11月インバウンド売上高、2か月ぶりマイナス

百貨店免税売上高は2.5%減の502億円

 日本百貨店協会は12月25日、11月の全国百貨店における免税売上高(インバウンド売上高)が、2か月ぶりに前年同月比で減少し、2.5%減の502億2千万円となったと発表した。

 高額品を含む一般物品がマイナスに転じた一方、化粧品や食料品などの消耗品は前年同月比13.4%増と、4か月連続で二桁の伸びを維持した。

 国・地域別では、中国と台湾が売上・客数ともにプラスを維持し、欧米諸国も堅調に推移した。一方、香港と韓国は二桁の減少となった。

 2025年1~11月の免税売上高累計は5147億円で、円安やラグジュアリーブランドの値上げ前の駆け込み需要で大きく伸びた前年同期(5861億円)と比べると12.2%減となった。
(図表1、2、3参照)

全国百貨店売上高、4か月連続で前年超え インバウンド比率は低下

 11月の全国百貨店売上高は前年同月比0.9%増の5214億円となり、4か月連続で前年実績を上回った。入店客数も1.7%増加した。

 休日が2日多かったことに加え、国内売上が堅調に推移した。気温の低下に伴い、コートなど冬物の重衣料を中心に防寒商材が伸び、売上構成比率が27%と高い衣料品は前年同月比0.2%増となり、全体を押し上げた。

 また、株高による資産効果を背景に、化粧品や時計・宝飾などの高額品が各社の外商顧客向け催事などで7.4%増と好調だった。

 一方、インバウンド売上高の全体に占める構成比率は9.6%となり、前月の11.7%から低下した。

購買客数、中国が首位 アジア勢が上位占める

 インバウンド購買客数は4か月ぶりに前年を下回り、前年同月比2.2%減の50万8千人となった。 国・地域別の順位は前月と変わらず、中国が最多で、台湾、韓国、香港、タイ、シンガポール、マレーシアが続いた。アジア諸国が上位を占め、引き続き百貨店におけるインバウンド消費を支えている。

一人当たり購買単価、10か月連続で前年割れ 減少幅は縮小

 一人当たり購買単価は前年同月比0.3%減の約9万8千円となり、2月以降10か月連続で前年割れとなった。ただし、減少幅は徐々に縮小しており、購買単価はほぼ前年並みの水準まで回復している。 なお、これまでで最も高かった一人当たり購買単価は2024年5月の12万6千円だった。

売上人気商品、化粧品・ハイエンドブランド・婦人服飾雑貨・食料品が上位

 売上構成における人気商品は前月とほぼ同じで、化粧品、ハイエンドブランド品(特選・バッグなど)、婦人服飾雑貨、食料品、紳士服・雑貨が上位を占めた。 中でも、化粧品や食料品などの消耗品カテゴリーは前年同月比13.4%増となり、6か月連続で二桁の伸びを記録するなど堅調に推移した。

訪日客数、11月までに3900万人突破 年間過去最多を更新

 日本政府観光局(JNTO)は12月17日、11月の訪日外国人旅行者数(推計値)が前年同月比10.4%増の351万8000人となったと発表した。これは、11月としては過去最高を記録した。

 1月から11月までの累計訪日客数は3906万人となり、前年同期比17.0%増を記録した。2024年に過去最多となった3687万人を11月時点で200万人以上上回り、年間の過去最多を更新した。

 12 月には年間4000万人を超えることはほぼ確実とみられ、政府が掲げる「2030年までに訪日客数6000万人」という目標に向け、順調に増加基調をたどっている。

紅葉シーズンと円安で増加 韓国・台湾・米国や中東からの需要も拡大

 11月は紅葉シーズンの後半にあたり、継続する訪日旅行人気に加えて円安が追い風となった。韓国や台湾などアジア勢に加え、米国、カナダ、中東を中心に高い訪日需要が見られ、訪日客数の増加を押し上げた。

 国別では、韓国が前年同月比約7万5千人増加したほか、台湾が5・4万人増、米国が5・5万人増となった。さらに、カナダは1・5万人、ロシアは1・3万人増加し、幅広い地域で訪日客数が伸びた。中国も1・6万人増となった。日本への渡航自粛により団体客のキャンセルは増えたものの、個人客の比率が圧倒的に高く(7月~9月期で約84%)、今のところ個人客にはそれほど深刻な影響は出ていない。
(図表3、7参照)

韓国が最多 上位5か国で全体の7割

 11月の国・地域別訪日外国人客数では、韓国が82万4500人で最多となった。

 続いて中国(56万人)、台湾(54万人)、米国(30万人)、香港(21万人)の順で、上位5か国・地域で全体の約7割を占めた。
(図表7参照)

11月までの累計、17か国・地域過去最多、米国初の300万人超え

 11月として過去最高を記録した国・地域は、韓国、台湾、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア、北欧地域、中東地域の計19にのぼり、インバウンド需要の裾野が確実に広がっている。

 また、11月までの累計では17の国・地域(韓国、台湾、マレーシア、フィリピン、インドネシア、ベトナム、インド、豪州、米国、カナダ、メキシコ、英国、フランス、ドイツ、イタリア、スペイン、ロシア、北欧地域、中東地域)で年間での過去最高を更新した。

 さらに、米国が初めて累計 300万人を突破し、中国、韓国、台湾に次ぎ4市場目となる年間で300万人を超えた市場となった。

上位5か国の動向 韓国・台湾・米国が過去最高に

 11月の訪日外国人旅行者数で全体の7割を占める上位5か国の動向は以下の通り。

●韓国:82万4500人(前年同月比10.0%増)。訪日人気の継続に加え、仁川~成田、仁川~鹿児島間の増便など航空座席数の拡大が寄与し11月として過去最高を記録した。

●中国:56万2600人(同3.0%増)。訪日需要が落ち着く時期に加え、中国政府が日本への渡航を控えるよう注意喚起を行ったものの、前年の冬ダイヤ期首と比べて航空座席数が増加していたことから、訪日客数は前年同月をわずかに上回った。

●台湾:54万2400人(同11.1%増)。訪日人気の継続と台北桃園~神戸間の増便などが影響し、11月として過去最高を更新した。

●香港:20万7600人(同8.6%減)。クルーズ船の寄港はあったが、前年の冬ダイヤ期首と比べ航空座席数が減少し、訪日客数は前年同月を下回った。

●米国:30万2500人(同22.2%増)。祝日や航空座席数の増加、クルーズ需要の高まりが追い風となり、11月として過去最高を更新した。

高市首相発言を契機に日中関係が冷え込み中国政府が渡航自粛を呼びかけ、訪日観光に影響広がる

 11月14日の台湾有事に関する高市首相の国会答弁を受け、日中関係が冷え込んでいる。中国政府が自国民に日本への渡航自粛を呼びかけたことで、この1か月間に中国人団体旅行客による訪日ツアーのキャンセルが相次いだ。さらに、中国の航空会社による日本行きフライトの運休・キャンセルや、クルーズ船の寄港・下船取り止めも発生している。

 影響は百貨店やドラッグストアなど小売業界にも及び始めており、各社は中国人客の減少分を他国からの観光客で補おうとする動きを見せている。問題の収束時期は見通せず、影響が長期化する可能性が懸念されている。

買い物消費で突出する中国人観光客
訪日客数・消費額ともに首位、百貨店業界で存在感

 2025年9月までの統計によると、中国人観光客は訪日客数、旅行消費額、買い物代のいずれの項目でも首位となり、日本の観光消費を大きく支えている。

 日本政府観光局(JNTO)によれば、2025年7~9月期の中国からの訪日客数は276万人で国・地域別で最多となり、全体の27.3%を占めた。観光庁の調査でも、同期間の旅行消費額は5901億円に達し、2位の台湾を大きく引き離して27.7%のシェアを占めている。

 支出項目別では買い物代が1941億円でシェア35.8%と突出しており、一人当たりの買い物代も75237円と最も高い。百貨店を中心とした小売業界において、中国人訪日客の存在感は依然として極めて大きい。
(図表4参照)

尖閣国有化で訪日自粛した2012年は回復に1年

 2012年9月の尖閣諸島国有化を受け、中国では大規模な反日デモが発生し、日本への渡航自粛が広がった。これにより中国からの訪日旅行は急減した。

 観光庁の統計では、中国人訪日客数は同年7月に20万人を超えていたが、12 月には5万人台まで落ち込んだ。翌年2月の旧正月期も8万人にとどまり、前年同月比では10月に34.3%減、11 月に43.6%減、12月に34.3%減と大幅な減少が続いた。影響は長期化し、2013年9月になってようやくプラスへ転じた。

 中国からの訪日客が減少する中、台湾からの訪日客数は大幅に増加したことから、訪日客総数は2013年1月に小幅なマイナスとなった以外は増加基調を維持した。(図表5、6参照)

出国税、7月に3倍の3000円に引き上げへ

 国際観光旅客税(いわゆる出国税)は2019年に導入され、日本を出国するすべての旅行者から一律1000円を徴収している。航空券代金などに上乗せされる形で徴収され、観光インフラ整備や情報発信などに活用されてきた。

 12月19日、自民・維新は令和8年度(2026年度)の税制改正に向けた税制改正大綱を決定した。その中で、出国税を現行の1000円から3000円へ引き上げること、2026年7月1日の出国から適用する方針が盛り込まれた。増収分は、国内のオーバーツーリズム対策や地方へのインバウンド誘致、パスポート取得費用の引き下げなどに充てられる。

ビザ手数料48年ぶり引き上げへ

 現在、訪日ビザの発行手数料は、訪日ごとに取得が必要な一次ビザが3000円、複数回入国できる数次ビザが6000円となっている。政府はこれらの手数料について、2026年度中にG7諸国並みの「数万円」規模へ引き上げる方向で調整を進めている。実現すれば、1978年以来初めての大幅改定となる。

 引き上げによる増収分は、オーバーツーリズム対策などに充てる方針とされている。

免税制度、26年11月リファンド方式に移行予定

 訪日客向けの免税制度も、令和7年度税制改正により、26年11月1日から現行の即時免税方式から、リファンド方式(事後還付)に移行される予定である。

 こうした一連の値上げや制度変更は、訪日客の購買意欲や消費行動に影響を及ぼす可能性があり、インバウンド消費が回復基調にある現在、今後の売上動向への影響を注視する必要がある。