税と対峙する – 41

平成17年12月05日号(第2308号)

消費税増税は事業者を直撃する
預かっていない消費税を負担させられる恐怖

  消費税の増税論議が、具体化してきている。結局、財政再建という名目に対しては行政改革より税収確保の方が簡単なのであろうか。一部の役人の利害が、大多数の国民の声を殺すのであるから、大変なものである。

 ところで通常の場合、税の論理は少数意見を押さえつける方向で進む。消費税増税で実際にターゲットにされる負担者は、実は消費者でなく消費税を預かる事業者である。消費税は納税者である消費者が、物を買ったりサービスの提供を受けた場合、その相手方である事業者に預けることになっている。事業者はこの預った消費税を自己の決算期に、自らが支払った消費税との差額を計算して国に納めるのである。

 さて、現在消費税は税込が義務化されている。したがって、消費者は見えない消費税がいくらかということより、商品全体でいくらかということに関心を持つのは当然である。とすれば、消費税率が切上げになった場合、消費税がいくら増えたかより結局そのものの値段がどれだけ上ったかが身銭を切る立場の最重要事項なのである。当然、事業者は競合相手との挟間で、商品の総額を押さえなければならず「消費税分だけあがってます」などという理屈は現場では通らない話しなのである。

 話は変わるが、芸能人の出演料などは、昔から所得税の源泉徴収が10%されることとなっている。たとえば、ギャラが10万円なら、本人への実際の支払額は10%である1万円を差し引いて9万円となる。しかし、それをきらって「手取り10万円」というやり方が多くみられ、その為、書面上の支払い額は111,111円となり、その10%の11,111円を差し引いた10万円を渡すことになるわけである。しかし、支払い者は当然その11,111円を国に納めるわけだから、結局負担額は111,111円となってしまう。自動的に負担額が11,111円増えるのである。これなども本来の形を無視して、当事者の感覚が優先される現場の実務であり「ババ」をひくのは事業者なのである。 消費税において、少数弱者である事業者はまさにその役回りをさせられることとなる。事業者が消費税を納めるにあたって、消費税をいくら預かったのかは問題にならない。あくまで事業者の収入(消費税を預かる取引)がいくらあるかが問われる。そしてその収入のうち―現在は5%が消費税になるということに過ぎず、仮に税率が8%になれば、8%が消費税であるという計算が無機的にされるだけである。したがって、税率切上後も価格を据え置きにした場合、増税となった3%部分は消費者ではなくすべて事業者の負担になってしまうということなのである。預かっていなくても、預かったとされるこの消費税の仕組が、必ず税率切上げにおいて事業者の側に降りかかることを忘れずに、税率切上げ阻止を訴える必要があるのだ。