「奮闘する地方デパート」 - 西武秋田店「スイーツマーケット」の運営戦略


日時:2025年12月17日
場所: 西武秋田店
西武秋田店: 食品担当 金森様 、店舗政策担当 菊池様 高木様
インタビュアー: デパート新聞 山田編集長
概要



西武秋田店では、地下1階食品フロアのエスカレーターを降りてすぐの約30坪のスペースに「スイーツマーケット」の専門売場を設置。全国各地のスイーツを地域ごとに陳列し、常設ブランドと期間限定のスポット企画商品を組み合わせることにより、売場の活性化を図っている。全国各地のスイーツが手軽に手に入る、ということだけでなく、話題の新商品、限定スイーツのポップアップもある。スイーツ好きには見逃せないスポットとなっている。
○「0のつく日」と「土曜朝市」
集客の二本柱として、定期的な限定スイーツ販売企画を実施している。2024年春から「0のつく日」: 毎月10日、20日、30日に限定スイーツを販売している。以前の「日替わり」形式から「10日ごと」の販売に集約し、顧客にとっても覚えやすく、店舗側の在庫消化問題も同時に解決することができ、社内評価も高い様だ。「土曜朝市」: 毎週土曜日の午前中に開催。生鮮惣菜のセール品と合わせて限定スイーツを販売し、午前中の集客と店舗全体の活性化を目指している。
顧客の声の反映と新規性
秋田県民の「新しいもの好き」な特性を捉え、アンケートで寄せられた要望(例:梅月堂、重慶飯店など)を商品選定に反映させている。
常に新しい商品を提案し、顧客の関心を引きつけることで、新たな定番商品を生み出す好循環を創出していると言える。
○ 商品開拓と百貨店ネットワークの活用
仕入れプロセス: 限定スイーツは、秋田が遠方であるため、発売日前日に納品されることがほとんど。全国のメーカー(長野、京都、岐阜、鹿児島など)からの配送される商品だ。選定や交渉は、専門の担当者(バイヤー)が行っている。
そごう・西武ネットワークの活用
全10店舗の百貨店ネットワークを活用し、各店で売れている商品の情報共有や流通での融通を行う。これにより、秋田店単独ではリーチできない全国の魅力的な商品(例:横浜のハーバー等)を発掘し導入することが出来る。
テストマーケティング機能
スイーツマーケットでの人気商品は定番化されることも多く、さらに、特に反響が大きかったブランドには、次の大規模な「物産展」へ の出展を打診するなど、テストマーケティングの場としても機能している。
マンパワーによる開拓
通常は出店が難しいとされるブランド(例:崎陽軒)に対しても、バイヤーが人脈や粘り強い交渉を通じて催事出店を実現させることが出来る。
○地方百貨店の課題とメディア連携
地方百貨店の役割: 都心店のインバウンド回復とは対照的に、地方百貨店は閉店が相次ぐ厳しい状況は変わっていない。その中で西武秋田店は、地域住民のために新しい価値を提供し、地域に貢献するという公益的な役割を担っており、応援すべきモデルであると評価されている。
テレビ局との連携: 日本テレビ系列の番組と連携した物産展を年一回開催。テレビ局(秋田ではABS秋田放送)と組むことで集中的な情報露出が可能となり、メディアを活用した強力な集客を実現している。テレビの視聴者というのは、概して食への関心の高い層であり、そこのマッチングが奏功し、人気を博している。
イベントごとの顧客層: テレビ連動の物産展は年配層に強く、今回デパート新聞社が実施した「選べるガチャガチャランド」の様な若年層向け企画は当然SNSで告知することでシナジー(相乗)効果が期待出来る。
企画によってターゲット層が異なるため、売上変動も大きいため、売場、催事場の効率運用、稼働が課題となる。
○百貨店業界全体の課題と展望
筆者からは独立系百貨店とのアライアンスについて提案した。例え、都心の大手百貨店の支店であっても地方店は苦戦する現状で、独立系を含め、地方百貨店同士
(例:川越の丸広、熊谷の八木橋)が地域を超えて協力するような「ゆるい連携」を構築していく必要性を指摘した。
スイーツマーケットの役割
リピート率向上:
顧客が企業やブランドに愛着を持つことで、再度の購入が促進される。
新規顧客の獲得:
エンゲージメントの高い顧客は、友人や知人にブランドを推薦することが多く、新たな顧客を引き寄せる。
安定した収益基盤の確保:
顧客との長期的な関係が収益の安定に寄与する。
結論
西武秋田店は、面積の制約や地方都市という環境を逆手に取り、「スイーツマーケット」での10日ごとの限定品販売を軸に顧客エンゲージメントを深めている。
用語解説:顧客エンゲージメント
企業と顧客の間に築かれる信頼関係や親密さを示す指標であり、顧客が企業やブランドに対して持つ愛着や関与の度合いを表す。
本企画は、顧客アンケートを商品開発に反映させる戦略、そごう・西武の店舗ネットワークを活用した商品開拓、テレビ局とのメディアミックスによる大型催事など、多角的なアプローチで地域に根差した百貨店としての価値を創造し成功を収めている。
インタビュー全体を通して、筆者としてはこの西武秋田店の取組みは他の地方百貨店のモデルケースとなり得ると思い、評価したい。
更に、地方百貨店間の連携の可能性、弊社も支援している被災地への寄付活動についても議論を交わし、大変有意義なインタビューとなった。
最後に、地方百貨店は地元エリアでの公益拠点を目指すことが重要である、という点で意見が一致した。
今回は、弊社が企画運営を担っている「選べるガチャガチャランド」の開催に合わせて、インタビューの機会を頂いた。今後も催事の開催に合わせて、地方で奮闘するデパートの店長や企画担当者から、いろいろなお話を聞いていきたいと思っている。
前述した様に、今回のインタビューにより「他の地方デパートのモデルケースとして生かせれば」という思いを強くした。そして、可能であればそうした地方デパート同士のネットワークを作っていきたいのだ。
2026年の新春を迎え暁光を垣間見た思いだ。

デパート新聞編集長
