税と対峙する – 24

平成16年6月5日号(第2274号)

事業者はいつでも税の直接負担者になる
税務調査の主体も消費税に

 消費税の申告は消費税を負担する消費者ではなく、実際に国に納付をする納税義務者である事業者がしなければならない。納付する消費税の計算は複雑であり、時間や費用など相当のリスクがかかり、多くは専門の経理担当者を設けたり会計事務所などに委託しており経済的負担が生じることになる。

 更に問題なのは申告後の税務調査である。この調査では国税局や税務署の調査官が会社に来て直接帳簿や領収証などを調べるわけだが、調査はその会社が確定申告をしている法人税と消費税について同時に行なわれる。消費税調査については預った消費税の納付義務を果たしているということで手心を加えてもらうなどということは有り得ない。逆に益税をつくっていないかと厳しくみられることになる。更に長い不況で企業の多くは赤字であり、法人税を払うような状況でないところも多い。どんな大企業でも赤字なら基本的に法人税は0であり、いきおい調査官は黒字・赤字関係なく税の徴収ができる消費税の方にその関心を高めることになる。

 税務調査が進められる中では事業者が不利つまり税の納めすぎをしているような個所は、そのまま通過し計算間違いなどで過少になっている所が注目される。申告上、納付する消費税は事業者が預った消費税と支払った消費税の差額を納めることになっている。たとえば、計算上消費税を支払っていないので預った消費税から控除できないにもかかわらず、支払ったものとして控除をしてしまった場合などは、納めるべき金額が少なくなっているので修正申告の対象となる。修正申告となれば本来の税金のほかにペナルティーとしての加算税や期限を過ぎた利息分としての延滞税も加算される。

 納税義務者がなぜ新たに自分自身が税金を負担させられるのか、考えてみれば少しおかしいことなのだが、これが消費税の実状である。消費者が負担するという法律に基づいて運用されているけれども、納付計算は事業者に委ねられており、いつでも納税義務者である事業者が事実上の納税者になる状況を内蔵しているのである。

 消費税の税率が上れば税収確保という見地からそれだけ事業者の役割は重要になる。同時に申告ミスをした場合のペナルティーの金額も当然増える。消費税率の切上げは単に消費者の負担が増えるだけでないリスクが事業者の側に課されるのである。