層階には高収益事業である自主・フランチャイズ運営売場を積極的に導入するなど、さらなる収益構造改革を進めています。

 三つ目に、フランチャイズ事業の強化、拡大を推し進めており、新たにレストラン事業にも積極的に進出しています。フランチャイズ事業の運営店舗は今や22業種、59店舗まで拡大し、2024年の目標売上高150億円を前倒しで達成できる見込みです。

 四つ目は、SDGsの観点に基づくESGの取組みです。沿線価値の向上や地域活性化への取組みを推進していくために、地域とともに農業事業に積極的に取り組んでいます。具体的には河南町での「いちご」の生産事業に取り組み、昨年12月には「はるかすまいる」というブランド名で販売することができました。このように、川上戦略として、生産から販売までに関わる新しい事業モデルを構築し、高収益化を実現していきます。

 また、地球環境への貢献として、未来に向けて、地球環境を守り、次世代へ持続可能な社会を実現していくことは、私たちの使命であります。当社では、2030年までに温室効果ガス排出量を、2015年対比で50%削減、また食品ロスの削減に向けて、廃棄物排出量を、2019年対比で20%削減することを目標としています。

 そのほか、人的資本経営として、多様性を尊重した働きやすい環境整備と人財の育成にも重点的に取り組みます。

 昨年は、女性活躍推進法に基づき、まずは育児短時間勤務者の在宅勤務制度の充実や育児保育支援手当の新設などを実施してきました。

 本年については、抜本的な人事制度改革に取り組みます。仕事の「役割」「責任」を重視した、年功型から成果主義型への改革に着手し、今後のマネジメントラインの活性化を強化していきます。

 そして当社の従来の枠組み、事業領域を超えた変革を推進していくために、百貨店グループ各社はもとより、近鉄流通グループ各社との連携、協業に積極的に取り組んでいきます。さらには近鉄グループである鉄道、不動産、ホテル、旅行、レジャーなどの各社の全体戦略ともより一層の連携強化に努めてまいります。

 また、大阪・関西万博やIRに向けても、今後も近鉄グループ一体となって積極的に取り組んでいきます。

 終わりになりましたが、本年3月に、あべのハルカスは、早いもので開業10周年を迎えます。あっという間の10年でありましたが、これを機に再出発して行くためにも、様々な取組みに全社一丸となって邁進していきたいと考えています。皆さんの力の結集に期待するとともに、皆さん方ならびにご家族のご健康とご多幸を祈念して、年頭のあいさつといたします。