昭和24年10月創刊

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えきの駅食文化探訪 第2回 松屋浅草店 鈴木章浩 営業一課セクションマネージャー インタビュー

鈴木章浩 松屋浅草 営業一課長

鈴木章浩 松屋浅草営業一課長

鈴木章浩 松屋浅草 営業一課長 略歴

2001年4月 株式会社 松屋入社
2007年3月 銀座店 食品部 弁当・惣菜・催事係に異動
2009年3月 銀座店 同係マネージャー
2011年3月 浅草店 営業一課(食品)一係マネージャー
2016年3月 銀座店 食品部MD課 バイヤー(洋菓子)
2018年3月 銀座店 食品部MD課 バイヤー(弁当・惣菜)
2020年3月 浅草店 営業部営業一課(食品)課長(現職)

 松屋浅草は屋上に遊園地を常設した日本初のデパート。昭和初期を代表するアール・デコ様式の建築物で、デパートと東武鉄道東武スカイツリーライン・伊勢崎線の起点駅を併設している。昨年11月に開店90周年を迎えた。東京の下町・浅草のシンボル店。

「先ず、松屋浅草の立地と顧客特性をお聞かせください。」

日本の文化を大切に継承している地域に根差す

(鈴木課長)
 当店は台東区と墨田区の隣接地域にあります。当店の目の前の隅田川に架かる吾妻橋を渡ったら墨田区です。この両区が当店のメイン商圏であり、売り上げの半分以上を占めます。その中で特に半径2㎞の地域については当店では分かりやすくワンマイル商圏と呼んでおり、核となる商圏です。メインの客層は60~70歳代です。これらの方々は、親族が比較的近い地域に住んでおり、自分だけでなく子や孫の分も購入していく方が多いと感じます。また若いお客様にとっても子育てがしやすい環境で、近所付き合いが残っており、地域の皆で子供を見守る意識の強い傾向が見受けられます。 

 この地域では子供のため、孫のためにと、四季折々の行事をとても大切にされている傾向があります。例えば、雛祭りには、雛あられと蛤を当店で揃え、五月の節句には、ちまきと柏餅を揃える。七五三も同様です。この行事の時はこの様な事を行い、これを食すのだよと親や祖父母が孫に教える。孫のために遣ってあげられる文化を非常に大切にされている地域です。

 隅田川花火大会の日は食品売場に2段階で売上の山ができます。先ず、朝から昼にかけてお肉、唐揚げ等の売上が激増します。地元の方がご自宅にお客様を招かれてもてなすためです。花火打ち上げ前の2時間は来街客向けの焼き鳥、唐揚げが飛ぶように売れます。

 春と秋の彼岸の時期は浅草の街の人出は多くなります。台東区、墨田区は寺院が多く、浅草駅前からタクシーやバスを利用して行かれます。当店の和菓子売場でおはぎ等を買われ、一階の「日比谷花壇」でお供え花を買われ、店の前のタクシー乗り場から乗車される。長年に渡って当店は和菓子・花屋・タクシーの3点セットでご好評を頂いています。お参り後に浅草に戻られてからも、地下売場の食材やお弁当、お惣菜のご購入へと繋がっていく需要が見られます。

 当店はお客様との距離がとても近い店です。在住人口が購買人口である地域ですので、非常に近くからストレートにお客様のお声を頂けます。当地域にご在住の方は日々の食のご購入のために当店をご利用頂いていますので、近所の商店街に行く延長とのイメージを持たれていると思います。顔見知りのお客様がとても多くいらっしゃいます。店舗スタッフは、少なくとも数十人のお名前、お住まい、いつも寄られる売場、店舗を熟知しています。常連のお客様は当店の販売員とは所謂ツーカーの仲の様な関係を築かれているのです。当店は、多くのお客様に「松屋さん!」と呼んで頂いています。「何かを買うのなら、松屋さんでまとめて買う!」と言っていただけるお客様で成り立ってきました。これからもそうありたいと考えています。

「松屋浅草は食料品の売上比率が全国平均値と言われる30%を大きく上回っていると伺っています。長年それを続けてこられた秘訣と戦略をお聞かせください。」

(鈴木課長)
 「当店の食料品の売上比率は圧倒的に高く、7割前後です。この売上比率は現在のフロア構成になった2010年から変わっていません。地階は生鮮、グロッサリー、総菜、弁当、和洋酒、海苔、茶、佃煮、漬物で構成しています。一階は和菓子、洋菓子での構成です。地階と一階とでは、フロアの客層が異なります。地階は完全に地元向けの品揃え。お客様との距離を近くするべく常にベテランの販売員を配置しています。例えば、「丸赤」鮮魚店は販売コーナーの裏に厨房を併設しています。鮭の切り身はお客様のご用途を伺い、薄くする等のご要望に応えています。精肉も同様です。この様にひとつ先を見据え、お客様に寄り添った販売に徹する事をテーマに販売をしています。一方、和洋菓子は、地元の方が自宅で召し上がるためにお買い上げ頂くこともあれば、お出かけになる際に、お土産として持っていく用途が想定されます。その自家需要とお土産需要に分けた商品展開をしているのが一つの特徴です。メイン商品がブランデーケーキの欧風洋菓子店「シミズ」は松屋浅草へ百貨店初出店をして頂きました。出店後には、プリンやブランデーのゼリーを新たに発売してきました。これらの商品はお客様の声を店頭で頂き、開発に至った商品です。互いにお客様のお声を把握しながら、お客様とお取引先と当店の三者がしっかりと連携する良い流れが出来つつあります。また、クリスマスケーキのホールサイズを増やしたり、来る5月の端午の節句には鯉のぼりをモチーフにしたロールケーキを新発売します。それは、「祖父母様がお孫さんにケーキを買ってあげたいと考えている筈。」との販売員のイメージから始まり、製造に話を持ち掛けたものです。お孫さんをはじめ誰でもわかる行事の象徴は鯉のぼりではないか。ではそれをロールケーキで表現してみよう。との流れが出来上がりました。パソコンを叩いてデータを蓄積して行き、売れ筋商品を探すのも勿論大事ですが、日々店頭に立ち、お客様との接点の最前線にいる販売員が次に繋がる情報を持ってくるのです。販売員とお取引先と当店の距離が近いのは当店の最大の強みの一つです。

 下町銘菓撰のコーナーはひとつの意志を持った売場です。下町だけではなく、東京都内の銘菓を扱わせて頂いています。向島「長命寺桜もち」の桜もちは、同店の本店では長蛇の列ができる程の人気商品です。それを当店向けに一定数を確保して頂いています。

 また、一階売場に浅草「徳太樓」、言問橋「言問団子」、向島「゛志満ん草餅」の商品を扱う「甘味江戸のれん」があります。ワンストップで人気和菓子すべてがお買い求めいただけるのは当店ならではの強みです。

 また、販売時間、接客時間が長いのはひとつの特長です。販売員の目の前にいらっしゃるお客様が親切におっしゃる言葉は一意見かもしれませんが、大勢のお客様が思っている事、感じていることを代弁されているかもしれません。ご要望の実現に向けて、お客様からの貴重なご意見を売場から吸い上げています。また、店内のエスカレーターの速度は恐らく日本一遅いのではないかと思われる程に致しました。(記者:そう感じます)それは、「早くて不安。特に下りは怖い。一歩目の足が出せない。」とのお客様の声があり、安全面を考えて実現した例です。

 何かを買われてお終いではなく、当店の建物の中にお入り頂いたからには、是非とも何らかの会話を愉しんでお帰り頂きたい。ご近所の方と地階でばったり出会って井戸端会議の場面も当店ならではの特徴です。

デリバリーサービスの展開

デパ地下グルメお届便承りカウンター

 松屋浅草は、この地域を徹底的に掘り下げて行こうという事をテーマに掲げています。地元のお客様のお声を伺いながら、そのご要望に応えていくいわゆる「御用聞き」の推進です。特に食料品は、「浅草の台所」として、日々の食材を毎日、或いは1日に2回、お昼と夜にご来店頂きたい。その様な店を目指しています。「これから病院に寄りたいから、今買った商品を自宅が近いから届けておいて欲しい」数十年前から浅草店では「御用聞き」としてこの様に仲見世や西浅草、千束、吾妻橋等の当店から徒歩や自転車の圏内へ商品のお届けを行っていました。本格的にデリバリーサービスを始めたのは、昨年の6月からです。契約するデリバリーでのお届は、台東区、墨田区の隅々までカバーができます。昨年6月からは、隅田川の対岸・墨田区のお客様のデリバリーの需要が伸びています。当サービス開始前までの墨田区・台東区の配達比率は5対5でしたが、現在は7対3の比率です。墨田区側から台東区側に行く場合、どうしても吾妻橋、白髭橋等の大橋を渡る必要があり、その手間が掛かるので「デリバリーで届けて貰える方が有難い。」とのお声が届いています。デリバリーする商品は、当店指定の1パレットの容量であれば配送料金が変わらない仕組みですので、今すぐ食べるお弁当と夜に食べる精肉、鮮魚などの食材を一緒に注文される需要が最も多いです。ご利用者の多くは60~70歳代です。

「松屋浅草に来店する外国人観光客の特徴をお聞かせください。」

(鈴木課長)
 外国人観光客が浅草に求めるものは、浅草界隈を遊ぶ、楽しむ、食べるです。日本人観光客や、東京在住の方でも、折角浅草へ来たのだから、あんみつを食べよう、芋菓子を食べよう、おみやげにきんつばを買って行こうとの購買行動があり、その延長線上にインバウンドのそれがあると分析しています。銀座の様なショッピングの街にはラグジュアリーブランド等の商品の買い物が目的で来られますが、浅草は観光地ですから、浅草寺雷門の大きな赤提灯等を観に来て、それと併せる形で当店で和菓子を買って行かれます。例えば、言問団子を買われると先ず、その場でお団子の写真を撮られます。お団子の表面の仕上げがピカピカでとても綺麗なのです。当店の和菓子は、彼らにとってはひとつの芸術作品です。当店の外国人観光客が買われる和菓子には「買われて、撮影されて、食べられて。」の流れがあります。海外のSNS等の観光ガイドツールには、ほぼ100%浅草の情報が出ており、松屋浅草の情報も同様です。そこで代表的な情報は和菓子が中心です。「このスマートフォン画面に映る和菓子が食べたい。」とのお問い合わせが少なくありません。

「LINE WORKS(ラインワークス)」

 ご好評を頂いているのは、昨年より開始したLI N E W O R K S です。これは店頭のスタッフが所有する業務用携帯電話でお客様とラインで直接やり取りをするものです。お客様の同意の下で、店頭スタッフのQRコードを読み込んで頂きます。「今から、松屋さんに行きたいが、今日のおすすめは?」等の会話に対応したり、逆に販売スタッフからは「以前探されていたかりんとうが入荷しました。」とお伝えする手段に利用しています。これも「御用聞き」のひとつです。当システムを利用されている顧客層はメイン顧客層である50~70歳代です。60~70歳代のお客様は、常日頃、家族間での連絡手段でラインを使用しておられますので、スムーズに浸透しました。新聞折込みチラシでご案内するのと異なり、少数かも知れませんがピンポイントでお客様に確実に告知ができ、お客様からのご要望も直接頂けますので、顧客をがっちり掴んでおくにはこれからも有効なツールとなります。

「地域での連携についてお聞かせください。」

(鈴木課長)
 先人から教えられてきましたが、私どもは浅草の街に商売をさせて頂いているとの感覚を持っています。それは浅草観光連盟や仲見世商店街、雷門通りの商店街の経営者とお会いする際にも感じられます。浅草の為に先ず何ができるかを考えて商売をさせて頂くべきだとの姿勢はこの地域全体の共通認識であると思います。一部だけが繁盛すれば良いとの考え方の経営者は極めて少ないのです。

 また、当店は浅草三社祭との深い関わりがあります。このコロナ禍でお付き合いの仕方は変化していますが、当店の所在地である花川戸一丁目を盛り上げるために、町内神輿を若手社員が担がせて頂いていました。店内での祭りの告知も重要です。有難いことに、近隣町会からお弁当類やオードブル等のご発注を頂いておりますし、店として浅草神社をはじめ各町会や関係団体との協力体制を築いています。この繋がりは開店以来続いているものです。

「開店100周年へ向けての次の10 年が始まりました。この10 年で目指すものをお聞かせください。」

(鈴木課長)
 テーマは明確です。徹底した地元の需要の掘り起こしです。ご高齢者は更に高齢になられますし、お若い方も歳を重ねられます。ご家族代々に松屋浅草をご利用頂くために私どもに何ができるかが全てのテーマになっています。観光客のご来店頂けるのは大変ありがたい事ですが、やはり松屋浅草のスローガンである「マイタウン、マイストア」に基づき、地元のお客様にしっかりと愛されるようにしていきたい。これは、100年、150年経ても変わらないものです。

(敬称略)

鈴木課長のイチオシ商品

栗羊羹(写真右)

驚くほど柔らかい栗は、羊羹と同じ固さに仕上げてあり、純度の高い砂糖を使用することで、甘さにキレがあり、栗と餡の旨味が口の中で広がるイチオシです。

菊最中(写真左)

小豆きんとん餡をたっぷり詰め込んだ見た目も可愛らしい最中。大きな手で繊細な和菓子を仕上げる菓匠青柳正家専務取締役、須永和久さんの技とそのお人柄にぞっこんです。

活躍する社員さんご紹介

営業一課アシスタントマネージャー 飯田久美子さん

入社5年。ギフト売場・カードカウンターを経て、3年前より現職

 当店は食料品や化粧品などの日々のお買物だけでなく、幼稚園や小学校の制服の取り扱いや祭りの浴衣の仕立て直しなど地域の年間行事に関わることも多く、地元の方の生活に密接な関わりを持っていると感じます。皆様に「松屋さん」と親しみを持って呼んでいただき、お立ち寄りいただいた際には、店内や商品のことにとどまらず様々なお話やご相談をいただきます。当店と販売員が持つ親しみやすい雰囲気は、都内百貨店の雰囲気とは異なる独特なものかも知れませんが、それが当店の良さであり大事にしていきたいと思っています。

 自身のポリシーは話を聴く事です。お客様だけでなく、お取引先様もまた然り。何を求められて自分に何ができるか、どう進めていくことがベストなのか、しっかりと見極めるために相手ときちんと向き合い、お話をさせていただくことが大事と考えています。

私のイチオシお菓子 志゛満ん草餅「栗きんとんどら焼き」

青えんどうの餡にバタークリームと蜜栗が入った一風変わったどら焼きは一度食べると忘れられない味。看板商品の草餅に比べて扱っているお店も少なくご存じない方も多いため、隠れた逸品として手土産にすると喜ばれます。

名物・日替わり下町銘菓全19品一覧

月曜柴又・高木屋老舗「草だんご」
銀座・鹿乃子「姫かのこ」
火曜人形町・寿堂「黄金芋」
浅草・茶寮一松「一松の五三焼カステラ」
巣鴨・とげぬき福寿庵「塩豆大福」
水曜神田淡路町・近江屋洋菓子店「アップルパイ」
森下・カトレア「元祖カレーパン」
練馬・和菓子 大吾「爾比久良(にいくら)」
東神田・亀屋大和「焼団子」
木曜北区・菓匠明美「都電もなか」
蔵前・T’sベーカリー「パン各種」
向島・長命寺桜もち「桜もち」※土曜も販売
金曜新橋・新正堂「切腹最中」
浅草・あさくさ梅源「きんつば・芋菓子」
土曜浅草・ケーキショップテラサワ「生クリームコロネ」
日曜錦糸町・白樺「錦どら黒/白」、「たらふくもなか」

店舗データ

松屋浅草外観
  1. 店舗名 松屋浅草
  2. 所在地 東京都台東区花川戸1丁目4番1号
  3. アクセス 東武鉄道・東武スカイツリーライン、東京メトロ・銀座線、都営地下鉄・浅草線 各浅草駅下車
  4. 開店年月日 1931年(昭和6年)11月1日
  5. 売場面積 7,404㎡
  6. 売上高 3,915百万円(2020年度)

※周辺地域の人口:台東区20.9万、墨田区27万、葛飾区45.5万、荒川区21.9万

カテゴリー別売上構成比率

弁当及び惣菜32%
生鮮14.9%
和菓子14.3%
洋菓子12.3%
その他(瓶缶詰、催事、海苔、茶、酒類ほか)26.5%

年齢別構成比:買上金額

20歳代0.3%
30歳代2.4%
40歳代7.1%
50歳代13.5%
60歳代20%
70歳代以上43.7%
その他・不明13%

現金/カード比率:買上金額

現金70.9%
カード29.1%