税と対峙する – 46

平成19年01月15日号(第2334号)

支払った配当は、法人税の免除を。
増配こそ個人消費に一気に火をつける。

 昨年末に与党の平成19年度税制大綱が発表された。国会の審議を受け、4月から施行される見通しである。利益をあげている中小企業に対して課される留保金課税が廃止されたのは朗報だが、景気回復につながる個人消費を盛り上げる減税策は全くといっていいほどなかった。減価償却に関する残存価額制度の廃止も大企業の優遇であり、弱者にはほとんど影響はないものだ。

 さて、企業と個人を結びつけている中にもっと効果のある減税策はないだろうか、そう、税制改正がどうしても必要なもの──それは、企業が配当を出した場合の優遇措置である。企業が支払った配当が経費になってくれれば最も明快なのだが、配当は利益の処分という性格上、収入を得るために使う経費とはいえず、会計上、これを押し通すことは難しい。

 それでは、税制でどうにかしてしまえばよいのではないだろうか。法人税は、企業があげた利益に一定の調整を行なったところの所得に対して課される。実効税率は40%程度である。配当は経費にならないので、この所得を構成している。

 つまり、配当は所得の中から支払わなければならないのである。たとえば、所得が100なら、税金は40(概算、以下同)であるが、配当を10支払ったとしても税金の額は変わらない。企業の手取り(内部留保)は100‐40‐10=50になるのである。配当をしなければ、企業の手取りは100‐40=60である。

 企業としては、配当分は丸々社外に流出してしまうので、支払いに慎重にならざるを得ない。ではもし、配当した分の所得には課税しないということになったらどうなるだろうか。右記の場合、配当を除いた100‐10=90に対して40%の税率が課されることになり、税金は36。つまり、企業の手取りは100‐36‐10=54。先の場合と比べ、税金は4減り、手取りは4増えることになる。つまり、配当を経費にしたことと同じ効果が得られるわけである。

 こうなれば企業ももっと積極的に配当に取り組むだろうし、配当が増えれば個人はその企業にさらに投資をする。また、配当は臨時の収入である。それが増えることで消費者の消費意欲を活性化していくという好循環が期待できる。もちろん、税逃れを防止するために、配当できる金額に一定の限度を設けるなどの措置は必要だが、基本的に、配当が増えれば個人の所得は増え、所得税も確実に発生するわけだから、国にとっても決して悪い話ではないはずだ。是非、次回の税制改正には、一考して欲しいものである。