デパート新聞 第2707号 – 令和5年4月1日

2月東京は20.4%増

 日本百貨店協会は、令和5年2月東京地区百貨店(調査対象12社、22店)の売上高概況を発表した。売上高総額は1111億円余で、前年同月比20 .4%増(店舗数調整後/18か月連続増)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭25.1%増(90.4%)、非店頭マイナス11.0%(9.6%)となった。

百貨店データ

  • 都内各店令和5年2月商品別売上高
  • 関東各店令和5年2月商品別売上高
  • 2月店別売上前年比(%)
  • 3社商況2月
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 日本のために開催してくれたのではないかと思うほど、楽しかったWBCが終わった。それぞれの職場に戻って、来たるシーズンインに向けて準備を始めた選手たちの姿を見て、祭りの後の喪失感を感じてしまう。

 準決勝、決勝で戦った監督の敗戦の弁からは、スポーツの持つ清々しさが一層募る。九分どおりの勝ちゲームを落としながら、メキシコのギル監督は一切愚痴めいた言葉を発しなかった。アメリカのデローサ監督は「野球界の勝利だ」と論じた。

 不安極まりない昨今の世界情勢の中で、国際人として相手をリスペクトする心遣いは、たまらなく素敵に見えてくる。やはりスポーツは無敵である。

津松菱の店休日確保は誰のためか地方百貨店に秘策あり – 松菱百貨店

 近年の百貨店の年間店休日数は大手については元旦のみか年中無休である。地方百貨店も軒並み大手並みであり、多いところでさえ5日前後である。その中において、津松菱(三重県津市代表取締役社長谷政憲)は今年度も29日と突出して多い。前(年度は27日)この背景には何があるのか。
営業本部長の川合正常務取締役に聞いた。

(記者)
「かつて百貨店には、店を開ければ開けた分が売り上げになると言われた時代がありました。そこから店休日が減っていったのですね。」

川合常務

(川合常務)
「私が入社した40年前の百貨店業界は、正月2日までは休んでいましたが、やがて元旦のみの店休日になりと段々減っていきました。それは店を開ければ開ける程、開けた日数分、店頭の売り上げが増えるだろうとの単純な計算式だったと思います。 当社も例外ではありませんでした。年間店休日数は平成10年に30日、平成11年は34日ありましたが、平成13年には25日へ、翌年には23日へと徐々に減らしていきました。地方と都市部では状況は全く異なっており、全国的に見ればまだまだ高水準ではありましたが。

 更に、平成16年には何がなんでも売上を増やさなければならない状況下において、店休日数をそれまで推移していた年間20数日台から一気に12日(月1回の店休日) まで減らして営業日を増やしました。営業日を増やせば店頭売上が上がるんだとの考え方の元、店休日数を減らしたのです。

 当時の新たな経営陣の方針でしたが、我々の元々の考え方は出勤率が悪くなったらサービスが低下するとの考え方で、また、そこまでしてしまうと勤務ローテーションが組みにくくなる可能性があると申し出ましたが、先ずは一度やってみようとのことになり、店休日を12日まで一気に減らしました。しかし、固定客比率が高い当社は、営業日が増えた分売り上げが増える訳ではなく、結局、その前後の日の売上が減るだけでした。

 逆に「あの日に店に行ったのに、あの社員さんはいなかった。」、「馴染みのスタッフがいつ行ってもいない。」等とお客様からクレームが出るようになってしまいました。

 売上は変わらずにクレームが増え、売り逃しにも繋がった可能性も考えられます。

 駅ビルなら年中無休は有効かもしれませんが、当社は駅からも離れており、固定顧客ニーズが高い。固定顧客比率が高いことを考えると固定顧客つまり馴染みのお客様がお越し頂いた時にきちんと対応できる方が大事との考えから、店休日数を翌年の平成17年には元の水準(23日) に戻しました。」

(記者)
「クレームが増えてしまった教訓を生かし、顧客満足を高める手段としての店休日確保があるのですね。」

顧客との接点を増やし売り逃しの防止

(川合常務)
「当社は三重県の地方百貨店ですから、元々ひとつの売場に対して人員を沢山かけられませんが、百貨店としてきちんと接客をし、きちんとコンサルティングをさせて頂き、価格以上の価値を感じて帰って頂く。それにはスタッフが極力常駐している体制を取れる事が重要です。つまり、顧客重視(CS) と従業員満足(ES※)の両面を考えた『顧客との接点を増やす。』ことが根本的なスタンスです。それは売り逃しの防止にも繋がります。
その観点から、業界的には店休日を減らし、それこそ年中無休だと言われた時期がありましたが、その様な時期でも当社はそれに逆行する形で店休日を確実に取りましょうとしました。そして、営業日はスタッフが極力お客様の対応がきちんとできる体制を作りました。また、当社での一人ひとりの仕事は結構な量があります。その状況になると中には休みにくい場合も出てきますが、店休日を設ければ安心して休めますね。そのような社内ESの部分を含めて店休日を増やしたのです。
お客様との接点を増やすイメージとして数字的には、年中無休であればスタッフは通常週5日勤務なのでランダムに店を訪れる顧客との接触率は7分の5になってしまいますが、仮に週1日の定休日を設定した場合、それが6分の5に向上する事になります。

(記者)
「松菱の理念に『松菱は、最高のサービスと最良の商品を提供することによって、お客様の安全で豊かで幸せな生活に貢献をします。松菱は、すべての従業員の人間性を尊重し、従業員一人一人が活き活きと働き、幸せな人生を送ることが一番重要であると考えます。』とあります。この従業員を大切にする姿勢が高水準な年間店休日の確保にも反映されていると思います。」

スタッフはお客様との関係性を築いてくれる宝物。だからスタッフが一番大事。

(川合常務)
お客様は商品が欲しければ、商品を買いたい時に、どのツールで買おうかとなると思いますが、欲しいものが決まっていればネット通販で買うのは普通の流れでしょう。百貨店は接客が基本であり、楽しみながら百貨店でお買い物をして頂く、そのようなお客様にたいして対応するのはスタッフなのです。接客が基本の百貨店にとってスタッフは百貨店の中で一番大切であると思います。例えば一万円の商品をその商品以上の価値を感じてお買い求め頂くことが百貨店の仕事だと思います。お客様の満足は金額で言えるものではなく、金額以上だとか金額以下だとかと感じることがあると思います。下手な接客をしたら「ネットで買ったほうがよかったわ!」「ここで買って気分悪くしたわ。」と言われるケースもあるでしょう。逆に、「ここで勧めて貰って買ってよかった!」。「買う気が無かったけれど、あなたに勧めて貰ったあの洋服が、お友達のお呼ばれに行った際に皆から誉めて貰った!ありがとう」とお客様から感謝のお言葉を頂くケースもあります。百貨店の中で一番大事なのはお客様との関係性です。その関係性を築いてくれるのはスタッフさんなのでそれはやはりスタッフさんを一番大事にしなくてはならないと思っています。」

(記者)
「これまでにお聞きしてきたことは、顧客もスタッフもそして松菱自体もウィンウィンになれる商環境の創出、という理想のデパート= 公益を考えた『みんなのデパート』像ではないでしょうか。まさに『先義後利』であり、『三方一両損』どころか『三方一両得』ですね。本日はありがとうございました。」   

(敬称略)

※ESとは、福利厚生やマネジメント、職場環境、働きがいなどについて社員の満足度を表す指標を意味する。
「Employee Satisfaction」ES(エンプロイーサティスファクション)

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