デパート新聞 第2665号 – 令和3年6月1日

4月東京は186.2%増

 日本百貨店協会は、令和3年4月東京地区百貨店(調査対象12社、24店)の売上高概況を発表した。売上高総額は861億円余で、前年同月比186・2%増(店舗数調整後/2か月連続増)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭335・0%増(89・4%)、非店頭マイナス26・4%(10・6%)となった。

百貨店データ

  • 3社商況4月
  • 4月店別売上前年比(%)
  • 都内各店令和3年4月商品別売上高
  • 関東各店令和3年4月商品別売上高

人事異動

  • ㈱東武百貨店
  • ㈱髙島屋

地方百貨店の時代 その17 – 外商顧客の活用

デパート新聞社 社主
田中 潤

  デパートでは、外商という名称で、店内で商売をするだけでなく、顧客の自宅を訪問することを前提とする部門がある。販売する商品は、店内の商品がメインであることは当然であるが、顧客の要望に応じて外商員(外商を行なうデパートの従業員)が店外から商品を探し出してくることも多い。

 外商顧客がステータスであった時代には、顧客が来店するとすぐさまインフォメーションから外商員に連絡が行き、顧客のお供で売場廻りをして購入する商品を取りまとめ、最終的に顧客は手ぶらで帰り外商員が後からお届けするという、風景が頻繁に見られた。明日の外出着にするので、「必ず、今日中に」などと顧客に念を押されて、車で急行するのである。

 外商顧客は個人ばかりでなくて法人もある。しかも、売上額はむしろ法人の方が多い。会社の創業20周年の記念品や新築の際の備品一式など、会社の一大行事や特定の事業に伴って大きな売上が計上されることになる。この時扱われる商品は外商員が直接問屋と交渉した特別なものが多い。金額も外商顧客としてどのくらい力を持っているかで変わってくる。外商員は、デパートの社員でありながら、デパートを拠点として自らの才覚で様々な販売を仕掛けたのである。

 高度経済成長が終わり、景気よく物を買ってくれる顧客は減少した。特に、企業はそういうお金の使い方をしなくなった。結果的に、デパート経営者は外商の活動を、重要視しなくなってしまった。外商部門を縮小 し、一人の外商員に沢山の顧客を持たせて、顧客一人あたりに対する外商員の活動を狭くしてしまった。コミュニケーションの根を自ら引っこ抜いてしまったのである。

 こうした方針は、地方百貨店においては致命的である。限られたパイの中で、確実にデパートの業績に寄与してくれる顧客は何を置いてもキープしなければならない。今、改めて外商員の役割を再評価し、顧客とのコミュニケーションを深めていくためのファクターとしていくことが肝要である。

画像に alt 属性が指定されていません。ファイル名: oboro-300x292.png

 グーグルやアップルなどGAFAと呼ばれる情報を牛耳る超大手企業が、コロナ禍の世界経済で更に存在感を高めている。個人情報という無償で得た商品を使って、利益を上げている構図はそろそろ改めていくべき時ではないだろうか。

 例えは悪いが、昔は屑屋が各家庭の紙ゴミ、家電ゴミなどを有償で引き取っていた。GAFAなども情報を提供した個人にお金を払うようにするのが一法だと思うが、今度は各社からのサービスの提供に差しさわりが生じるかもしれない。

 そこで、情報企業は個人の情報を巧みに無償で得ていることに着目し、ここに課税をすることが最も公平な制度となるのではないだろうか。利用者一人当たり10円というようにすべての国の国民一人一人を基本に国際的に同一基準で実施するのである。 世界共通課税の実現は、国際融和にも寄与すると思うのだが。

無駄の物語 part13

犬懸坂祇園
作詞、作曲などをしております

 フランスの大統領を務めたミッテラン氏が大衆への呼び掛けで、こんなことを言っていた記憶がある。「大切なのは勇気ではなく、無関心でないこと」

 マザーテレサは「愛の反対は憎しみではなく無関心だ」とも言っている。無関心の意味を紐解くと、「そのことに関心がないこと。気にもかけないこと。」とある。この解釈だけを見ると、別にそれほど悪いこととは思えない。表面的には悪くないことの方が、実は深刻なこともある。ここでは、「気にもかけない」というのが、心の暗さを秘めた考えとなってくる。人と人とのコミュニケーションにおいて、相手のことを気にもかけないということは、最も危険なことと思われるからだ。

 筆者の解釈では、なぜ気にもかけないのかというと、自分にとって利益がないことだと判断したからに他ならない。人々の行動にこうした弊害が生れてきたのは資本主義にしろ、社会主義にしろ、生産性のない活動を否定してきたツケと言わねばなるまい。人々の営みの中に、合理主義的思考が深く根を張ってしまっているのである。

 無関心を如何に変えていけるかは、人の心の中に巣くった利益優先の概念を辛抱強く解消していくことが出来るかどうかにかかっている。無駄だと思っていることを意識して行う勇気が、日々のコミュニケーションの中で問われるのである。その意味で言うと、ミッテラン氏の言葉は「勇気をもって、関心を持つことが大切」ということになるのだろう。

 大事なのは、相手と言葉を上手に交すかどうかということではない。相手の立場を強く意識してそれに対する自分の行動を合理的思考に捉われずに行っていくということである。相手の立場を尊重し敢えて何もしない、ということもあるだろうし、過剰なくらい係わるということも少なくないだろう。

 自分にとっては無駄なことを相手のために進んでやるというその思想からは、無関心とは対極にあるもう一つの言葉「思いやり」が、くっきりと浮かんでくるのである。

連載:デパートのルネッサンはどこに有る? – コロナ禍の1年 百貨店の今 2

『緊急事態宣言の再延長は不可避』

三越伊勢丹に続き松屋も、都の要請により高級ブランド店を再び休業

 三越伊勢丹は都内4店舗のラグジュアリーブランドの売場を5月23日から再び休業した。松屋も24日から店内のブランドショップを休業。尚、そごう・西武は既に20日から休業している。

 東京都によるラグジュアリーブランドへの直接休業要請を受け、百貨店とブランド各社が協議した結論が「再休業」だ。17日以降、都はラグジュアリーブランド側に対し、路面店の休業要請の働きかけを始めたのだ。

 これまで百貨店やショッピングセンターに限られてきた休業要請が、ラグジュアリーブランドの大型旗艦店などに波及している。都知事の執念を感じる一幕だ。

 因みに、大丸松坂屋百貨店の5月21日のホームページを見ると、「政府から発出された緊急事態宣言とそれに伴う都道府県知事からの要請にもとづき、当該地区の店舗の営業時間ならびに営業範囲を以下の通り変更させていただきます。」としている。

続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年06月01日号 を御覧ください。

特別寄稿 NY視察2019から見る、百貨店のさらに恐ろしい未来

第5章の2 – ニューヨーク郊外ショッピングモールの衝撃その2

株式会社クリック&モルタル
代表取締役 大和 正洋

 今回は、前回に引き続きガーデンステートプラザを見てきます。

飲食店

レストランエリアには有名で魅力的なレストランが多く、繁盛しておりました。
チップ文化のアメリカならではの特徴でしょうか、やはり、ウェイター・ウェイトレスがいる店舗は活気があります。彼ら・彼女らがお店を盛り上げています。

 一方フードコートは、ナショナルブランド中心のテナント構成になっており、集客力がすこし弱く感じました。訪問した日は金曜の夕方ということもあり、モール内にはそれなりに客がいましたが、フードコート内は空席が目立ちます。フードコートで軽く食事を済ますというよりも、レストランで楽しく、ゆっくりと食事を召し上がる人が多いのでしょう。フードコートでの店舗経営は簡単ではないように思いました。

続きは 特別寄稿 NY視察2019から見る、百貨店のさらに恐ろしい未来 第5章の2 を御覧ください。

デパート新聞 紙面のロゴ
昭和24年10月創刊
百貨店に特化した業界紙
デパート新聞 購読申し込み