地方デパート 逆襲(カウンターアタック)プロジェクト その42 デパートの食堂の重要性
デパートの食堂の特異点
皆さんはデパートや複合施設に出掛けた時、何かに気づきませんか。各フロアの売場は閑散としていても、レストランフロアだけは店の外に設けられた臨時の座席スペースに多くの方が座って名前を呼ばれるのを待っている、そのような光景が、ランチタイム・ディナータイムに拘わらず見られます。
どの店にしようかと探して回る顧客も引きも切らず、このフロアだけの特別な雰囲気があります。価格は路面店と比べても割高ですが、特別高いというレベルにはならず、なにより明確に表示されているので、安心して入店できる環境が整っているのです。接客サービスレベルや料理が出てくるまでの時間も概ね安定しており、顧客は潜在的にイメージした食事を予定時間内で済ませることが出来るわけです。
こうした環境はデパートが食堂を上層階に作り、シャワー効果を目論んだ半世紀以上前から大きく変わっているわけではありません。変ったのは顧客の食に対する強い意欲と懐具合です。
様々な商品への、いわゆる物的要求は当時と比べ格段に減り、多くの人にとって自らの満足を得るための要素としての食の存在が大きくなっています。また、たまには外での食事にお金をかけるくらいの家計費は多くの家庭で都合できる状態になっており、特別高いお店でないデパートの食堂は、小さな幸せを得る場所としてそのフェーズを上げているのです。
そのデパートだけの食堂の創造
ところが、多くのデパートは全国チェーン店や画一的なお店だけで良しとしているところが多いようです。つまり、そこそこお客さんが入っていることで、満足しているのです。しかし、顧客の要望を叶える方法はまだまだあります。サービスの方法として定食には必ず炊き立てのご飯と美味しい漬物を出す。鰈・太刀魚・鰆など居酒屋などでは出て来ない焼き魚を出すなど、少しだけ顧客ニーズをくすぐる食事を提供することなどは、すぐに具体化できることです。
また、すでに家庭では調理の難しいその地域だけに伝わる料理や地元の特色のある人気店の参加を求めるなど、その場所としてのオリジナリティを作ることで更なる顧客動員を図ることも可能でしょう。その結果、そのデパートの各フロアにも、必ず相乗効果をもたらすはずです。なぜなら、食堂を気に入った顧客はデパートの固定客になるからです。顧客のデパートへのワクワク感は、今改めて食堂部門の創造性を高めることで大きく向上するわけです。
私たちが、今進めている松菱百貨店での地方デパート逆襲(カウンターアタック、CA)プロジェクトでは、この見地からレストランの活力を発揮するプランを進めております。
デパート新聞社 社主