税と対峙する – 44

平成18年03月05日号(第2314号)

確定申告で大幅な増税に悲鳴が・・・
高齢者の公的負担が激増

 所得税の確定申告真盛りだが、高齢者の中から、今年の「納税額は多い」という声が多々上っている。これは本誌でも再三問題提起してきた、①老年者控除(50万円)の廃止、②公的年金控除の縮小の2つの要素が、今回の申告から取り入れられたことによる。

 たとえば、公的年金収入が300万円の人の場合、昨年と今年を比較すれば、公的年金控除額は30万円縮小しており、廃止された老年者控除額50万円と合わせ、控除額は80万円少なくなり、所得は80万円増加してしまう。年金収入は微減、つまり全く増えていないのに所得は80万円増える。これは大きい。所得税については税率10%が適用されるので、8万円の納税額の増加となる。

 ただ、今年の確定申告までは定率減税が20%適用されるので、8万円×20%=1万6000円が減税され、実際の納税額は64000円の増加となっている。  しかし、増えるのはこれだけではない。住民税もこの確定申告により確定し、住民税にも適用される定率減税を加味しても、3~3・5万円の増税となる。

 そして、基本的に市町村民税をベースに税率を乗じて計算される国民健康保険料の今年の負担額は、10万円程度が増える所も多くなりそうである。結局、今回の公的負担の増加額としては、この国民健康保険料が最も重くなる人も多いことだろう。そして、これらを合計すると、20万円くらいの増加となってしまうのである。まだ、すべての状況がみえていない中で、こうした高齢者の不安が声になってきているわけで、保険料負担の通知が届く5月以降は、大変な悲鳴が各地から湧き上がるものと思われる。

 しかし、これで終わりではない。来年以降は定率減税が縮小廃止される。減税されている20%が、更に負担増となる。増税がこれほど急速に進むことは多くの納税者にとっては想定外であったはずである。
 こうした公的負担の激増は、今後の消費税の税率アップにも重大な影響を与えることになろう。