12月インバウンド売上高、17%減
中国人向け売上・客数4割減 訪日自粛要請影響

日本百貨店協会は1月23日、25年12月の全国百貨店における免税売上高(インバウンド売上高)が、2か月連続して前年同月比で減少し、17.1%減の519億3千万円となったと発表した。
日本政府観光局(JNTO)によると中国人訪日客数が約33万人と前年比45.3%と大幅な減少を記録した。これは、中国政府による訪日渡航自12粛要請が影響したもので、免税売上高と客数は、ともに約4割減少した。一方、台湾、タイ、マレーシアは伸長している。

25年の年間免税売上高は約5667億円となった。円安やラグジュアリーブランドの値上げ前需要で23年から約86%増と大きく伸び、過去最高の約6487億円を記録した24年から12.7%の減少となった。
(図表1、3参照)
全国百貨店売上高、5か月ぶりに前年割れ
12月の全国百貨店売上高は前年同月比1・1%減の6542億円余となり、5か月ぶりに前年実績を下回った。休日数が1日少なくなったことに加え、インバウンド売上が前年を大きく下回ったことが影響した。
国内売上は株高による資産効果を背景に、時計・宝飾などの高額品が堅調に推移した。おせちやクリスマスケーキ等の季節商材も好調で、長期連休となった年末商戦では食料品を中心に活況を呈した。25年の年間売上高は、前年比1・5%減少して5兆6754億円となった。その内、国内売上は0・1%減の5兆1087億円にとどまったものの、インバウンド売上高が12.7%と大幅に減少したことが全体の押し下げ要因となった。
インバウンド売上高の全体に占める構成比率は10.0%となり、前年の11.2%から低下した。
購買客数、中国が首位 アジア勢が上位占める
12月のインバウンド購買客数は2か月連続して前年を下回り、約50万人と16.7%減少した。25 年の年間購買客数は、621万4千人となり、24年を17万7千人(2.9%)上回り過去最多を更新した。国・地域別の順位は前月とほぼ変わらず、訪日自粛要請が出る11月中旬以前の来店が多かった中国が最多となり、台湾、香港、韓国、タイ、シンガポール、マレーシアが続いた。アジア諸国が上位を占め、引き続き百貨店におけるインバウンド消費を支えている。
一人当たり購買単価、11か月連続で前年割れ
一人当たり購買単価は前年同月比0.4%減の約10万3千円となり、25年2月以降11か月連続で前年割れとなった。ただし、減少幅は小さく購買単価はほぼ前年並みの水準まで回復している。なお、これまでで最も高かった一人当たり購買単価は24年5月の12万6千円だった。
売上人気商品、化粧品・ハイエンドブランド・食料品・婦人服飾雑貨が上位
売上構成における人気商品は前月とほぼ同じで、化粧品、ハイエンドブランド品、食料品、婦人服飾雑貨、美術・宝飾が上位を占めた。
25年訪日客数、過去最多4270万人

日本政府観光局(JNTO)は1月21日、25年12月の訪日外国人旅行者数(推計値)が前年同月比3・7%増の361万7700人となったと発表した。これは、12月としては過去最高の記録である。
この結果、25年の累計訪日客数は、前年同期比17.0%増の4268万3600人となり、初の4200万人を突破し24年に過去最多となった3687万人を580万人以上上回り、年間の過去最多を更新した。
(図表2参照)
クリスマス・年末年始休暇で増加 韓国・台湾・米国からの需要拡大

12月はスクールホリデーやクリスマス、年末年始にかけて続く訪日旅行人気に加え、円安も追い風となった。韓国や台湾、マレーシア、タイなどのアジア諸国に加え、米国、カナダ、豪州を中心に高い訪日需要が見られ、訪日客数の増加を押し上げた。一方、中国は日本への渡航自粛の影響で、前年同月比45.3%減の約33万人と大きく減少した。
(図表7参照)
韓国が最多 上位5か国で全体の7割弱

12月の国・地域別訪日外国人客数では、韓国が97万4200人で最多となった。続いて台湾(59万人)、中国(30万人)、香港(29万人) 米国(27万人)の順となり、上位5か国・地域で全体の約67%を占めた。
単月で韓国、香港、マレーシアなど過去最多、 豪州、初の年間100万人超え
単月では、韓国、香港、タイ、シンガポール、マレーシア、インドネシア、フィリピンの7か国が過去最高を記録した。
また、12月として過去最高を記録した国・地域は、台湾、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、北欧地域、中東地域の計14市場にのぼり、インバウンド需要の裾野が確実に広がっている。
さらに、豪州は年間訪日客数が初めて100万人を突破し、中国、韓国、台湾、米国、香港、タイに次ぐ7番目の「年間100万人超」市場となった。
中国人旅行者減少も、アジア、欧米豪に裾野拡大

中国人旅行者がインバウンド全体に占める割合は、コロナ前の19年の約30%から25年には約21%へと低下した。一方で、欧米豪からの旅行者は大きく伸び、構成比は約13%から約17%へと上昇した。さらにアジアからの旅行者数も増加しており、インバウンド市場の多様化が一段と鮮明となっている。

政府は、30年の目標である訪日客6000万人、消費額15兆円の達成に向け、さらなる施策を進めていく方針だ。具体的には消費単価の高い旅行者の誘致強化するともに、都市部に偏りがちな観光客を地方へ呼び込むための地方誘客を促進する。また、オーバーツーリズムへの対応も含め持続可能な観光の実現を目指すとしている。
ただ、ある民間の有力な調査機関は、26年のインバウンド旅行者数については、前年比2・8%減の4140万人となり、コロナ後に続いてきた2桁成長が鈍化するとの見通しを示している。中国・香港からの需要減が影響し、旅行者数は前年を下回ると予測されている。24年から25年にかけては、円安や国内物価の相対的な安さ、各国の所得水準の上昇に加え、欧米豪を中心とした日本人気の高まりが追い風となり、訪日需要は大きく伸びた。しかし、こうした押し上げ要因は25年までで一巡するとみられ、26 年は各国・地域の経済成長に伴う海外旅行需要の自然増が、訪日客数を支える主因になると分析している。
(図表4,5参照)
25年暦年インバウンド消費、9・5兆円 中国が過去最高
観光庁が1月21日に発表した25年10〜12月期の訪日外国人旅行者による国内消費額(インバウンド消費)の一次速報値は、前年同期比10.3%増の2兆5330億円となった。この結果、25年の年間インバウンド消費額は24年比0.9%増の9兆4559億円となり、過去最高を更新した。
国別では、中国が2兆26億円(構成比21.2%)で最多となった。続いて、台湾が1兆2110億円(12.8%)、米国が1兆1241億円(11.9%)、韓国が9864億円(10.4%)、香港が5613億円(5.9%)と続いた。
訪日外国人1人あたりの旅行支出は22万9千円で、前年同期比0.9%増となった。国籍別ではドイツが39万4千円で最も高く、次いで英国(39万円)、オーストラリア(39万)が続いた。
費目別では、宿泊費は英国が19万3千円で最多、娯楽等サービス費はオーストラリアが3万5千円で最多、買い物代はシンガポールが10万1千円で最も高かった。
買物代比率減少 高級品需要の一巡が影響か
買い物代の消費額は、24年2兆3952億円から25年は2兆5490億円へと1538億円増加し、前年比6.4%の伸びとなった。一方で、費目別構成比は24年の29.5%から25年は27.0%に低下した。24年には歴史的な円安が買物需要を押し上げたが、25年に入ってからは円高傾向が進んだことに加え、前年から始まった高級ブランド品の値上げ前の需要の一巡も影響したとみられる。さらに旅行者の消費行動が買い物中心から宿泊や食事などの体験型へとシフトしていることも、背景にあると考えられる。
宿泊・飲食費が好調 訪日客は消費、体験型にシフト
訪日外国人旅行者の宿泊費は3兆4617億円となり、前年から7286億円増加した。伸び率は27%に達し、費目別構成比も拡大している。
この増加の背景には、地方の観光地への関心の高まりに加え、欧米やオーストラリアなど遠方からの旅行者を中心に滞在期間が長期化していることがあるとみられる。参考として、宿泊費が多い英国人旅行者の平均泊数は14泊で、香港、台湾の旅行者は平均6泊程度となっている。
飲食費も堅調に推移しており、2兆711億円で前年同期比3271億円増、伸び率は19%となった。
出国税、7月に3倍の3000円に引き上げへ
国際観光旅客税(いわゆる出国税)は2019年に導入され、日本を出国するすべての旅行者から一律1000円を徴収している。航空券代金などに上乗せされる形で徴収され、観光インフラ整備や情報発信などに活用されてきた。12月19日、自民・維新は令和8年度(2026年度)の税制改正に向けた税制改正大綱を決定した。その中で、出国税を現行の1回あたり1000円から3000円へ引き上げること、7月1日の出国から適用する方針が盛り込まれた。増収分は、オーバーツーリズム対策や地方誘客、パスポート取得費用の引き下げなどに充てられる。
ビザ手数料5倍に引き上げへ
現在、訪日ビザの発行手数料は、訪日ごとに取得が必要な一次ビザが3000円、複数回入国できる数次ビザが6000円となっている。政府はこれらの手数料について、26年度中に、G7諸国並みに引き上げ一次ビザを1万5000円程度へ、数次ビザを3万円程度引き上げる方針を固めた。これは1978年以来初めての大幅改定となる。
引き上げによる増収分は、オーバーツーリズム対策などに充てる方針とされている。
免税制度、26年11月リファンド方式に移行
訪日客向けの免税制度も、令和7年度税制改正により、現行の即時免税方式から、海外の多くの国が導入しているリファンド方式(事後還付)に変わる。店頭では、いったん税込み価格で支払い、空港の税関で商品を確認後、返金を受ける。不正転売を防止する目的で11月1日からの施行となる。
こうした一連の値上げや制度変更は、訪日客の購買意欲や消費行動に影響を及ぼす可能性があり、インバウンド消費が回復基調にある現在、今後の売上動向への影響を注視する必要がある。
26年の主なイベント

春には2月中国の春節(旧正月)に続き、世界的な注目を集めるワールド・ベースボール・クラシック(WBC)が開催される。また、秋にはアジア・アジアパラ競技大会の開催が予定されている。このほか、新しいアートイベントとして「TOKYO ATLAS」などが予定されている。
(図表8参照)
