昭和24年10月創刊

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㈱新潟三越伊勢丹 牧野伸喜社長 直撃インタビュー – 明日を目指す百貨店探訪 第5回

 全国各地の百貨店は、その地域経済のバロメーターでもあるのではないだろうか。地域一番店である百貨店を全国津々浦々に訪ねてその様々な実情を発信するシリーズ。

新潟伊勢丹 牧野伸喜社長

牧野伸喜(マキノ ノブキ)
学 歴
1984年 3月 立教大学経済学部経営学科卒業
職 歴
1984年 4月1日 株式会社三越入社
2010年 4月1日 株式会社三越 百貨店事業本部MD統括部紳士統括部紳士ビジネス部販売担当長
2011年 4月1日 株式会社三越伊勢丹 営業本部MD統括部紳士統括部日本橋紳士第二営業部長 兼 販売担当長
2012年 4月1日 同 営業本部MD統括部紳士統括部日本橋紳士営業部長
2013年 4月1日 同 営業本部基幹店事業部三越日本橋本店営業統括部紳士・スポーツ営業部長 兼 計画担当長
2014年 4月1日 株式会社仙台三越 取締役 営業統括部長
2016年 4月1日 株式会社三越伊勢丹 執行役員 営業本部エリア・チャネル事業統括部伊勢丹浦和店長
2017年 4月1日 同 執行役員 百貨店事業本部伊勢丹浦和店長
2019年 4月1日 同 執行役員 三越日本橋本店長
2020年 4月1日 同 常務執行役員 MD統括部三越日本橋本店長
2021年 4月1日 株式会社新潟三越伊勢丹 代表取締役社長 執行役員 (現任)

 新潟三越伊勢丹は三越伊勢丹ホールディングスの傘下である。2020年3月に、新潟三越が営業終了した後、新潟県内では新潟伊勢丹が唯一の百貨店となっている。昨年度は、グループ百貨店の中で唯一の営業黒字店である。

「まずは、新潟三越伊勢丹の現状、今後の方向性について」

(牧野社長)
 昨年度は、新潟三越の営業終了とコロナ感染拡大の影響を受け、売上高は315億円にまで減少しました。しかしながら、構造改革および販管費削減の結果、最終損益で利益を出すことができ、結果的として、より筋肉質な会社になることができました。今後の方向性については、この5月に、グループ中期経営計画を発表しました。11月には1Rでグループ新中期経営計画を発表し詳細に説明することとなっています。三越伊勢丹グループとして新中期経営計画を推進することになります。新潟三越伊勢丹としてなりたい姿は「わくわく・楽しく・こころ豊かに」です。まずは、お客さまに私たちがそういう価値を提供し続けることを丁寧にやっていきたいと思います。その上で、働く従業員も仕事を通じて、「わくわく楽しくこころ豊かに」感じてもらいたいと考えています。

『「わくわく・楽しく・こころ豊かに」の実現に向けて』

(牧野社長)
 これを実現するための戦略として
①母店である新潟伊勢丹の磨き上げ
②県内サテライト8店舗を使った、新潟県広域の「個客とのつながり」をつくること
③首都圏の基幹店( 新宿伊勢丹、日本橋三越)の商品やサービスをいつでもお客さまにご提案できるにようにすること
という三つを掲げています。
これらの戦略によりお客さまのLTV(ライフタイムヴァリュー)を上げていきたいと考えています。

「①の新潟伊勢丹の磨き上げとは具体的にどういう取組みか」

(牧野社長)
 三越の「おもてなし」と伊勢丹の「かっこよさ」を融合した店舗にしたいと考えています。その実現のため、2020年3月から新潟伊勢丹は改装を行っています。まずは、旧新潟三越のブランドを新潟伊勢丹に一部移設するとともにお客さまの支持の高い食品、化粧品、ラグジュアリーのカテゴリーは拡大しました。

 今秋には、子供服売場が完成し、新たに、美術ギャラリーと外商個客向けのお得意さまサロンも完成。次年度以降は、リビング雑貨と紳士服売場を改装して、23年度中に一連のリモデルを完成させる構想です。

「エスカレーター周辺に新しい試みがみえますが」

(牧野社長)
 「サークル」と呼んでいますが、エスカレーター周辺には、お客さまが集い楽しめるコミュニケーションの場を設けています。例えば、地階の「サークルテーブル」は、ソムリエ・パティシエ・料理研究家による講演やシーズンの食の案内等を会話を交えて楽しんで頂く場としました。1階の「サークルダンロ」に、待ち合わせや休憩にも利用して頂けるソファー・テーブル席のスペースを設けました。新潟市内のコーヒー店や洋菓子店を楽しみながら、心地よく過ごして頂く場所です。コミュニティスペースを拡大することで、来店客の滞在時間を長くし、館内の回遊性を高められると期待しています。

「②の新潟県内にあるサテライト店はどういう戦略か」

(牧野社長)
 新潟県は下越から中越を経て上越に至るまで南北に330㎞あります。これは東京ー名古屋間に等しい距離です。この広い県内にサテライト店を8店舗設けています。(新発田ショップ、横越ショップ、新潟西ショップ、三条ショップ、吉田ショップ、長岡ショップ、上越ショップ、佐渡ショップ)9月には、三条ショップを約3倍の店頭面積に拡大してリプレイスしました。サテライト店は店頭での商品の販売のほか、新潟伊勢丹からの取り寄せやリモート接客などの機能があります。また、外商部員も駐在し、地域の顧客の窓口となっています。この8店舗と母店で新潟県内のお客さまをカバーしています。今後も積極的に出店を進めていきます。

「③の基幹店からの取り寄せの取組みとは」

(牧野社長)
 現在、日本橋三越、新宿伊勢丹の商品やサービスを新潟三越伊勢丹の個客へお取り寄せするインフラを整備しています。新潟伊勢丹には店舗専属のバイヤーがおり、東京本部バイヤーとは別の組織として動いていますが今後はこれをつなげていこうと考えています。準備ができれば、新潟のお客さまに、より広いご提案が可能となります。

「新潟の顧客特性について」

(牧野社長)
 顧客ターゲットを3分類すると、ひとつは、外商のお客さまを中心としたロイヤリティが高い顧客。二つ目は、ミレニアル世代です。次世代の顧客として大切な存在です。万代エリアは多くのミレニアル世代が来街される街ですが、当店ではなかなか買って頂けていませんでした。私たちが2020年から進めている改装の課題のひとつでもありましたが、低層階の改装効果によって、多くのミレニアル層とつながりを持つことができています。三つ目は中心顧客です。年齢層はミドルからシニアのハウスカードをお持ちの顧客です。この3つの顧客層としっかりとつながりをつくっていきたいと考えています。

「外商について今後の方向性は」

(牧野社長)
 現在、外商部員は90名。外商の売上比率は30%。そのうち個人外商比は90%。外商の強化により、今後は外商比率50%を目指していきます。もっと外商個客との関係性を深めるための外商改革の必要があります。ただし、昔のように外商個客をただ増やせばいいという方針にはなりません。広く網掛けするのは、これからの百貨店の外商戦略とは言えないと考えます。当店の外商口座は10000口座、そのうち8000口座が稼働していますが、なかには、中元・歳暮期にしか稼働しない口座もあります。

 多く買って頂けるお客さまには高いインセンティヴをつけ、より強固な関係性を作っていく必要があります。1名の外商部員が持つのは100口座前後ですが、パーソナルに対応できるのはせいぜい20〜30口座のお客さまだけです。また、毎週のように催事などの案内の電話は迷惑だと思う方もいらっしゃいます。様々なお考えを持った個客に対して個々に対応する体制つくりも外商改革です。
昭和の時代の一匹オオカミのような外商部員ではなく、外商と店頭のバイヤーが連携すること。外商部員が個客から得た情報は外商の中だけで完結させるのではなく、バイヤーへ情報を入れて共有し、個客に対する新しい提案につなげていく必要があると考えています。また、いつ誰が配属されても、数か月後にはトップセールスになれるような仕組みつくりも重視しています。新潟伊勢丹の若い社員が「外商部は格好いいよね!」と、もっと憧れるような存在にしたいです。

「新潟県や新潟市、地域にとっての新潟三越伊勢丹としての役割とは」

(牧野社長)
 まずは、新潟伊勢丹のある万代エリアを盛り上げていかなければなりません。これまで以上にお客さまに来街していただくための構想があります。9月1日に内閣府より、新潟市が都市緊急整備地域に指定されまし た。新潟駅、万代、古町を結ぶ「にいがた2㎞」プロジェクトです。

 エリア内では建物の容積率が緩和されるため、2㎞区間でのオフィス・マンション等の建て替えや高層化が一気に進みます。例えば、国家戦略特区指定になっている日本橋地区(東京都中央区)の三井不動産の高層ビルのようなイメージです。これから新潟市中心部・新潟駅の再開発が稼働します。現在、この区間には空き地や老朽化したビルが少ないため、再開発が完了するまでに10年から15年はかかるでしょうが、駅周辺も特区になっているので、それが起爆剤となって、新潟市の姿が大きく変わっていくと思います。世界遺産登録へ向けた取り組みが行われている佐渡金銀山の玄関口として新潟駅は、JR東日本の地方駅として最後の再開発が行われる駅と言われています。万代の商店街、新潟交通、三井不動産、地元の皆さんと一緒に、万代エリアを盛り上げ、新潟市中心部を盛り上げ、県全体を盛り上げていきたいです。

 私たちは、新潟唯一の百貨店として地域活性のための役割を果たしていきたいと考えています。

「NIIGATA越品について」

(牧野社長)
 NIIGATA越品は2015年からスタートしている新潟伊勢丹独自のプロジェクトです。

 新潟三越伊勢丹が百貨店独自の視点で地元・新潟の銘品を発掘・編集してご紹介しています。現在、県内の110事業者による1100SKU(ストック・キーピング・ユニット)(※)の品揃えです。
※在庫管理上の最小の品目数を数える単位のこと

 専属バイヤーが外商部員と連携し、店頭や外商個客のご要望を踏まえ、県内の事業者を一軒一軒丁寧に訪ねて信頼関係を築きあげています。NIIGATA越品のショップは2020年秋にリニュアルし、ショップを1階に展開しています。また、三越伊勢丹オンラインでも販売しています。EC事業は成長ビジネスではありますが、競争が激しく独自性が必要です。当社のNIIGATA越品はその独自性と優位性を備えております。このNIIGATA越品をグループ力やECを使って、日本全国、世界に向けて届けていきたいと考えています。

「三越伊勢丹グループの強みとは」

(牧野社長)
 中期計画の重点戦略の中に「グループ連邦戦略」があります。

 グループの力を活用し百貨店一本足打法の現状から、新たな事業を推進していきます。グループには旅行代理店業やソリューション事業など多種多様な企業や事業があります。そのようなグループ企業・事業と連携 し、新潟伊勢丹の事業の幅を広げて顧客ニーズに応えていく、日本海側におけるグループの拠点として地域におけるマッチングビジネスの役割を担っていきたいと考えています。

「中期計画にある「高感度上質戦略」「個客とのつながり戦略」とはどういうものか」

(牧野社長)
 高感度上質戦略のマーチャンダイジングの方向性として「2・8次産業へのトライ」を掲げています。伊勢丹はかつて「オンリーアイ」のような別注品や百貨店のプライベートブランドを作っていましたが、大量に商品を作って、在庫を残すプロダクトアウト型が個客ニーズと合わなくなり、休止にいたりました。これからはカスタマーイン型の商売に変えていきます。サービス業として2次産業に限りなく近い位置づけです。独自性の高いものは必要なので、どんどんトライアルをしていきたいと考えています。また、感度が高く、上質な価値を求められる個客に対して常に対応できる体制を取っておくことも必要と考えます。

 個客と1対1の深い関係性を築き個客のパーソナルニーズにお応えする、個客の困り事や関心事を起点に、商品やサービスを提供するのです。

「新潟三越伊勢丹のイチオシを教えてください」

(牧野社長)
 人と現場です。どんな素敵な商品や素晴らしいサービスも、最後は現場の販売員がお客さまに価値を提供できるかが重要です。お客さまが新潟伊勢丹に行けば楽しいと思える、「わくわく!楽しい!こころ豊かに!」と感じて頂くためには最後は人の力、私たちの進む方向も答えは現場にあると考え、みんなで取り組んでいきます。
(敬称略)

新潟伊勢丹

新潟伊勢丹外観
年号
1907小林呉服店 創業
1937小林百貨店に社名変更
1978株式会社三越と資本提携
1980新潟三越百貨店に社名変更株式会社新潟伊勢丹設立
1984新潟伊勢丹開業
1991新潟伊勢丹 全館改装(1,800㎡増床)
1998新潟伊勢丹 全館改装 婦人4層化
2004新潟三越 全館改装 婦人4層新潟伊勢丹 全館改装
2010
2020新潟三越 営業終了新潟伊勢丹 全館改装
株式会社 新潟三越伊勢丹 沿革

ライスレジン=プラスチック+米
(特長)
・廃棄米(食用に不適な古米、米菓メーカー等で発生の破砕米等)使用
・フードロスに貢献
・CO²の排出削減に貢献(石油系プラスチックの含有率の大幅減)
(米含有率)
・NIIGATA越品スプーン:34%
・NIIGATA越品おちょこ:51%
・1階喫茶店ストロー:20%
*商品ラッピング袋にも登場
*社員食堂でライスレジン製のスプーンと箸を導入

バイオマスプラスチック「ライスレジン」お米の製品による取組み

2021年3月25日から開始した高速バスのトランクスペースに商品を積み込む県内初の取組み。
生産者は輸送時間の短縮(積み込みから約2時間後には商品が到着)で鮮度の高い商品を消費者に提供できるほか低コストでの商品輸送ができる。
バス利用者の減少により収支が悪化するバス事業者は空きスペースの有効活用で新たな収入源につながる。週3便の運用。
現在は、「まずは関わる皆様の不便、不都合解消の為にフローなどの改善に努めている段階」やっていく中で分かった伊勢丹内での業務分担やフローの見直し、積載バス停の指定などをやりながら改善しておりようやくスムーズな運営ができる形が整った状況。
11月に上越地区で約 30社様を対象としたNIIGATA 越品の合同商談会を企画しており、 その際にもNIIGATA 越品との取組みのメリットの一つとしてご案内の予定。
常温商品限定で輸送しているが、今後は生鮮品などの取り扱いへの拡大をする為の冷機能をもったBOXの検討をしている。

「NIIGATA越品」を新潟伊勢丹へ輸送する「貨客混載事業」