デパート新聞 第2655号 – 令和3年1月1日

新年あけましておめでとうございます

2021 States of Tops Message

(一社)日本百貨店協会会長 村田 善郎

コロナ後を見据え、新しい生活様式、変化する消費行動、これらに的確に対応した商品・サービスの提供に努める

(一社)日本百貨店協会会長 村田 善郎

明けましておめでとうございます。

新年を迎え、まずは何より、新型コロナ感染症の一日も早い終息を願うと共に、会員各社、並びに関係先の皆様のご多幸を心よりお祈り申し上げます。

◇ 昨年を振り返って新体制発足とコロナ対応

 さて、昨年は申すまでもなく、世界中が新型コロナに揺れた一年でありました。

 わが国もこの例にもれず、春先の感染拡大の第一波において、全国的に外出自粛を求める緊急事態が宣言され、急激に社会経済活動を停止することとなりました。当時の状況からして、やむを得ないこととはいえ、極めて厳しい局面であったと、今なおその記憶を拭い去ることはできません。

 こうした状況の中、改選期を迎えた昨年5月の当協会総会で、皆様のご推挙により会長を拝命し、新体制を立ち上げております。併せて、「持続可能な社会を目指し百貨店の再創造を!」というスローガンを定め事業活動をスタートいたしました。

 しかしながら、かつて誰も経験したことのない未曾有の難局に直面しまして、会員各社では舵取りの難しい事業運営に腐心されました。お客様と従業員の安全確保を最優先に掲げつつ、新型コロナの特措法、あるいは業界ガイドラインに基づく感染防止対策を講じるなど、様々な制約を受ける中での営業態勢を続けられた訳であります。

 そこで当協会としましても、こうした業界環境を踏まえ、昨年3月に策定していた事業計画を急遽見直しました。その後、7月の理事会で改めて修正計画の承認を得まして、活動を再スタートさせております。コロナ対策で苦しんでいる会員各社、そのご要望に寄り添うことを強く意識しながら、「ダメージを受けた経営の下支え」、「安心安全を優先した運営のサポート」、「『新しい生活様式』における価値再創造」という3つの柱を立て、各社の経営に少しでもメリットを提供すべく、実情に合った事業内容に方針転換した次第でございます。

 どこまでお役に立てたか、紆余曲折ございましたので少々心許なくも感じますが、引き続き、会員各社の皆様の視点に立って協会運営に注力してまいりたいと思います。

◇ 令和3年の展望

コロナ後を見据えた業態価値再創造

 さて、迎えた令和3年に目を転じますと、年末年始の様相も例年とは大きく変容しております。師走の第3波で再度自粛ムードが高まるなど、コロナの感染サイクルが拡大と収縮を繰り返す中、生活者の意識は常に緊張を強いられていますので、「行く年を惜しみ、初春を寿ぐ」といった晴れやかな気分には、中々浸れない状況が続いております。

 従いまして、私ども百貨店が、これからも社会から信頼を得て安定的に事業継続を図るには、引き続き、感染防止対策の徹底が重要となります。百貨店の社会的評価は、一社一店の取組みで獲得できるものではありません。会員各社共に業界をあげて、安心安全な買い物環境を整備することが不可欠ですので、この点、ご理解・ご協力のほどお願いいたします。

 一方、新時代の兆しとして、デジタル化が大きくクローズアップされてまいりました。昨秋に政権移行した菅内閣においても、デジタル庁の設置ですとかデジタル技術の活用を通じた行政手続の簡素化をはじめ、官民を挙げた生産性向上を重点政策に掲げています。デジタルを軸に、時代は大きく変わろうとしておりますので、百貨店業界においても、他の業界に後れを取ることなく、この課題への取組みをどのように加速していくか、皆様と積極的に議論してまいりたいと思います。更に今年は、一年延期されていた東京オリンピック・パラリンピックが開催される予定です。これを見越して、既に昨 年秋からは、入国制限の段階的緩和も始まりました。一般観光客の入国は少し先になりますが、ワクチンの有効性が確認されれば、海外との人の往来は徐々に活性化するでしょうし、インバウンド市場の回復も期待されています。

 また、国内の消費動向においても、日々の暮らしに潤いを与えるような価値の高い商材を求める傾向は堅く推移しており、例えば年末の「おせち」「クリスマスケーキ」「お歳暮」商戦では、前年実績を超えるケースも見受けられました。これはコロナ禍にあっても、お客様は心の豊かさですとか、人と人との絆を大切に考えていることの証左であります。この観点から言えば、お客様が百貨店に求める期待感は、従来以上に高まっていますので、会員 各社の皆様と業界をあげて、新しい生活様式、変化する消費行動、これに的確に対応した商品・サービスの提供に努めてまいりたいと思います。このことが、アフターコロナを見据えた新たな百貨店のあり方、業態価値を向上させるキーとなります。そしてこれを強力に進めるには、お取引先ほか関係各方面の皆様との密接な連携・協働が必要となりますので、ここに改めて、関係先各位のご厚情に感謝いたしますと共に、今後、百貨店に対する一層のご支援をお願い申し上げる次第でございます。

◇ 結びに

 今年の干支は「辛丑( かのと・うし)」。丑年の由来を調べますと、「植物が芽吹くのを待つ状態」、即ち「発展の前触れ」、転じて「大きな目標・成果に向けて努力を重ねる年」となります。

 新年を迎え、事務局共々気持ちを新たに、業界発展を目標として努力してまいりますので、引き続き、協会活動へのご理解・ご協力をお願い申し上げます。

この一年が、皆様にとって実り多いものとなりますよう祈念いたしまして、新春のご挨拶とさせていただきます。

( 一社) 日本ショッピングセンター協会会長 清野 智

リアルとネットを融合したシームレスなサービスを提供してお客様の立場に立った新たな付加価値の創造に取り組む

( 一社) 日本ショッピングセンター協会会長 清野 智

謹んで新年のお慶びを申し上げます。

2020年は、新型コロナウイルス感染症が世界的に拡大し、予期せぬ事態に見舞われた1年となりました。世界中の人々が楽しみにしていた東京2020オリンピック・パラリンピック競技大会が延期となり、4月から5月には緊急事態宣言が発出され、人の移動や活動が強く制限されました。

そうしたなか、ショッピングセンター(以下、SC)は、感染拡大を抑えるために3月下旬から緊急事態宣言が解除される5月まで、休業等の営業制限を余儀なくされたものの、スーパーマーケットやドラッグストアなどについては営業を続けることができ、地域のライフラインを支えました。緊急事態宣言の解除後には、ディベロッパーとテナントが協力し、マスクの着用や消毒液の設置、3密を回避するソーシャルディスタンスの確保など徹底した感 染防止策を講じ、安全・安心な館内環境を維持して営業を続けてきております。

 新型コロナウイルスは、業界や企業が抱えていた課題を一気に浮き彫りにしました。私たちはこれを契機にこれまでのあり方に拘泥することなく、各々のSCがお客様に対して特色ある付加価値を提供するとともに、地域のさまざまな社会問題に向き合い、SC同士、ディベロッパーとテナント同士が互いに切磋琢磨して成長してまいりたいと考えます。

 今年2021年、SCが取り組むべき課題は、以下の3点です。

 1つ目は、リアルとネットの融合です。これまでリアル施設としてのSCは、マーケットニーズに合致した商品展開やお客様に寄り添う接遇サービス、快適な商空間の演出を通じ、お客様に買い物の楽しさを提供してまいりました。一方、新型コロナウイルスが猛威を振るうなか、日本はもちろん世界中でネットショッピングや宅配サービスが大きく成長してきました。私たちリアルのSCにおいても、最近はネットを積極的に活用してきていますが、今後はそれ以上にリアルとネットを融合したシームレスなサービスを提供するなど、お客様の立場に立った新たな付加価値の創造に取り組んでいかなければなりません。

 2つ目は、SC運営における業務の効率化です。SC内の申請手続きやテナントスタッフ研修のオンライン化など、デジタル技術を活用した生産性向上の取り組みが求められています。これは、テナントスタッフの恒常的な人手不足に対応しつつ、営業時間の合理化などSCにおける働き方改革にもつながる取り組みです。

 3つ目は、ビジネスを通じて社会課題の解決に寄与するSC運営です。地域の雇用創出やコミュニティの醸成、有事の際には地域の防災拠点となるなど、暮らしやすい街づくりに貢献しつつ、子育て世代やお年寄り、障がい者、外国人など、誰もが安心して利用できる施設にすることが重要です。

 さらに、再生可能エネルギーの活用や、過剰生産およびフードロスへの対応といった環境対策は、SC業界が取り組むべき喫緊の課題です。他の流通団体とも連携して、SDGs の取り組みを推進してまいりたいと思います。

 新年のSCビジネスフェア2021オンラインでは、多くの方々の英知が集結し、今後のSCのあり方について有益な示唆が得られる場となることを期待しています。

 協会は2023年に設立50周年を迎えます。次の新たな50年を創造すべく、本年も既存事業のブラッシュアップに取り組むとともに、会員企業の発展に資する新たな取り組みに着手し、業界の発展につなげてまいる所存です。

 本年も協会活動への格別のご理解、さらなるご協力をお願いいたしまして、年頭の挨拶とさせていただきます。

㈱三越伊勢丹ホールディングス取締役 代表執行役社長 CEO 杉江 俊彦

変化する社会の課題や要請に応える取り組みを推進し、ステークホルダーの皆さまの豊かな未来と、持続可能な社会の実現に貢献する

㈱三越伊勢丹ホールディングス取締役 代表執行役社長 CEO 杉江 俊彦

 皆さま、あけましておめでとうございます。

 はじめに、新型コロナウイルス感染症に罹患された方とそのご家族、関係者の皆さまにお見舞い申し上げますとともに、お亡くなりになられた方々のご冥福を心よりお祈りいたします。また、医療機関に従事されている方々をはじめ、日々感染拡大防止にご尽力されている皆さまに深く感謝申し上げます。

 2020年は新型コロナウイルスの感染が全世界に広がり、近年経験したことがない重大な危機に直面いたしました。日本国内においても、人々の行動に制限がかかり、私たちの当たり前の日常やくらしが突如として失われました。そして、多くの企業が事業を大幅に縮小・変更せざるを得ない状況に陥るとともに、訪日外国人の激減、社会不安の拡大により、個人消費も大きな影響を受けました。

 三越伊勢丹グループにおいても、政府の緊急事態宣言を受けて、2ヵ月弱にわたり店舗の休業を実施せざるを得なくなるなど、想定を超える大きな影響を受けました。これにより、お客さまをはじめとしたステークホルダーの皆さまには、ご不便やご心配をおかけする大変厳しい1年となりました。

 そのような状況下においても私たち三越伊勢丹グループは、IT・店舗・人の力を活用した新時代のプラットフォーマーとして、新しい価値を創出し持続的な成長と発展を目指して取り組んでまいりました。具体的には、お客さまに店舗へご来店いただいても、オンラインをご利用いただいても、いつでもどこでもシームレスに『最高の顧客体験』をご提供するための基盤の整備として、2020年6月に三越と伊勢丹のECサイトとアプリを統合し、リニューアルいたしました。また、同年11月には伊勢丹新宿本店の一部ショップを対象に、販売員とのチャットやビデオ通話でのコミュニケーションにより、どこからでも店舗の商品をリモートで購入することができる新しいアプリもスタートするなど、コロナ禍の新しい消費行動への対応を着実に進めてきました。一方で、首都圏の百貨店店舗を中心に、展開商品のカテゴリーバランスや店舗運営モデルの見直しにも着手し、リアル店舗ならではの価値ある顧客体験の提供に注力することで、少しずつ目に見える成果が出始めています。 迎えた2021年は、更にスピードを上げて、新しい生活様式やウィズコロナ時代に対応していかなければなりません。三越伊勢丹グループにおいては、将来のあるべき姿を明確に描いた上で、新・3ヶ年計画(2021年度~2023年度)を策定し、当社ならではのオンラインとオフラインのマッチングプラットフォーマー構築を目指し、大きな一歩を踏み出す重要な年となります。

 また、当社は2020年6月にコーポレート・ガバナンス体制を充実させるため、指名員会等設置会社へ移行いたしました。本年はその実効性をさらに高めるべく、業績を向上させることにとどまらず、変化する社会の課題や要請にお応えする取り組みを推進し、ステークホルダーの皆さまの豊かな未来と、持続可能な社会の実現に貢献してまいります。

 逆境の時代が続きますが、むしろ、今こそ変革できるチャンスと捉え、“人と時代をつなぐ”新時代のプラットフォーマーを目指し、スピード感を持ちながら、着実に歩みを進めてまいります。本年も三越伊勢丹グループへの変わらぬご支援を賜りますようお願い申し上げますとともに、皆様のお一人おひとりにとって、実り多き素晴らしい一年となりますよう、心よりお祈り申し上げます。

㈱髙島屋取締役社長 村田 善郎

百貨店でなければ提供できない価値を徹底的に追求し、新たな時代を切り開く価値を創造し提供できるよう挑戦し続ける

㈱髙島屋取締役社長 村田 善郎

 新年、明けましておめでとうございます。

 昨年は、新型コロナウイルス感染症の感染拡大防止に向けた店舗の臨時休業に加え、種々営業条件の制約もあり、大変に厳しい経営環境となりました。加えて、お客様の価値観の多様化はさらに進んでおり消費行動や生活様式が変容しております。こうしたことから、従来の営業スタイルから脱却し、顧客ニーズに対応していくことの重要性を再認識しております。

 感染症拡大については今なお予断を許さない状況にありますが、本年、当社は、あらためて百貨店に磨きをかけて光り輝かせていくことに、グループの総力をあげて取り組んでまいります。当社グループにおいて、百貨店はブランド価値の源泉であり、コア事業であることにいささかも変わりはありません。

 私たちが百貨店再生に向けてこだわるべきことは、「百貨店でなければ提供できない価値とは何か」を徹底的に追求していくことであります。百貨店が持つ立地特性を生かしたワンストップの利便性や編集力、文化発信、百貨店ならではのEC提案など、お取引先との協働により時代性やお客様ニーズを捉えた品揃えやサービスを実現してまいります。そして髙島屋グループの総力を結集することで存在感溢れる百貨店へと再生を果たしてまいります。

 当社は本年1月、創業190周年を迎えます。当社の伝統は、まさに革新の連続であります。創業200年に向けて、コロナを契機に経営や営業の在り方を変革していくとともに、新たな時代を切り開く価値を創造し提供できるよう挑戦し続けてまいります。

㈱小田急百貨店代表取締役社長樋本達夫

「”集客”により街の魅力を高め、賑わいの核となる商業施設」を提供し、時代の潮流を捉えた「未来型商業モデル」を構築する

㈱小田急百貨店代表取締役社長樋本達夫

2020年は、新型コロナウイルス感染症の世界的流行という未曽有の事態に見舞われ、臨時休業や営業時間の短縮を余儀なくされるなど、百貨店業界も甚大な影響を受けた年でした。在宅勤務や時差通勤といった新しい働き方の定着や、人との接触回避に伴うオンラインコミュニケーションの拡大など、新しい生活様式の浸透により、お客さまのニーズや購買行動は劇的に変化しており、当社のみならず業界全体としてその対応力が求められています。

 そうした中当社においては、緊急事態宣言中は、生活インフラとしての役割を果たすべく各店の食料品売場のみ継続営業し、地域のお客さまからの支持獲得に努めました。営業再開後は、新宿店でのオンライン接客やライブコマースのトライアル、サテライト店・あつぎでの買い物代行サービスの導入、町田店での優良顧客を対象とした特別販売会の実施などの新たな施策を講じて、顧客接点の維持・拡大を図ってまいりました。

 売上や会員数が拡大しているeコマースでは、サイトの操作性と安全性を向上させるべく大幅刷新したうえで、従来のギフトやフード、コスメに加え、ベビー・キッズ、紳士洋品、時計、実店舗で休止した物産展など商品カテゴリーを拡充させたほか、店頭受取り、画面共有、在庫レス販売など新たなサービスを導入し、着実に成果に結びついています。また、外部ECモールへの出店にも積極的に取り組み、新規顧客の獲得に繋げています。

 さらに、WeChatミニプログラム「橙感(チェンガン)」を通じた中国向け越境EC事業の本格稼働や、ギフトをテーマにした自主編集小型店「オクルシタテル」の外部出店、オリジナル米菓ブランド「かぶきあげTOKYO」の卸事業の拡大など、既存店舗事業以外の収益源の開拓を進めており、本年も継続して事業の拡大と強化を推進してまいります。

 当社は、いつの時代においても「“集客”により街の魅力を高め、賑わいの核となる商業施設」を提供する企業となることを中長期ビジョンとして掲げ、その実現に向けて、「創造への挑戦」をテーマに経営構造改革を推進してまいりました。2022年度着工予定の新宿駅西口地区の再開発が目前に控える中、2021年は、小田急グループ内外における当社の存在価値の実現に向けて非常に重要な年であり、既存の百貨店ビジネスモデルから脱却すべく、よりいっそう強い改革の推進が必要であると捉えております。

 いまだコロナ禍の収束は見通せませんが、引き続き感染拡大防止に努めながら、本年はリアル店舗に求められるより高い付加価値の提供を目指します。環境変化に柔軟かつ迅速に対応した営業施策や組織顧客の特性を踏まえた買い上げ促進策の実行、デジタル技術を活用した販促による来店動機の創出やデジタルマーケティングの推進など、時代の潮流を捉えた「未来型商業モデル」の構築に向けて、全社一丸となって挑戦してまいります。

㈱東武百貨店代表取締役CEO兼社長 社長執行役員 國津 則彦

お客様のニーズにきめ細かくお応えし、豊かな暮らしのお手伝いを進めることで真の『マイストア』を目指す

㈱東武百貨店代表取締役CEO兼社長 社長執行役員 國津 則彦

新年のご挨拶を申し上げます。

 令和の幕開けやラグビーワールドカップに沸いた2019年とうって変わり、昨年は体験したことの無い事態が続く中で多くの企業や国民が判断力・行動力を試された年でした。生活に影響を受けた皆様や感染に苦しまれた方にお見舞いを申し上げると共に、この事態に果敢に対処されている医療関係の方々に国民の一人として心より感謝を申し上げたいと思います。

 東武百貨店では感染拡大防止の観点から、当初よりお客様と従業員の安心安全を第一に対策を行いました。3月からの営業時間短縮や土日の臨時休業を経て、政府の緊急事態宣言発令後は食品フロアの一部を除き49日間の臨時休業を行いました。この臨時休業中も地域のお客様の為に社員が一丸となって努力したことは誇りに思っております。

 弊社は中期経営計画の中で「地域、沿線顧客の『マイストア』としての地位の確立」を目標として参りましたが、昨年1年を通じあらためて池袋本店、船橋店各店の近隣のお客様のありがたさを感じています。休業中も食品フロアは多くのお客様にご利用頂きました。徒歩圏内の住宅地のお客様に対し、コロナ下の日常生活の中で「マイストア」の役割を果たせた事は従業員にとっても大きな励みとなりました。営業再開後は更に『お客様の日常に必要な品揃え・サービスとは何か』を考え、これまで扱いの無いオリジナルのマスクやマイバッグの企画販売、衛生・防災用品の展開に力を入れました。「イエナカ需要」では新しいカテゴリーも注目されました。百貨店らしい上質なキッチン・リビング用品や家具・インテリア、健康とヒーリングなどは催 事も含め拡大しました。また従来の百貨店の概念に捉われないMDとして、池袋本店紳士フロアでは折りたたみ自転車売場や盆栽教室の導入でリモート生活でのライフスタイル・趣味の提案もしています。池袋本店、船橋店両店に現代の新しい供養スタイルを提案する「はせがわ」導入も行いました。船橋店では地元プロスポーツクラブとのコラボや生産者応援で地域の盛り上げにも積極的に貢献しています。

 2020年はCSRの取り組みも強化しました。レジ袋有料化に向け3月から「地球を大切に」をコンセプトに全社で「マイバッグキャンペーン」を実施しました。紙袋も有料化しましたが、キャンペーンがお客様に浸透していたことでスムーズに移行することが出来ました。また「従業員の生活の質の向上」を目的にお取引先販売員を含む働き方改革にも着手しました。初売りを皮切りに段階的に池袋本店、船橋店両店で営業時間を短縮し、この年末年始は更に短縮しました。生活様式の変化もあり、お客様には想定以上にご理解をいただいています。今後は更に業務改善・構造改革を進め、短い時間でもご満足いただけるレベルの高い接客を目指すと共に、従業員にとっても魅力のある企業にして参りたいと思います。

 2021年は益々地域、沿線顧客の「マイストア」としての真価が問われる年となります。百貨店らしい質の高いおもてなしと環境、新しい生活に寄り添った品揃えに加え、安心安全の取り組みで期待以上のリアルなお買い物体験の提供はもちろん、ご来店しなくてもご満足いただけるECの構築や新規外商事業などお買い物チャネルの拡充に取り組みます。変化するお客様のニーズにきめ細かくお応えする催事場も増やし、豊かな暮らしのお手伝いを進めることで真の『マイストア』を目指します。本年も、皆様方の益々のご支援ご協力を賜りますよう、よろしくお願い申し上げます。

㈱東急百貨店代表取締役社長執行役員 大石 次則

「融合型リテラ―」を推進し、新しい生活様式の様々なシーンにおいて「生活サービス提案企業」として、より豊かな生活の実現に貢献する

㈱東急百貨店代表取締役社長執行役員 大石 次則

2020年は当社にとっては東横店上層階が営業終了した大きな節目の年であり、コロナ禍の厳しい状況の中で中期経営計画の最終年度として「融合型リテーラー」の実現を推進した年でもありました。4月に組織改正を行い、戦略地区である渋谷各店を総括し効率的に運営するための「渋谷戦略事業部」、地域のニーズに合わせた専門店の出店から運営まで一貫して担当する「専門店事業部」、マーケティングに基づいた戦略策定、新規事業の開発、デジタルシフトへの取り組みを担当する部署として「事業戦略室」を新設しました。

 新しい組織のもと、コロナ禍の逆風の中でも渋谷地区で「東横のれん街」の移設オープンや「渋谷東急フードショー」のリニューアル第一弾を実現し、五反田に「+Q(プラスク)スタイル」、自由が丘に初の路面店「自由が丘東急フードショースライス」を出店することができました。同時にコロナ禍によって大きく変化した生活様式や価値観に対応する新しい試みも実施しました。デパ地下のデリバリー、ライブコマース、越境EC、LINEでの情報発信強化など様々な施策を行いました。また東急グループと楽天との連携の中で、楽天ポイントの利用受け入れを本格的にスタートさせたことも 重要な取り組みでした。

 緊急事態宣言を受けての4・5月の休業は大きなダメージでしたが、その後は想定よりも良い売り上げで推移しています。

 本年は、2020年に起きた変化がさらにスピードをもって進んでいくと考えています。オリンピック・パラリンピックの開催動向に注意を払うことはもちろん、テレワークやイエナカ、アウトドア需要や地元密着型ライフスタイル、SDGsへの注目度の高まりなど新しい生活様式の中で生まれた消費傾向もさらに強まっていくと想定しています。

 そのような変化に対応するためにも、当社は新しい中期3か年経営計画の初年度として「融合型リテーラー」のさらなる推進に取り組んでまいります。

 起点となる百貨店においては、構造改革を進め店舗運営の効率化を図り、お客様の新しいニーズに対応したMDの構築に取り組んでまいります。渋谷戦略としては、初夏にはデパ地下ブームの先駆けとなった渋谷東急フードショー渋谷地下街エリアのリニューアルを完成させ、戦略地区である渋谷において存在感を高めていきます。専門店事業では地元での生活時間拡大に対応し、地域のお客様のニーズに寄り添ったより利便性の高い店舗運営を行います。EC・通販サイトの拡充をはじめ、2020年に立ち上げた様々なオンライン販売の発展や導入した楽天ポイントの効果的運用など、デジタルを活用した施策も重要な取り組みです。また、関連会社の人材派遣サービス事業においては、百貨店で蓄積したリソースを生かし、グループ内はもとより外部企業へアプローチを増強してまいります。

 当社が百貨店事業で培った編集力、目利き力を生かして事業構成の多様化を図る「融合型リテーラー」を推進し、あらゆる場面でお客さまとの接点の拡大を図ることで、新しい生活様式のさまざまなシーンにおいて「生活サービス提案企業」としてより豊かな生活の実現に貢献してまいります。

㈱松屋代表取締役社長執行役員 秋田 正紀

「チャレンジ精神」と「創意工夫」に力を注ぎ、松屋グループを独自性の強い個性溢れるブランドに磨き上げる

㈱松屋代表取締役社長執行役員 秋田 正紀

昨年は新型コロナウイルス感染症の拡大により、私たちを取り巻く世界は一変しました。過去に経験したことのない世界規模の衝撃は、社会構造や消費構造を大きく変えようとしています。本来であれば昨年夏には東京オリンピック・パラリンピックが開催され、銀座地区は国内外のお客様で大いに賑わうことが期待されていましたが、残念ながら新型コロナウイルス感染症は拡大の一途をたどり、国内はもちろん世界各地で収束の兆しは見えていません。そのため小売業、特に百貨店への影響は長期化することが懸念されます。

 こうした中、当社は『デザインによる、豊かな生活。』を実現することをめざし、独自性を磨き上げていくことに注力してまいりました。不要不急の外出を控える顧客動向を見据え、インスタグラムによる情報発信の強化のほか、「松屋メンズクラブ」等ではオンライン接客をスタートさせ、外商部門においてもテレビ通販等を活用し、利便性の向上に向けた新たな開拓を推し進めたほか、「LINEWORKS」を活用した一対一のコミュニケーション強化など、新たな取組みを実施しました。一方、今まで以上にリアル店舗が持つ価値も高まっており、展覧会催事では日時指定制で入場客数を抑制し、会場も通路幅を広く確保してお客様同士との接触機会を減らす等「密」の回避に注力した上で開催し、限定商品の拡充や通販強化等様々な工夫により、大きく売上を伸ばしました。

 本年は、引き続き、常に「気遣い」を心掛け、一丸となって「デザインによる、豊かな生活。」の実現を推し進めてまいります。銀座店では、年間を通じて百貨店の強みであるギフトプロモーションを強化してまいります。またデザイナーや作り手との協業を進め、日本のモノづくりの応援にも力を入れます。さらに、昨年実験的に導入した新しい販売手法も益々進化させ、取り組んでまいります。また浅草店は本年開店90周年を迎えます。お客様への感謝企画等、地元密着型の店として絆を大切にした取組みを進めてまいります。

 コロナが収束した後の「アフターコロナ」では、お客様の価値観、行動様式が大きく変化することが予想されます。そして、その変化にどう対応していくかが、今まさに私たちに求められています。ECの飛躍的な台頭やICTビジネス活用の進化等、「デジタルの大波」が加速し、従来の百貨店ビジネスは歴史的な分水嶺にあると言っても過言ではありません。しかしながら、当社グループが150年を超えて繁栄を保ち得ているのは、直面している様々な時代の変化や困難に対して「チャレンジ精神」と「創意工夫」に力を注いできたことにあります。社員全員一丸となって、松屋グループを独自性の強い個性溢れるブランドに磨き上げてまいります。

㈱京王百貨店代表取締役社長 駒田 一郎

大きく変化した事業環境(ニューノーマル)に適合し、お客様、お取引先様、従業員とともに新しい時代を歩む

㈱京王百貨店代表取締役社長 駒田 一郎

あけましておめでとうございます。
昨年は、新型コロナウイルスの感染拡大により国内外の経済、社会に大きな影響を与えることになりました。百貨店業界にとりましても、長期にわたる臨時休業や時間短縮営業を余儀なくされたほか、外出自粛や訪日外国人の消滅など未曾有の事態に直面したとともに先行きについても未だ不透明な状況が続いています。

 当社は昨年、中期経営計画最終年度として、集客力強化と客層拡大による売上高の確保、オペレーション改革による生産性の向上およびコスト構造の見直しによる、利益指向経営を目指してまいりました。しかしながら、コロナ禍にともなうお客様の生活様式やニーズなど新たな状況に対応するため、店頭におけるカテゴリーバランスの見直しや、ECをはじめとする販売チャネルの多角化等諸施策に取り組んでまいりました。

 迎えた2021年は、社会の価値観はさらに変化していくと予想されます。昨年顕在化した課題に対処するとともに、構造改革をさらなるスピード感をもって進めてまいります。具体的には、立地の優位性を活かした店頭売上に依存するだけでなく、成長するEC事業をさらに強化していきます。また、CRMによる顧客接点の拡大や、シームレスなサービスの提供など、店舗との連携を図ることによって増収に努めます。一方で利益改善の観点からローコスト運営を継続・推進してまいります。

 新宿店では、アフターコロナを見据えたMDの改編、デジタルとの融合による顧客アプローチの強化を行います。聖蹟桜ヶ丘店では、地域密着型の郊外百貨店への顧客回帰を収支改善の機会と捉え、せいせきSCと連携しながら地域の百貨店需要を積極的に取り込んでまいります。サテライト事業においては、新宿店やECサイトの商品を受け取れる仕組みづくりや、常設型だけでない期間限定やカテゴリーに特化した店舗など多様な出店形態を検討します。

 当社は引き続き、大きく変化した事業環境(ニューノーマル)に適合し、お客様、お取引先様、従業員とともに新しい時代を歩んでまいります。

 最後になりましたが、皆様のご健勝とご多幸を心から祈念し、新年のご挨拶とさせていただきます。

11月東京は17.8%減

 日本百貨店協会は、令和2年11月東京地区百貨店(調査対象12社、25店)の売上高概況を発表した。売上高総額は1169億円余で、前年同月比マイナス17・8%(店舗数調整後/14か月連続マイナス)だった。店頭・非店頭の増減は、店頭マイナス16・4%(91・6%)、非店頭マイナス31・1(8・4%)となった。
※()内は 店頭・非店頭の構成比

百貨店データ

  • 3社商況11月
  • 11月店別売上前年比(%)
  • 都内各店令和2年11月商品別売上高

新しい時代に根ざしたデパートになろう

デパート新聞社 社主
田中 潤

 デパート新聞読者の皆様

 新年おめでとうございます。

 コロナ禍で1年が過ぎていった2020年。日本人の価値観も大きく変ってきています。その中で、具体的にはっきり見えてきたのは、東京を中心にした大都市一極集中の弊害です。コロナ感染リスクはもちろん、様々な災害が生じたときの不安も急速に増幅されました。

 私たちは、この一年間の経験で自分の身は自分で守るしかないという覚悟を持ちました。そのためには、如何に感染しないようにするか、災害が起こっても助け合いのできる環境に身を置くかが、当然問われます。

 大都市から離れることが最も困難だったサラリーマンの多くが事業者の方針で、簡単に自宅勤務をするようになったのは大きな追い風です。必ずしも出社しなくても出来る仕事が沢山あるということに気づくことが出来たことで、コロナに係わらず今後も新しい勤務態勢へと移行していくでしょう。それは、地方移住への流れを加速します。

 一方、資本主義の在り方もコロナ禍での社会において、急激に変化しています。株主第一主義からの脱却、すべてのステークホルダーへの目配り、つまり、思いやり社会づくりへの貢献こそ、企業の存在意義として広く認知されはじめているのです。不特定多数の人々のことを誠実に考えた対応が営利法人にも求められる時代になってきたのです。

 前述した社会の変化に対して、百貨店が担う役割は重大です。大都市でのビジネス優先主義を止め、地方、地域の中でランドマークとなり、そこに居住する方々の心の安らぎの場、コミュニケーションの場となることこそ、これからのデパートの目指すべき一つの道と言えるでしょう。

 そして、それは今までデパートが培った歴史上の文化と経験を捨て去ることではなく、その無形の財産をまさに活かしていくことに他なりません。自社のための利益に固執する方針と決別し、社会のための一歩を踏み出す時なのです。

 本年の皆様のご健勝を祈念申し上げます。

地方百貨店の時代 その7 人事交流からみた無形資産の構築

デパート新聞社 社主
田中 潤

 そもそもデパートは、週に1日は定休日があったり正月の三が日も休みになるなど年間の休店日は40日〜50日はあったのだが、ある時期からは元旦から営業を行うなど、店を閉めることは異常なことと考えるようになってしまった。

 店を開けなければ売上が出来ない、利益が出ないと、いう実に短絡的思考である。コロナ禍やネット通販の拡大などEコマースが進んだことで、多少動きに変化は起きているものの、店を閉めない意義についての本質的議論は未だされていない。

 かつてデパートは、定休日を設けることで休みを活かした社員同士の交流が非常に豊かであった。一斉に休みなので、売り場ごとの小旅行や全社あげての運動会、親睦会なども可能であったのだ。また、休日を使って社員研修なども頻繁に行われ、社員の自己研鑽がなされた。市価調(市場の価格調査)と称し、数名で近隣同業者のマーケティングリサーチなども頻繁に行われた。どれも直接収益獲得につながるわけではないが、将来的にデパート運営にプラスに働くだろうことは容易に予測できることである。何より、社員のコミュニケーション能力の育成に大きな役割を果たしたのである。

 定休日を無くしたことは、これらを合理性の無いこと、無駄なこととみなしてしまったことに他ならない。決算書の損益計算書上収益を生まないにも係わらず、費用として支出だけが発生することを安易に否定してしまったわけである。それは同時に、貸借対照表上は資産にならないもの、つまり、「人材の価値」を切り捨てていったことも意味する。人材の価値評価を資産に計上出来ないことは、デパート業界のみならず、すべての業界でも同様の課題であるが、人に物を売ることを最大のテーマとするデパート業界においては、人材の価値評価は突出して重要である。この価値を経営者が可視化できなかったことは、大きな痛手であった。しかし、まだチャンスはある。

 デパートの存続性は、実のところ資産としては金額表示されない無形の資産をどれだけ多く持っているかにかかっている。都市部に比べ人材の流動性が弱く、長い期間従業員の雇用を保全できた地方のデパートはここに着眼し、今いる人たちの適正の再認識と保全の態勢を作り、更に育成を心掛けることが極めて大きなポイントである。

 新型コロナウイルスで振り回された1年が終わり、新しい年を迎えたが、情勢は変わっていない。感染力のより強い変種も生まれている。島国である日本は、海外からの入国者をしっかり制限できていればニュージーランドのように死者0を毎月続けることも可能であったと思うと、政治と行政の平和ぼけ体質・無責任感覚は、私たちの心に重くのしかかってくる。歴史を振り返っても、有事には英雄が生まれる。政治を司る立場の人として、最大の資質である「責任感とコミュニケーション能力」のない政治屋たちを凌駕するスーパーヒーローの誕生を日本人は強く願っている。

無駄なこと part3 無駄と雑の違い

犬懸坂祇園
作詞、作曲などをしております

 あるものがない時、それを探すことはよくある。昔、よく言われたことだが、スチュワーデスが乗客から、「A(例えば、単3の電池だとしよう)はない?」と尋ねられる。スチュワーデスは自身の記憶或いは常識で絶対ないと分かっていても、一度ギャレーに戻り、在庫の確認をする。そして、改めて、乗客にAはないということを詫びる。こうしたやりとりは、スチュワーデスが無駄だと主観的には思っていることも顧客のことを思いやってわざわざ行うのである。

 結果的に本当にあったということも皆無ではないだろうし、予想通りなかったとしても顧客はスチュワーデスの努力に対して納得をするわけである。もし、その場の問答で「ありません」とピシャッと言われれば、「もしかしたら、あるかもしれない」との思いとともに思いやりの無さを強く印象付けられてしまうことになる。ものを主観的に考えると自己の合理性が優先し、相手の思いが見えなくなってしまうことは少なくない。これも一期一会の心得であろう。

 人は、自分の願いに対して合理的な発想がなされるとあまり嬉しくない。さて、最近の客室乗務員はこうした場面で、どのように動いているのであろうか。

連載:デパートのルネッサンはどこに有る? - 閑話休題「夢のオリンピック」

2021年に東京オリンピックを開催出来る、と考えている人は全国にどれだけいるだろう。
12月15日にNHKのアンケート結果が発表された。

結果は、

開催すべき27%
中止すべき32%
更に延期すべき31%
NHKのアンケート

続きは デパートのルネッサンスはどこにある? 2021年01月01日号 を御覧ください。

年頭所感

編集長

2020年3月15日号の本紙コラムに於いて筆者はこう書いている。

《これから我々デパート新聞は「みんなで」デパートのルネッサンスを考えて行きたいと思います。デパートには公益性が不可欠です。悪しき島国根性で、自分だけが儲かりたい、幸せになりたい、ではなく、「みんなで」「みんなの」幸せを追求していくのが、みんなの憧れていたデパートの真の姿ではないでしょうか。
デパ地下や化粧品フロア以外でも、お客様が「目を輝かす」デパートを、みんなで考えて行きましょう。》

 この原稿を書いてから、およそ10ヶ月が経過した。ご承知の通り、この後我が国は未曽有のコロナ禍に見舞われ、デパートを含む小売業界はおろか、国民の日常生活自体を見直さざるを得ない状況に陥った。本紙が命題である百貨店の「在り方」を語る時にも、コロナへの言及を避けては通れなくなった。否応なく。本紙が「デパート消滅都市」や「百貨店の大閉店時代」というテーマで、特に地方百貨店の苦境や奮闘を取り上げる時にも、コロナ自体がそれを加速させるファクターとして、大きく影を落としてきた。

 我々一般市民だけでなく、政治家や専門家と呼ばれる先生方も、コロナの見通しを、最初は1〜2ヶ月、それから半年と先延ばしにし、とうとう一年越しの災厄になってしまった、という認識ではないだろうか。

 いろいろな方が言及しているが、2020年は『コロナの年』として後世に伝えられる事になる。東京オリンピックの中止は、もはやその派生事案の一つでしかない。

 2020年を振り返ると、どうしても以上の様な総括になってしまう。しかし、先に掲げた『デパートのルネッサンス』というテーマは、終わりの見えないコロナ禍であっても、継続して追い求める「価値」のあるミッションであると、今だからこそ、強く思う。

 キーワードは「みんなで」だ。コロナ禍であっても、いや、皆がコロナに直面した今だからこそ、サステイナブルや、SDGs の考え方や精神が、企業や一般市民にも浸透し始めている。一人ひとりが自分のコトだけでなく、社会全体のQOL を考える契機として。どうせなら「コロナを逆手に取って」より良い生活、より良い社会、より良い未来を実現するチャンス、と考える発想力が必要なのだ。

 本紙社主も言及している様に、百貨店はその地のアートやカルチャーの発信基地として、その地に暮らす人々「みんなの」ランドマークとなるべきなのだ。

 もちろん、食や健康、そして「選ぶ楽しみ、過ごす楽しみ」といった、地方百貨店が今まで担ってきたベースはそのままに。

 こう書くと、全世界的なムーブメントを、地方の百貨店に矮小化させたかの様に見えるかもしれない。しかし今、市井に暮らす人びと、一人ひとりのライフスタイルが、( コロナにより否応なく) 変革を求められている。百貨店は、その市民の「足元の」サポート拠点としての役割を、果たして行かなければならない。

 紙面も尽きかけている。筆者は引き続き、百貨店関係者や顧客と、同じ目線を共有し、決して上から目線にならぬ様に、自らを戒め、筆を進めて行く。
この場を借りて、購読者の皆様に改めて御礼申し上げたい。そして、誰にとっても厳しい新年ではあるが、例年以上に健康に留意し、お過ごし
頂ければと願っている。

横浜髙島屋 食料品売場が1.5倍に

~ 2021年春までに順次オープン 日本最大級の食品売場誕生― ~

㈱髙島屋の11月12日付ニュースリリースによると、横浜髙島屋地下食料品フロアは、4段階の改装を経て、2021年春に売場面積を約1・5倍の約5000㎡(2019年8月比)に拡大し、スウィーツや酒、ベーカリーなど百貨店の強みとなる商品を拡充し、よりライブ感・トレンド感のある日本最大級の売場に生まれ変わる。

 その一環として、12月11日(金)に地下食料品フロア増床エリア第3期オープンにより、「F o o d i e s ‘P o r t( フーディーズポート)」として新たにスタートした。

スウィーツ・酒が充実

 今回の改装では、主にスウィーツ、酒、グローサリー売場を拡充。さらに自社が提案する“コンビニエンスな食のセレクトショップ”「hamapla(ハマプラ)」もオープンし、近隣に増加するオフィスワーカーを中心に需要を取り込むほか、本館エリアを「Foodies’ Port1」地下街エリアを「Foodies ‘ Port2」と改称し、増床エリアとの回遊性を意識した品揃え、店舗環境にすることで、より多くの顧客に対応する。

第3期オープンのポイント

  1. 百貨店商材を中心とした “コンビニエンスな食のセレクトショップ”「hama-pla(ハマプラ)」
  2. 「日本初登場6ブランド」「横浜地区初登場4ブランド」含む全17ブランドの「スウィーツマーケット」
  3. 売場面積約2 倍(2019年8月比)に拡充、赤星慶太氏監修のフードペアリングバーも併設の酒売場
  4. 美と健康を意識した米糠専門店
  5. 横浜地区のお客様ニーズの多い珈琲・紅茶専門店

「hama-pla(ハマプラ)」とは、地元企業「ジョイズベーカリー」と共同で新たな業態を開発。横浜駅周辺の環境変化、コロナ禍における消費スタイルの変化に合わせて、新たな需要を喚起するため、華正樓や勝烈庵などの百貨店商材を中心とした食料品特化型の“コンビニエンスな食のセレクトショップ”である。
気軽に購入できる弁当や惣菜、パンやスウィーツや品質にこだわったコーヒーやスープ類とイートインコーナーも併設している。

営業時間は、朝8時から

 また営業時間は、百貨店としては珍しい朝の時間帯も営業し午前8時~午後9時(※土日祝は午前10時~午後9時)と駅利用客や近隣オフィスワーカーにもご利用しやすい時間帯となっている。さらに、ハマプラは多くの顧客が来店する地下街メイン導線に面した店舗であるため、短時間で商品の一括識別から決済まで可能な設置型AIレジ「ワンダーレジスター」が導入されている。

 和洋酒売場の面積は約2倍(2019年8月比)に拡大され、「発見・楽しい・伝える」をコンセプトに「日本酒」「蒸溜酒」「ワイン」「フードペアリングバー」「レ・カーヴ・ド・タイユヴァン横浜」の5つのゾーニングが構築され、ビギナーからプロユースまでそれぞれのニーズに対応する品揃えに拡充されている。

 今後、2021年3月頃には4期目となる改装(ベーカリー拡充(約400㎡)、惣菜ブランドオープンや洋菓子ブランドオープン)を経て、日本最大級となるデパ地下フロアが完成する予定である

デパート新聞 紙面のロゴ
昭和24年10月創刊
百貨店に特化した業界紙
デパート新聞 購読申し込み