デパートWITHIコロナ~復活を目指す新時代の百貨店戦略

コロナの第5波収束を受けて各百貨店では、今までの低迷期から脱出すべく様々な戦略を展開している。非接触が当たり前となった時代の中、接客力で勝負してきた百貨店は、今までとは違うものが求められているが、その中で新しい発想に基づいた戦略を実施している店舗がある。これまでの負の要素を取り払って活気のある店舗へと転換できるのだろうか。

  • 渋谷西武店~「販売員のいない売り場」スマホで説明、スマホで購入
  • 大丸東京店~「接客で勝負する売らない売り場」商品購入はスマホで
  • 大丸福岡天神店~ 「リアル店舗連動型クラウドファンディングサービス 」九州の魅力を全国へ発信
  • そごう横浜店~「試着専用」のコート売り場を開設
  • 松山三越~日本最大級の「エイジングケアパーク」がオープン

渋谷西武~オンラインとリアル店舗の融合をテーマにした販売員のいない売り場(2021年9月2日オープン)

売り場 の名前は「CHOOSEBASE SHIBUYA(チューズベースシブヤ)」。

約700平方メートルある売り場には、店舗を持たずネットでの販売を行っているダイレクト・ツー・コンシューマー(D2C)のブランドなど54社が出品している。環境や社会に配慮したサステナビリティー(持続可能性)に関連した商品が多いのが特徴である。

売り場には接客をする販売員はいないが、商品の説明はスマホで閲覧できるようになっている。 ネット販売の商品を実際に目で見て触って確かめられ、自由に商品を試すこともできるのが消費者にとっては大きな魅力である。気に入った商品があれば、スマートフォンでタグのQRオードを読み取りその場で購入できるシステムとなっている。 購入した商品は持ち帰りや自宅への発送など複数の選択肢がある。ネット時代、非接触時代に相応しい新しい店舗の登場である。また、渋谷を訪れる若者など新規顧客の獲得も見込まれる。

大丸東京店~接客力で勝負する売らない売り場(2021年10月6日オープン)

大丸東京店では、商品を売らない売り場が登場した。西武渋谷店とは異なる新しい店舗の登場である。売り場では在庫を置かず商品購入は出店先の企業からネットで直接購入する。大手百貨店では初の試みとなる。

売り場名は「明日見世(asumise)」。約100平方メートルの売り場でゆったりとした空間で商品を見ることができる。西武同様、D2Cブランドに特化した売り場で、ネット販売の商品を実際に見て触れることができ、商品は店頭に設置されたQRコードを読み取ることで出店企業から直接購入できる。

渋谷西武との大きな違いは、百貨店の販売員が常駐することである。研修を積んだ販売員は「アンバサダー」と呼ばれ、企業に代わって商品の説明やブランドの説明を行う。百貨店の大きな武器である接客力が試される。

大丸福岡天神店~「九州探検隊 未来定番発掘プロジェクト」(2021年10月20日スタート)

「写真提供:福岡市」

大丸福岡天神店 の「九州探検隊」とクラウドファンディングサービスで有名な「Makuake(マクアケ)」を運営する株式会社マクアケが九州の活性化を目指し「リアル店舗連動型 応援購入企画」プロジェクトを立ち上げた。生産者の情熱と百貨店の専門知識と掛け合わせて、未来の定番となる新たな商品を開発する。 地元九州の地域産業や経済の活性化支援の一助として九州の新しい魅力を全国に発信していく。

「Makuake」のサイト上に博多大丸パートナーページを開設し、食品やファッション・伝統工芸など地場産業をはじめとする九州エリア内の対象事業者が実施するプロジェクトを掲載し、この商品を店舗で紹介していく。このプロジェクトの原点は、かつて百貨店の全盛期に地域が活性化していた時代と通じるものがあり、地方百貨店ならではの地元密着型の試みである。

リアル店舗連動型クラウドファンディングサービスという新しい試みに注目が集まる。

第1弾の商品として、宮崎ぎょうざ、沖縄のソウルフード「ゆしどうふ」、天草の天然車海老、佐賀県嬉野市の『ナカシマファーム』のチーズケーキ、熊本のクラフトポテトフライの掲載が始まった。

九州探検隊

株式会社博多大丸の「九州探検隊」は、九州119市を3年かけて訪問し
行政と協力して、情報を収集・発掘するプロジェクトです。
九州中に溢れる「モノ」や「コト」を発掘し、広く紹介する事に
よって九州全体の活性化を目指していきます。

「Makuake(マクアケ)」アタラシイものや体験の応援購入サービス

完成された商品やサービスを扱う一般的なショッピングサイトとは異なり、Makuakeでは これから生まれ、世の中に広がっていく商品やサービス を扱っています。応援購入サービスとは、作り手や担い手(Makuakeではプロジェクト実行者といいます)の想いやこだわりに
共感し、応援の気持ちを込めて購入する体験のことをいいます

そごう横浜店~試着専用のコート売り場を開設(2021年11月10日~15日まで)

そごう横浜店では、コロナ禍で減った客数を戻すためにコート売り場を開設した。開設前に顧客に実施したアンケートでは90%以上が試着を希望、50%の人が接客をしてほしくないと回答をしたことから、接客をしない売り場が企画された。百貨店は丁寧な接客が基本であるが、百貨店へ来店してもらうことを第一に、敷居の高さを取り除くことが狙いとのこと。

紳士・婦人服の33ブランド、約100着のコートが自由に試着でき、各商品には商品説明や取り扱い売り場を記載したプレートが備え付けられている。この売り場には、そごうの社員が1名だけ立ち、購入客への売り場への案内などの接客を行っている。また、商品はそごうのアプリからも購入できるようになっている。

松山三越~ 日本最大級のエイジングケアパーク「エイジングケアパーク E3」(2021年11月6日オープン)

松山三越は、30年ぶりに1年間かけた大規模改装を行い、 10月6日に 第1弾 のリニューアルオープンをした。 自前の売り場を中層階に集約し、上層階には全国の三越で初めてホテルを誘致した。新型コロナウイルスの感染拡大をうけ、密を避けるために段階的なオープンを実施し、10月26日に第2弾、12月上旬に第3弾のグランドオープンが予定されている。 その中で注目されているのが、国内最大級のアンチエイジングに特化した「エイジングケアパーク E3」である。

5階・6階に出店する「エイジングケアパークE3(イースリー)」(株式会社E3(三福ホールディングス))は、アンチエイジング権威の愛媛大学医学部・伊賀瀬先生監修のもと、各種検診やカウンセリングで身体の状態をチェックでき、睡眠・運動不足・ストレスに効果的な岩盤浴も設置されている。また、最先端の全身エイジングチェックが可能な厳選された検査機器を取り揃え、心と身体のバランスを測定し一人一人にあったケアを受けることができる。出店スペースは約1000坪にもなる。

情報:2021年8月26日
株式会社マーケットリサーチセンター

2020年に44,124百万ドルであったアンチエイジングの世界市場規模が、2021年から2026年の間に年平均6.1%成長し、2026年までに64,043百万ドルに達すると予測されている。

百貨店の10月売り上げが好調

緊急事態宣言が解除され、外出機会が増えたことにより百貨店の客足が戻ってきている。

大手百貨店の10月売上速報によると、三越伊勢丹ホールディングスでは、三越伊勢丹の合計が前年同月比9.5%増、国内百貨店を合わせた売上高が6.4%増と9月から大きく伸びた。J.フロント リテイリングは、大丸松坂屋に博多大丸、高知大丸を加えた百貨店合計の売上高が前年同月比5.7%増。エイチ・ツー・オー リテイリング株式会社の全社計は前年同月比3.8%増。高島屋は岡山、岐阜、高崎店を加えた売上高が前年同月比5.8%増。そごう・西武11店の売上高は前年同月比6.3%増とどこも好調であった。

年末に向けて、クリスマス、お歳暮ギフト、お正月商品などの売れ行きなどでさらに売上高増が期待されるが、イベントのない月も好調を維持できるかが課題である。上記ような斬新な発想に続く新しいプロジェクトに期待がかかる。