デパート新聞 第2714号 – 令和5年7月15日

5月全国は6.3%増

 日本百貨店協会は、令和5年5月の全国百貨店(調査対象70社、181店〈2023年4月対比マイナス±0店〉)の売上高概況を発表した。売上高総額は4111億円余で、前年同月比6・3%増(店舗数調整後/15か月連続プラス)だった。

百貨店データ

神奈川各店令和5年月商品別売上高

令和4年度百貨店各社決算報告

  • ㈱松屋
  • Jフロントリテイリング㈱
  • ㈱近鉄百貨店
  • ㈱髙島屋
  • ㈱井筒屋
  • ㈱大和
  • ㈱丸井グループ
  • ㈱三越伊勢丹ホールデイングス
  • エイチ・ツー・オーリテイリング㈱

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 津市の七夕祭の行事で、笹流しというものがある。7月7日の夕刻、市街を流れる川を一部網で堰き止め、願いを込めた笹を流すという趣向だ。

 20年ほど前からスタートしたこの行事に、どこから溢れてきたのかと思うほどの人々が集い、道端には数珠つなぎに露店が立ち並ぶ。日頃は夕方には、ほとんど人も通らない国道沿いの道がこの日ばかりは、新宿・原宿並みに様相を変えるのである。

 七夕という故事にちなんだとはいえ、21世紀に生れた行事がこれだけ支持を受ける光景を見ると、人をワクワクさせるイベントのアイデアは、まだまだ考えていけるのではないかと勇気が湧いてくる。

島根県一畑百貨店 2024年1月閉店へ デパート空白県 山形、徳島に次ぎ3番目

 本年6月13日、島根県唯一の百貨店、一畑(いちばた)百貨店(松江市)は、65年の歴史に幕を閉じ2024年1月14日(日)に閉店すると発表した。一畑百貨店が閉店すれば、島根は全国3番目の「デパート空白県」となる。

 1958年10月一畑電気鉄道が一畑百貨店を松江市に開業した。1998年4月にJR松江駅前に移転後、2002年3月期には売上高は108億円に達するなど地域経済の中心として、また地域に密着した百貨店として歩んできた。

 その後、エリアの人口減少に加え、大型ショッピングモールが松江市、出雲市に出店したことや、ネット通販の台頭による競争が激化した中で、新型コロナウイルス禍が打撃となった。大手アパレルや化粧品などテナント30店が相次いで撤退し、メインの松江店の売上高は、ピーク時の2 0 0 2 年3 月期の108億円から、2023年3月期には43億円とピーク時の4割に落ち込み、2014年度以降9年連続の赤字となった。

 テナント誘致や、経営体質の改善などによる店舗継続を模索したが、松江市(人口20万6千人)の商圏と単独店の力では有名店の誘致は難しく、今後の経営改善が見込めないと判断し閉店を決めた。親会社の一畑電気鉄道グループも新型コロナ禍により連結で赤字(本年6月23日発表の2023 年3 月期決算では6億3900万円の赤字。赤字は5期連続)となり、百貨店の赤字を吸収するには限界があった。

 売り場面積は1万4千13平方メートルで、一畑電気鉄道の所有ビルの1階から6階に入る。従業員118人は一部を除いて来年1月末で解雇となる予定で、一畑電気鉄道が中心となり一畑グループ他社などへの再就職を検討する。

 その先の課題は跡地の活用で、松江市の上定市長は、今後のまちづくりについては、百貨店が閉店を決めた事実を受け止めたうえで、松江駅前の再整備を含む中心市街地の活性化策の検討を官民一体で連携して進めたいとしている。

 中国地方では、郊外のショッピングセンターを選ぶ家族連れが多いことに加え、コロナ禍が集客力の低下に追い打ちをかけ、天満屋アルパーク店(広島市、天満屋本社は岡山市)、尾道福屋(尾道市、福屋本社は広島市)や、そごう広島店新館(広島市、そごう・西武本社は東京都)など百貨店の閉店や縮小の動きが続いている。(表参照)

 一方、全国的に見ると、国内富裕層に加えて東南アジアなどからのインバウンド(訪日客)が高級ブランド品を買い求める動きを背景として、東京、大阪、名古屋等の都市部にある大手百貨店は好調で特に高額品の販売の伸びが続いている。こうした中で、地方の単一店が、高級ブランドを扱うには多額の投資が必要で、非日常の演出を行うことが出来なくなってきている。

 消費者の選択肢は多様化してきており贈答品や特別な日の食品は百貨店で買うが、日用品はスーパーやドラッグストアやネット通販で買うというように変化してきた中で、魅力あるコンテンツや仕掛けをどう作り出して人を集めるのか、人材を育成して従業員の接客レベルを上げ、信用力を高め顧客との絆をどのように強くしていくか、本来の百貨店の力が問われている。

一畑百貨店沿革

1958年10月 松江に開店

1965年12月 出雲支店店舗拡張

1981年4月 松江店の店舗拡張

1982年9月 松江店の新館完成

1986年8月 百貨店事業を一畑百貨店に譲渡

1998年4月 松江店をJR松江駅前に移転オープン

2001年9月 出雲店跡地に複合ビル竣工 一畑百貨店入居

2008年9月 創業50周年記念式典、祝賀会開催

2013年6月 買い物弱者対策支援事業として出張販売事業開始

2015年4月 一畑家百貨店と(株)いずも統合 (一畑百貨店存続会社)

2021年3月 ゆめタウン出雲店オープン

2023年6月 2024年1月14日閉店 発表

出典:一畑グル-プHP 沿革

中国地方での百貨店閉店・縮小・再編の動き

2020年1月31日天満屋アルパ-ク店(広島市)閉店

2020年3月1日 米子高島屋から店名を改めたJU米子高島屋(米子市)がスタート

地元企業が高島屋から経営を継承

2022年6月22日そごう広島店新館(広島市)2023年夏閉館を発表

2023年5月8日尾道福屋(広島県尾道市)2024年1月14日閉店を発表

2023年6月13日一畑百貨店(松江市)  2024年1月14日閉店を発表

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