社員が作り上げた売場~好評を博す西武池袋本店「卯花墻」・「味小路」

 西武池袋本店の食品フロアの自主編集売場「諸国銘菓 卯花墻・諸国名産 味小路」が2022年9月にリニューアルオープンして半年余り。その人気は今も相変わらずだ。どのような商品が売れているのか。また、商品の導入の裏側やリニューアルに至った経緯などを担当者に聞いた。

「先ず、「卯花墻」・「味小路」の売場の概要をご紹介ください。」

西山知里さん

(株式会社そごう・西武リーシング本部 フード担当 西山知里さん)

 卯花墻・味小路ともに西武池袋本店の自主編集売場で、約30年以上の歴史があります。「卯花墻(うのはながき)」には、全国各地で育まれた老舗銘菓や、懐かしの駄菓子、人気若手職人が作る和菓子、羊羹の中にドライフルーツが入っている様な新鋭和子などが一堂に集まります。

 全国の美味を集めた諸国名産「味小路(あじこうじ)」では北海道から沖縄まで全国津々浦々の名産品や俚び(さとび)の味を集めました。旅で訪れた地域で初めて味わった忘れられない味に再会したり、懐かしいふるさとの味に出会ったりすることができます。売場では日本全国の美味しいものがエリアごとに柱を取り巻くように並んでおり、例えば青森のいちご煮、奈良の奈良漬け、佐賀の松浦漬け、沖縄のうみぶどうなど全国のグルメな美味が取り揃います。

 今まで展開場所が別々であったこの二つの売場を一つの売場として新たに隣接展開し、全国の銘菓・名産を約1000種類以上集約しています。昨年9月のリニューアルで、面積は約2・2倍、品ぞろえも約1・7倍に拡充しました。

「リニューアルで何を目指しましたか。」

若手社員の意見も反映

(西山知里さん)

 リニューアル前までの顧客の中心は50歳代以上でしたが、次世代顧客である若年層も含め30歳代40歳代まで顧客層を広げたいと考えました。

 そこで、若手社員の意見を売場に反映させようと先ず行ったのは、全国の店舗の入社7年目までの社員へのアンケートです。
「和菓子にどのようなイメージを持っていますか。」、「よく買う和菓子は何ですか」どら焼きなどの商品名を羅列して、「この中で知っている和菓子を教えてください」、「和菓子売場で買ったことがあるブランドはありますか。」などを質問し回答を得ました。

 また、リニューアル前の売場を知っている池袋本店の10歳代から50歳代の女性社員の座談会も実施しました。「こんな売場があったら良いなと思う点。」、「購入したことのあるブランドと購入しづらい・入りづらいブランドとの違い。」などを直接聴きました。

 この座談会では、「和菓子を食べる時はお茶を飲むが、売り場や近くにお茶が売っていない。」などの意見が出ました。生活者のシーンでの提案が大切と考え、茶1杯分のティーパックをレジ前で販売しています。また、「気軽なプレゼントをしたいが、百貨店の包装紙では抵抗がある。」との意見もあり、これにはお客様ご自身で商品を入れ、簡単に包装ができる巾着袋を用意しました。

全国ブランドではないが全国の良いものをこの売場で知って頂きたい

(西山知里さん)

 各地にはご高齢のご夫婦で美味しいお菓子を作られている老舗和菓子屋も存在しますが、そのような和菓子屋は百貨店に出店して頂く事が難しいのが現実です。そこで、全国津々浦々で愛されている商品を一堂に集めたいとの思いがあります。これは30年以上前の売場発足当時から変わらないスタンスです。全国ブランドではないが地元で愛されている美味なる品を皆さんに知って貰う売場にするのが一番の目的です。

必要な数だけ買える利便性

(西山知里さん)

 新たに設けた「おひとつから」コーナーでは、お菓子をばら売りで販売し、ひとつから購入が可能です。老舗の和菓子やご当地のお菓子をちょっとしたプレゼントやおやつとして、必要な数だけ購入できる利便性を提供しています。売場にとっては、バラ販売よりも箱物での販売の方が単価は張りますし、売場のオペレーションも楽ですが、お客様にとっては、「ひとつずつ、ちょっとずつ食べたい。」「試しに買ってみたい、気になるものを買ってみたい。」との思いがありますから、ひとつずつ購入できることはとても大切だと思います。「このコーナーでお菓子を選んでいる時は、子供の頃回るお菓子売り場で夢中になって好きなお菓子を選んだことが思い出され、童心に帰れる。」とのお客様のお声を頂く事もあります。

 今回のリニューアルでは、和菓子の需要の間口が狭まっている中、あるいは、長年にわたって若者の和菓子離れが加速する中で、和菓子を気軽に手に取ってもらうにはどうしたらよいのかを考えました。「和菓子屋には入りづらい。」、「大福をひとつ買いたいが、商品陳列ガラスケースの前に行くのは抵抗感がある。」とのアンケート結果も出ていました。では、「当店の売場なら、気軽にその様な和菓子を手に取れますよ。」とアピールしよう。20歳代、30歳代の方が気軽にひとつだけでも買える売場を作って行こう。このような点が今回のリニューアルの目的の一つです。

 それぞれの和菓子がこれだけ歴史的に長く続いているのは、和菓子がその土地の歴史・文化の上に根付いているからだと思います。それを皆さんに知って貰いたいですね。単に今流行っている菓子でなく、和菓子をプレゼントするのは、ちょっとセンスがいいイメー
ジを持っているとのアンケート結果もありました。我々は今まで和菓子を購入していなかったお客様にきっかけを与えられる様なアプローチができたら嬉しいと考えています。

「全国から商品をどのように集めたのですか。」

(西山知里さん)

 当社の社員から得た出身地の老舗情報や店舗の食品担当者の情報・アドバイス、あるいは書籍、SNSも活用しながらピックアップし、積極的に担当者が各地を周りました。また、日頃の催事で培ってきた全国のお取引先の方々のご協力を頂くこともできました。各店で行ってきた卯花墻のリニューアル情報も参考にしました。

 旧来のお取引先からの紹介また紹介でようやく取引を始められた取引先もあります。人との繋がりを大切にされているのが分かりました。かつて取引があった方々からは、「また取引をして貰えるのですね」と喜んで頂いたケースもありました。「商品陳列の仕方の
要望に応えて貰えるならば」との条件で取引に応じて頂けたこともあります。

 ある老舗の方からは、「うちの商品を販売するならば、製造工程を理解してください。」との要望もありました。工場まで足を運んで、どのようにして商品を作っているのか、どのような思いで作っているのかを伺い、関係を深めていきました。

「リニューアルから半年余りが経過しました。」

(西山知里さん)
 
 30歳代、40歳代の顧客層が明確に増えました。また、リニューアル前と比べ、売上、お客様数は倍以上と想定を超えた反響があり、嬉しい悲鳴を上げています。おかげさまで平日でも午前中からご来店のお客様が絶えません。金曜日の夜は、仕事帰りのお客様がとても多いのも巨大ターミナル駅立地のデパチカの特徴であると思います。また、売場の場所を人目に付く場所に変えたことは最大の宣伝にもなっていると思います。

 池袋は大学など多くの学校があり若者が多い街です。今後は今以上に、学生の方にも和菓子を買いに来てもらえる売場をつくっていきたいと考えています。
(敬称略)
     
4月17日取材