2020年世界の百貨店事情~アメリカ
アメリカ大手百貨店の経営破綻が続く
数年前から経営が悪化していたアメリカ大手百貨店は、新型コロナウィルスの影響で休業を余儀なくされ、経営不振に追い打ちをかける形となっている。老舗百貨店がコロナ禍で次々と経営破綻を発表している。今後もコロナの波は収まることなく次々に百貨店を飲み込んでいく勢いだ。
「ニーマン・マーカス(Neiman Marcus)」~米大手百貨店でコロナ禍での初の経営破綻~2020年5月7日
2020年5月7日、米国連邦破産法第11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請したと発表した。アメリカ国内での新型コロナウイルス感染拡大を受けて43店舗を臨時休業したことにより、資金繰りが悪化していた。「ニーマン・マーカス」は、テキサス州ダラスで1907年に創業。ロサンゼルスのビバリーセンターやニュージャージーのパラマスにある高級ショッピングモール「ガーデンステートプラザ」、ハワイのホノルルなどに43店舗を構えていた。
経営破綻後も営業継続が発表されていたハワイ、アラモアナセンター内にある「ニーマン・マーカス ホノルル」店は、3月より新型コロナウイルスの影響で休業していたが、7月29日(水)に営業を再開した。
9月4日、経営破綻した米高級百貨店ニーマン・マーカス・グループは、月末までに連邦破産法11条の適用から脱却する見通しと発表した。債務再編計画の下、40億ドル超の債務を削減できる公算が大きいという。
JCペニーが経営破綻~2020年5月15日
米百貨店大手のJCペニーが5月15日、米連邦破産法11条(日本の民事再生法に相当)の適用を申請し、経営破綻した。近年は通販の台頭により経営不振に陥っていたが、新型コロナウイルスに伴う営業停止が追い打ちをかけた。
同社は、米国とプエルトリコでおよそ850の店舗を運営しているが、新型コロナウイルスの影響でその全店を一時休業していた。本社も含めて9万人ほどいる従業員の大半を一時解雇している。負債総額は5300億円にのぼる。
JCペニーは、1902年にワイオミング州リンカーン郡ケメラーにてジェームズ・C・ペニー、トーマス・M・キャラハンとウィリアム・G・ジョンソンに よって創業されたアメリカ大手の百貨店チェーンであった。
「ロード・アンド・テイラー」が200年の歴史に幕~新型コロナウイルスの感染拡大が経営困難に追い打ち~2020年8月2日
「ロード・アンド・テイラー」は、2020年8月2日、日本の民事再生法にあたる連邦破産法第11条の適用をバージニア州の破産裁判所に申請し、経営破綻した。その親会社である新興ファッションテック企業ル・トート(LE TOTE)も同時に破綻した。「ロード・アンド・テイラー」は、1826年に創業したアメリカ国内で最も古い200年の歴史を持つデパートである。アメリカ国内の主要都市で店舗を展開していたが、近年はインターネット通販の普及で経営が低迷していた。
2019年1月には100年以上にわたって店を構えていたニューヨーク5番街の旗艦店舗(1914年オープン)が閉店。ニューヨーク市に本社を置くコワーキングスペースのマネジメント会社WeWorkに売却された。その後WeWorkからアマゾンがビルを買い取っており、売却額は約11億5000万ドル(約1213億円)にのぼると報じられている。
2019年8月には前の親会社だったハドソンズ・ベイ・カンパニー(HUDSON'S BAY COMPANY)からル・トート(トートはサンフランシスコ発のファッションレンタルのサブスクリプション・サービス企業)に7500万ドル(約79億円)で売却され、経営の立て直しが図られてきた。
2020年2月頃から新型コロナウイルスの感染拡大で多くの小売店が休業を余儀なくされ、およそ40店舗が営業を中止し、経営が急速に悪化していた。2020年3月にはすべての経営陣が解雇されている。
アメリカのデパートの未来
コロナ禍の中、次から次へと店舗の閉店ニュースが発表されるアメリカ。
現在アメリカでは、新型コロナワクチンの接種が猛スピードで進んでいて、外へ出かける人々の姿を目にするようになったが、それでもデパート離れは止まらないようだ。
コロナ禍での新生活様式ではオンラインショッピングが多くを占めるようになったが、これはコロナの感染前からの傾向であり、それがコロナによって一気に加速したに過ぎない。
コロナの感染が落ち着いても、利便性の高いオンラインでの買い物の需要はさらに高まることが予測できるため、デパートのオンラインショップの充実化を図ることが必須である。
かつては、流行の最先端の商品が並ぶ華やかで人々の憧れの場であったデパート。活気と顧客を取り戻すためにも、固定概念を取り払った対策が急がれる。