税と対峙する – 45

平成18年12月15日号(第2332号)

大をより大きくする税制改正はご免だ
零細企業を助ける税制改革が急務

 平成19年度分の税制改正が大詰を迎えている。昨年は抜き打ちで、代表者の給与の内、法律で定められた一定の必要経費分を法人の経費として認めず、所得として加算するという大改悪があった。これはまさに、零細企業をターゲットとしたものであり、来年以降決済を迎える企業はいよいよその適用を受けることになる。大幅に増税になる会社も少なくない(この細かい内容は、本紙ホームページ「税と対峙する43」で閲覧可能)。

 今年もまた、こうした弱者いじめが唐突になされないことを祈りたい。景気回復はいざなぎを超え、極めて長く継続していると言われるが、この1年を振り返ってみても一般庶民には全く実感がない。飲食店などは前年対比で売上を落としているところも多く、物販の消費も伸び悩んでいる。

 特に問題なのは、景気の影響を享受している大企業を更に強くし、利益を上げさせるような政策が続いていることだ。国際的に競争力をつけさせようという御旗がばっこし、結果的に国内の中小零細企業を淘汰する流れは加速するばかりだ。

 税制では今回の改正の目玉である減価償却の100%実施案もその一つなのである。固定資産はその所得価額を使用する期間(耐用期間)において減価償却費として配分し、一定の金額が毎年経費とされる。但し、原行は取得価額の5%だけは残さなければならず、原価償却費として経費にできるのは95%である。これを100%にしようというものが、たいした固定資産を持たない小さな会社にとってこの5%など、ほとんど意味はない。また、赤字会社であれば、それこそ5%分が経費になろうかがなるまいが全く関係ないのである。

 では。どこがこうした改正を求めるのかといえば、沢山の設備投資をし、所得を伸ばしている大企業にほかならないのである。こうした会社は、この5%はたかが5%ではない。所得を大幅に圧縮し、減税の利益を受けることになる。景気の恩恵を受け儲けている大企業が、更に税制でも大きな利益を受けることになるのだ。

 こうした改正は、マスコミを通じて「日本と世界・グローバル・国際基準」などという心地よい表現で、一般国民に伝えられる。これは、ある意味で非常に怖いことである。この報道の裏にある小さな企業の存亡は、ほとんど評価されていないからである。

 本来、税制こそ行政が弱者の経済的利益を直接に守ることができる最大の手段である。その見地から、政治家には今の社会の現状を見つめ直してもらいたいものである。