編集長の注目企業インタビュー その1 – 新里製本所

ホンセプト https://www.honcept.jp/
株式会社新里製本所 https://www.niizato.jp/#busines

 「百貨店大量閉店時代」と言う呼び名に、もはや誰も違和感を抱かなくなって来た。本紙4面の連載コラム「デパートのルネッサンスはどこにある?」でも、度々取り上げている。三越伊勢丹、髙島屋、大丸松坂屋、そごう西武、阪急阪神といった大手百貨店も例外ではない。それらの郊外店舗や地方の支店であれば「閉店」も統合や撤退=(イコール)スクラップアンドビルド、で済む話だ。※もちろんそれも「苦渋の決断」ではあるだろうが。

 一方、地方の老舗デパート、いわゆる地域の独立系百貨店の場合は、閉店=倒産・廃業を意味する。地元にとっては、過疎化や、賑わいの喪失と言った問題も孕んだ、更に深刻な事態である。

 前置きが長くなってしまったが、そうした地方デパートの悩みは、ズバリ、テナント不足であろう。ファッションが売れなくなった、という話が10年以上続き、コロナ禍でとどめを刺された感が強いが、テナント(やり手)不足が、地方の婦人服売場の減少問題の根本だ。今現在、この問題を解決する「特効薬」はない。
但し、いくつかの処方箋はあり、本紙の記事や広告欄でも、今まで様々な企業を紹介して来た。今回はそのうちの1社である新里製本所を、と言うより新里社長という人物を紹介したい。

製本を取り巻く環境、業界自体も、書籍離れ、出版不況と言われて久しく、デパート以上に先行きが心配される業種である。しかし新里製本はその逆境をばねにして、新しい「コンセプト: 考え方」を模索している。コロナに翻弄されるデパートだけでなく、いろいろな業種に参考になるだろう。

 株式会社新里製本所の代表取締役社長新里知之氏に、新しいコンセプトの本「HONcept」について話を聞いた

 2021年初秋、東京都文京区白山にある昭和9年創業の製本所に、新里社長を訪ねた。株式会社新里製本所は元々、上製本(単行本、学術書、辞書)の製作(製本)を本業とする。周辺に製紙問屋などもあり、東京下町の工場街の様な雰囲気のある一角だ。※因みに雑誌の綴じ方は並製本と呼ばれ、「上製本」は文字通り、上質、上等な学術書からアート本まで、書斎の本棚をアカデミックに変えてくれる。
※因みに筆者の家に書斎はない。

 二子玉川の蔦屋家電にて新里製本のファクトリーブランド「HONceptホンセプト」の展示会を実施した。
※本紙7月15日号の2面にも広告を掲載している。

 TUTAYAのプレスリリースのキャッチコピー
「ずっと触っていたいノートHONcept(ホンセプト) ″二子玉川蔦屋家電で7月8日〜7月21日までブランドデビュー展&期間限定販売! 国産の艶やかな生地を表紙につかった、今までにない上製本ノートを発表」
https://www.atpress.ne.jp/news/265567

 その後も9月より渋谷西武A館3Fの「P.1(ピードットアン)」にて
「ホンセプト」のテキスタイルノートの取り扱いを開始。横浜中華街の雑貨店「倭物やカヤ」でもコーナー展開するなど、まるでファッションブランドのクリエイターの様に、矢継ぎ早に商品プロモーションと販売スペースを拡大している。
10月に渋谷のトランクホテルで展示会を実施し、前述の渋谷西武以外に、大丸松坂屋のバイヤーとも折衝中だと言う。
https://www.honcept.jp/gallery/

 もちろん実際にお目にかかった社長は、作業服を着た中小企業の社長のイメージそのままで、失礼ながらクリエイティブな見映えも、アカデミックな匂いも皆無の中年オヤジだった。
(本当に失礼!!)何事もそうなのだが、外見に騙されてはいけない。

新里社長は「出版不況をモロに食らって不振にあえぐ中小企業の経営者」とは真逆の人物であった。・・・エネルギッシュに「やりたいコト」を立て板に水で語り続ける。上製本という本(書籍)の「外側」をどうやって世の中に広めようか(再認識させようか)と、日々考え続けている。ご本人も公言されているので敢えて言うが、全く商売っ気を感じさせない。「儲ける」よりも、先ずは商品の「コンセプト( 考え方)」が先なのだ。この辺りは百貨店の経営者も見習ってほしいものだが。

 今後は全国のいろいろな土地固有の布を使った、地方発の製品を発掘して行きたいとのことなので、デパート新聞にて特集し、地方百貨店応援の可能性も考えたい。例えば、今現在新里製本で手掛けている、富士吉田市の宮下織物とのコラボレーション事業も参考になる。全国の他の地域でも、その地方に根付いた「布、織物」とのタイアップ製品を地元の百貨店で販売する、という企画が成り立つのではないか。
http://www.miyashitaorimono.jp/

「前置き」が長すぎて紙面が尽きてしまった。編集不足で申し訳ない。
新里社長は言いたい事、やりたいコトが、まだまだたくさんあると思う。機会を見つけて続編をお届けしたい。
社長の年末スケジュール次第だが。

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