デパート新聞 第2705号 – 令和5年3月1日

池袋にデパートの公益文化を根づかせた巨人 高野之夫 豊島区長 急逝(令和5年2月9日)6 期24 年

 西武池袋本店のある豊島区の高野之夫区長は、昨年12月14日の会見で、百貨店「西武池袋本店」などを運営する「そごう・西武」が投資ファンドへの売却決定を受け、「西武池袋本店は池袋の顔であり、街の玄関である。」として、西武池袋本店の存続を訴える嘆願書を株式会社西武ホールディングスの後藤高志社長に提出したことを明らかにした。

 高野区長は、昨年12月5日付けの嘆願書において、『「西武池袋本店」を運営する「そごう・西武」の売却先が、米投資ファンド の「フォートレス」・「ヨドバシ HD」連合に決まったとの報道を受け、大きな衝撃を 受けています。今後、どのようなかたちにせよ、大型家電量販店の「ヨドバシカメラ」 が現在の西武百貨店の低層・主要部に出店することが想定されます。』と述べ、『「西武池袋本店」は、池袋の顔であり、まちの玄関です。また、「フォートレス」と連携する「ヨドバシHD」の低層部(1階~4階)への出店に対して、断固とした立場を貫き通していただき、 これからも、「西武池袋本店」の存続に向けて、後藤社長のお力添えを賜りますよう、 心よりお願い申し上げます』と結んでいる。

 本誌は常日頃、デパートの「公益性」について論じている。街とデパートには公益性の観点が不可欠である。この側面から高野区長の西武池袋本店への思いを伺った。

「高野区長にとって、豊島区はどのような存在ですか。」

(高野区長)
 私は、池袋に生まれ育ち、このまちを愛するがゆえに、区長になり、生涯を通して、池袋、そして豊島区の発展に命をかけてきました。池袋駅前は、戦後爆発的なエネルギーで巨大な闇市が出現し、新宿、渋谷と肩を並べるほどの大繁華街に発展してきました。しかし、生きるための無法地帯、闇市の「暗い、怖い、汚い」というイメージが植え付けられ、戦後70年経ってもそのイメージがなかなか払拭されません。

 区長になって6期24年間、財政破綻の危機や消滅可能性都市の指摘等のピンチを乗り越え、区民が夢と希望を持てる「国際アート・カルチャー都市構想」を打ち出し、長い時間をかけ、一歩ずつ文化によるまちづくりを進めてきました。こうした信念が結実し、池袋は東京の中でも存在感のある「価値あるまち」に大きく変貌しました。今では、「文化と経済の好循環を創出するモデル都市」として、文化庁からも高い評価を受けています。

「豊島区、豊島区民、高野区長にとって、西武池袋本店はどのような役割、価値があると考えていますか。」

(高野区長)
 「西武池袋本店」は、池袋の顔であり、まちの玄関です。1970年代に個性あふれる独自路線で一世を風靡した「セゾン文化」の伝統を今に受け継ぐ唯一無二の存在です。「文化」を軸に人々を惹きつけるその経営は、池袋のまちの品格と風格を創りあげるうえで、大きな役割と使命を担ってきました。これまで進めてきた池袋の文化戦略の一翼を西武鉄道のターミナルである「西武池袋本店が地域と共に担い、牽引してきたのです。

「これまで西武池袋本店と区はどのような連携をされてきましたか」

(高野区長)
 2022年に豊島区は区制施行90周年を迎えました。これを記念して、昨年10月から「豊島大博覧会~過去から学び、今日を生き、未来へ希望~」を開催しています。メイン会場となる豊島区立郷土資料館では、豊島区における90年の歩み、文化によるまちづくりのもと目覚ましい変貌を遂げた現在、100周年に向けた未来像をジオラマや300点以上の歴史資料、美術・文学作品などを用いて展示しています。

 初日には900名以上の方が来場され、1984年に郷土資料館が開館して以来かつてない程の大反響、大盛況となっていますが、この豊島大博覧会の告知を「西武池袋本店は豊島区とともに」というメッセ―ジを添えて、店舗壁面バナーで大宣伝してくださるなど、区の取組みについて、館をあげて応援してくださいました。これは本当に嬉しかったですね。

 他にも、2017年にはFFパートナーシップ協定を区内第1号で締結高野之夫区長「豊島区提供」し、区と連携した子育てや育休復帰セミナーの開催、ダイバーシティ講演会やミュージックライブ等の会場提供など幅広い分野でご協力をいただいています。

「西武池袋本店への家電量販店の出店が予想されていますが、デパートと共に池袋のまちの価値を認識し、守り、発展させるにはどのような取り組み方が相応しいでしょうか。」

(高野区長)
 池袋の顔であり、玄関である「西武池袋本店」の低層部へのヨドバシの出店は、「池袋=家電のまち」のイメージを強めるばかりでなく、富裕層を含む幅広い社会層の人々や伝統から先端的文化、生活文化など、これまで育んできた池袋の文化や池袋全体のまちづくり構想を壊しかねません。

 豊島区は、「国際アート・カルチャー都市」「SDGs未来都市」「ウォーカブル都市」を目指し、アートの力でまちを変革しようとこれまで、まちの人々と一緒になって、まちづくりに取り組んできました。池袋の「暗い、怖い、汚い」イメージはなかなか払拭されませんが、池袋の顔であり、玄関でもある「西武池袋本店」は、来街者の第一印象を決めるといっても過言ではないほど、大変重要なのです。ヨドバシの池袋出店に反対している訳ではありませんが、今まで地域と協力し、牽引してきたものをぜひご理解いただき、整合性をもって、まちづくりに参加していただきたいと考えています。

(敬称略)

*お断り*
 豊島区の高野之夫区長は、2月9日にご逝去されました。心 よりご冥福をお祈り申し上げます。このインタビュー記事は、生 前、豊島区広報課を通じて質問形式で取材をし、2月6日にご回答を頂いた内容をまとめたものです。

高野 之夫(たかの ゆきお)区長 経歴

昭和12年12月25日生 豊島区生まれ
豊島区立池袋第五小学校(現池袋小学校)卒業
昭和35年3月 立教大学経済学部経済学科卒業
昭和58年5月~平成元年6月 豊島区議会議員(2期)
平成元年7月~平成11年3月 東京都議会議員(3期)
平成11年4月 豊島区長に就任

1月東京は19.6%増

 日本百貨店協会は、令和5年1月東京地区百貨店(調査対象12社、23店)の売上高概況を発表した。売上高総額は1268億円余で、前年同月比19・6%増(店舗数調整後/17か月連続増)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭21・8%増(91・6%)、非店頭0・3%増(8・4%)となった。

百貨店データ

  • 都内各店令和5年1月商品別売上高
  • 関東各店令和5年1月商品別売上高
  • 1月店別売上前年比(%)
  • 3社商況1月
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 ウクライナ侵攻やインターネットを使った大規模な強盗事件、更にトルコの大地震など辛い話題が国内外で後を絶たない。世の中が重苦しい分だけ春の声が聴こえてくると、心 が明るくなる。

 今年は、卒業式などもマスク無しで開催されるようである。お互いの顔をしっかり確認して、旅立つことができるという一事を聞くだけでもうれしくなる。そして、ワールドベースボールクラシックだ。

 スポーツは文句なく、人の心をわくわくさせてくれる。しかも、史上最強という日本チームが世界の強豪が集まる祭典で雄姿を見せてくれるのだ。縮こまった日本人の心が解れ、大袈裟でなく明日への希望の灯が膨らむことを期待したい。

デパートのルネッサンスはどこにある? 2023年03月01日号-64 デパートは絶滅危惧種

 コロナを機に新宿小田急、渋谷東急など、特に電鉄系百貨店の「撤退」が相次いでいる。いや、訂正しよう、コロナ禍以前から閉店は相次いでおり、コロナが閉店危機を「加速させ」その「きっかけ」となる場合が増えた、というのが正解だ。
この事象は、2022年売上高1位の伊勢丹新宿本店(2536億円)、2位の阪急うめだ本店(2006億円)に次いで、売上高3位を占める西武池袋本店(1540億円)であっても、閉店(少なくとも縮小)の危機にあるという事が証明している。

 この問題の核心は、この連鎖がデパート業界全体に、地方、郊外を問わず、もっと言えば売上の好不調さえ問わずに、どの店であっても、閉店の可能性がある、という実態を顧客に知らしめた事だ。 

 電鉄系百貨店、と名指しにしたが、呉服屋を起源とする、三越伊勢丹や大丸松坂屋、髙島屋といった大手老舗百貨店各社も「安泰」であるわけでは決してない。 

 本紙1月15日号の4面に掲載した百貨店消滅マップ(本当はデパート存続全国地図)によれば、2 0 0 9 年に全国に257あったデパートは、88減少し、2022年には169になった。たったの13年間で全国のデパートは2/3に急減してしまったのだ。 

 その中には百貨店の代表である三越がクローズさせた新宿と池袋も含まれている。老舗が超都心店を閉店させた顕著な例と言える。 

 三越と伊勢丹が合併し、重複拠点の整理を行った、あるいは自社ビルか借物件かなど、閉店に至った様々なケースは想定されるが・・ 

 さて、本題である渋谷の東急本店の閉店を見て行こう。言うまでもなく、新宿小田急同様、都心の中の超都心立地だ。

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英雄たちの経営力 第6回 平清盛 その4

全文は 連載小説 英雄たちの経営力 第6回 平清盛 その4 を御覧ください。

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