新しいアイデアで未来を探る地方百貨店②

地方百貨店と切り離せないのが地元との共存共栄。これは、地方百貨店の生き残りだけでなくやがては街の活性化にも繋がっていくことから、その土地に住む人々も大きな関心を持っています。その、地方との共存を最大限に活かすプロジェクトが実施されている地方百貨店に注目しました。

福屋「ララいいもの広島」共に創り、奏でよう~2022年3月から

福屋は、1929年10月に開店した百貨店で、今年で創業93年となる地元民に愛され続けてきた老舗百貨店である。

今回、福屋百貨店は、消費者からの声を募り地元の商品を開発、広島の逸品を発掘するプロジェクトを立ち上げた。2022年3月に設けた専用サテライト「ララいいもの広島」でオンライン中心に販売を行っている。

プロジェクトの流れは、消費者から集まったアイデアを元に方向性を決定し、生産者、メーカーの担当者と共に商品を制作する。そして開発や取材を経て完成した商品を店頭やオンライで販売する。

消費者の欲しい商品を生産者が制作、販売することで、広島の魅力を広く発信することにもつながる。5年後には100点の商品出品を目指すとのこと。

オンライン販売の強化とともに、福屋百貨店の生き残りと広島の活性化にも繋げていくプログラムになるのか、消費者の興味と応援が大きな支えとなる。

福屋百貨店「ララいいもの広島」

広島ホームテレビ

井上百貨店「良いものを自ら生み出す」地元企業と連携した商品開発を行う~2015年開始

1885年に創業の井上百貨店(松本市)は、130年以上に亘り松本の中心地で地元の発展に貢献してきた老舗百貨店である。

2015年、井上百貨店は蜂蜜専門店「信州蜂蜜本舗」と連携し、百貨店の屋上スペースで養蜂事業を始めるという従来の百貨店の枠を超えた「松本みつばちプロジェクト」を立ち上げた。2016年からは「城町はちみつ」の販売を開始し、他の地元企業とのコラボ商品を次々と開発、販売している。「城町はちみつ」は、市街の花みつだけを集めて作られた貴重な蜂蜜で、地元の人を招待してハチミツの収穫体験も実施している。

また、松本は古くから続く「飴の街」としても有名であるが、「松本みつばちプロジェクト」をすすめる中で、江戸時代から続く創業350年の「山屋御飴所(やまやおんあめどころ)」を中心とした飴専門店が参加し、「信州はちみつキャンディ」の商品開発を行い、を2019年3月から商品の販売を開始している。

地元企業のみならず地元の活性化にもつながるこの事業が、長く続くことを願いたい。

「松本みつばちプロジェクト」

産経ニュース

岩田屋三越「岩田屋三越ファーム」従業員が農業を通じて地域の課題を学ぶ~2017年開始

岩田屋三越では、農業体験を通じて従業員が地域の現状や社会課題を知ることを目的とした「岩田屋三越ファーム」プロジェクトを実施している。

岩田屋三越ファームとは?

岩田屋三越社員が生産から商品開発・販売まで行うことで商品知識を深めるだけではなく、生産地の現状・課題・喜びを学び、お客さまにお伝えする取り組み。

2017年の佐賀県唐津市「大浦の棚田」での米作りを開始し、2018年度には、福岡県筑後市でお茶の栽培、福岡三越屋上で屋上養蜂を開始、2020年度には熊本県菊池市で栗の栽培を開始し、同年には、福岡県八女市でもお茶の栽培を開始している。

災害により米作りは2020年度より地元、福岡県朝倉郡東峰村竹地区に生産の場を移している。

竹地区の棚田は、蛍の生息地の名所です。しかし、2017年の九州北部豪雨による水害で壊滅的な被害をうけ、蛍の姿はほとんど見ることができなくなりました。竹地区の棚田の復活と維持の一助となるため、2020年度から棚田米作りを開始。蛍が戻る日に向けて活動を続けています。

従業員が手間ひまかけて収穫した農作物は店頭で販売されている。また、お中元・お歳暮の商品になるものもあり、従業員の意識にも変化があったようだ。農業を中心とした環境問題への取り組みへの関心も高まっている中、地域との協創が地域と百貨店の活性化にもつながるよう一層の取組み強化が期待される。

三越伊勢丹ホールディングス 地域社会との協創