税と対峙する – 30

平成16年12月5日号(第2285号)

政府税調の増税シナリオが明確に
つくられた景気回復が税負担に直結する

 政府税制調査会(政府税調)の来年度税制改正答申内容が明らかになった。自民党(政府与党)の税調の審議が実質的には最終方針を決めるので今回のそれは行政の一つの考え方としてのものだが、内容は増税一色。これでは「増税のための機関」としかいいようがない。

 今後の税制改革の道筋について(政府税調)「全体として税負担水準の引き上げが必要」と考えている。今回は答申の文言の疑問点に従って考察してみたい。

(1) 消費税 (政府税調)「国民の理解を得る努力をしながら、消費税の税率を引き上げていくことが必要。」とズバリ、消費税率の引き上げを主張しているが、「国民の理解」の具体的方法については全く無関心である。理解を得られなければやめるということならば、国民投票や総選挙など、はっきり国民の意志を確認する手続きの必要があろう。行政改革を断行し、財政削減に対する努力もなく“入りをはかる” だけの政策では、国民の理解を得られるはずもないのだが、現状、国民の理解を得る方法は、国民にとって何ら保全されたものではないのである。

(2) 定率減税の取り扱い (政府税調)「現在の経済状況はこれが実施された1999年当時と比べて著しく好転した。定率減税を継続する必要性は著しく減少した。2006年度までに廃止すべき」としている。

  税と対峙する28(11月5日号)でも論説したように、所得税を納税する全ての国民が無条件に受けることができるのがこの制度である。減税制度としては国民生活の安定をにらんで生保や損保への加入促進のために設けられた生命保険料控除、損害保険料控除などの方がよほど時代の必要性からは取り残されている。業界の要望に屈していつまでも廃止されずに手間のかかる制度ばかりを温存し、シンプルな減税策が着々と取り除かれるのだ。問題なのはそればかりでない。5年前と比べ経済が著しく好転しているという政府税調の判断だ。リストラを重ねて利益をあげる大企業等の都合の良い指標を用いて勝手に経済を回復させられてはこまる。別表の百貨店売上高で5年前と昨年の売上とを比べてほしい。売上額にして10%もダウンしているのである。今期の各月にしても一度として前年の売上を上回ってはいないのだ。これは一般の国民の消費経済が立ち直っていないことに他ならない。時同じくして経済指標から百貨店の数字を取り除くような動きも明らかになった。 行政が意図的に景気回復の形をつくり上げていく状況がそこにはないだろうか。勝手につくった景気回復で「定率減税を継続する必要性は著しく減少した」と決めつけられたのでは国民は救われまい。

真剣にこの流れに向き合い主張していかないと、来年以降の消費経済は本当に行きづまってしまうだろう。