税と対峙する – 27

平成16年10月20日号(第2282号)

「景気回復」のオーバーアクションが国民を苦しめる
税制改正で弱者の負担を取り除き消費の拡大を

 景気回復ということばが、行政・マスコミから絶え間なくきこえてくる。そのお題目を旗印に国民の社会負担を増やす政策が着々と進行しているようだ。  税制ではすでに所得税において「配偶者特別控除」や「老年者控除」が廃止され年金収入の所得控除額の減少と合わせ高齢者にとっては特に厳しい環境になってきている。

 具体的負担が明らかになるのは来年以降だが、多くの人がその時、思いがけない可処分所得の減少に気がつくことになろう。また、住民税は所得税に連動して増税になるため、この税金をベースに算定される国民健康保険料の大幅な負担増も見込まれる〈税と対峙する17(2/5号参照)〉。これも日々の国民の生活に極めて深刻な影響を与える危険性がある。

 高齢者を中心に多くの国民が加入している国民健康保険料の負担増は、日常の消費にも重大な影響をもたらすだろう。なぜならこれらの層にとって景気回復が全く別の世界の話だからだ。

 年金収入を主な所得とする高齢者はその収入自体が減らされる方向にあり、家計の収入が増えることは現状では全く考えられない。国民健康保険を主に利用する自営業者や正社員でないフリーターなども、事業収入やアルバイト収入などは減るほうが当たり前であり、現状維持も極めて難しくなっている。

 つまり、税制改正が収入の減った人たちの負担を、逆に増やす現象をおこしているのである。一方、景気回復で給料アップなど恩恵を受ける大企業の正社員については、こうした負担額についてあまり大きな変化がないという皮肉な状況がある。

 企業が売上をあげるために要する労働コストは、過去に比べ大幅に減少している。つまり企業は、従業員の在り方を「合理的」に見直しして景気回復の原動力としている。その陰で辞めさせられた人や淘汰された会社に勤めていた人は、所得を大幅に減少させる中で社会負担支出のみ増加させられる状況に陥っているのである。

 どこよりもリストラすべき行政機関は景気回復という指標を上手に使って、公務員の雇用確保や所得の増加をはかるという極めて国民にとっては不愉快な状況も見え隠れしはじめた。

 こうした矛盾を少しでも是正していくのが本来税制改革の進むべき道だ。しかしながら、現状の政府税調の幹部の発言をきいても、国民の本当の姿に目線を合わせ、またそうした環境で事態を見つめる人はいないのだと思わざるを得ないような見当はずれなものが多い。そしてあくまで彼らが最優先に目ざすのは「消費税増税」なのである。

 百貨店の「月次売上減少」のニュースもマスコミではどんどん扱いが小さくなっていく。「本当の消費経済は回復の動きなどみせていない。」このことを我々は強く主張していかなければ年末の税制改正はまた国民負担を増やすだけのものになろう。